あの星たちに願いを。

みう

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1章―出会い

出会い―1

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夜空を流れる河。
数えるのも億劫になるほどな数の星の集まり。
僕の住む町では、たまにそんな光景を観ることができる。
そう。あの夜も、空に星の河が流れていた。
あの頃の僕はまだ何もかもが新鮮で、楽しくて、汚いことなんて何もなくて、全てがきらめいて見えた。


1章――出会い――


「ハッピバースデイトューユー♪ハッピバースデイディアユウトー♪ハッピバースデイトューユー♪」

五人。ママとパパ、ママの妹――つまりは伯母さんだ――と、おじいちゃんとおばあちゃんみんなに誕生日ソングを歌ってもらってつい赤面してしまう。

今まではママとパパの二人だけだったけど、今日は特に特別な日だったから、みんな集まってくれた。

「誕生日おめでとう!優兎」
「優兎くんももう五歳かー!大きくなったね」

五歳の誕生日。幼稚園への入園を控えた誕生日。その日彼女と出会った。


静かに波打つ海。その砂浜にある、巻貝のような形をしたホイップクリームと、まるで夕焼けの茜空に星が煌めいているような苺が、円形に並べられているケーキ。
ママは「みんな均等に食べましょうね」って言っていたけれど、ぼくに分けられたケーキは、みんなのケーキより少し大きい気がした。

「そういえば優兎。今日お隣に引っ越してきたご家族がいるのよ」

勿体無げにケーキを食べているとママが教えてくれた。

「なんでも、お父さんが大手企業の社長さんらしくて、娘さんをここの幼稚園に入園させるために越してきたんですって」

「あら!英才教育ってやつ?」

伯母さんが冗談ぽく笑う。

ぼくも入園を控えてるとは言っても、特に入りたい幼稚園などあるわけもないし、この辺りにはその幼稚園しかないので必然的に繰々宮幼稚園に入園することになるだろう。

よくは分からないが名門の幼稚園らしく、入園させるために遠くから通う家族もいるらしい。

「その娘さんは優兎と同い年らしいわよー。挨拶してきたら?」

瞬間にぼくは目を輝かせた。
今まで友達が出来なかった訳ではないが、皆年下の子ばかりで中々同い年の子と仲良くなる機会がなかった。

残っていたケーキを口いっぱいに詰め込み、期待に胸を膨らませて玄関を飛び出た。

日が沈みそうな時間。今日はずっと家の中にいたためか、夕陽が眩しく感じた。

ふと、隣の家に目をやると、庭先に黒い車が止まっていた。

(ちょうど帰ってきたのかな?)

運転席から黒いスーツに黒いサングラスを掛けた人が降りてきて後部座席のドアを開ける。

最初に目に入ったのは、折れてしまいそうなくらい細い足。そして腰の位置を青いリボンで結んだピンクのワンピース。

(……綺麗な髪)

腰まで伸びたその髪は、夕陽に照らされた海のように、朱く、波打っていた。

彼女と目が合う。
ぼくは照れを隠しきれずに笑ってしまった。
彼女は一瞬驚いたような顔をした後、微笑んでくれた。

その笑顔は、キラキラと光る砂浜に落ちていた、とびっきりの宝石のようだった。

――それがぼくの初恋だった――
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