魔王君と俺 〜婚活から逃げて異世界へ行ったら、初日からヤバいのに誤解されてゴールインした件〜

一一(カズイチ)

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ボーイ(28)・ミーツ・ボーイ(17)

お花畑アウクトルくん家

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 ファーストコンタクトを無事に終えた俺は、無一文なのもありこのまま大自然溢れる公園で身を隠しつつ静かに野営を試みようとした。要はホームレス。
 食材は<収納空間>に入っているし、俺はそもそも夜眠らないので夜の帳が降りたら犯罪者をカツアゲして現地通貨を手に入れる予定。
 もしくは違法カジノで荒稼ぎ。
 俺は賭博スキルも持っているので、イカサマされようが賭け事は常勝無敗なんだ!
 もし日本に行けたら、ソシャゲのガチャしてみたいね。できるだけ確率エグいクソガチャで頼む。

「この後どうするよ」的な質問をされたので、上記の内容をテンション控えめに答えたらアウクトルの家に連れていかれた。
 有無を言わさない感じで腕掴まれて連行された。
 痴漢を事務所に連行する駅員から滲み出る「絶対逃さんぞ」という強い意志に似たものを感じた。
 そんなにおかしなこと言ったかな? 地に足ついた現実的な戦略だろ?

 公園から歩くこと15分。着いた先は住宅街にある、極々一般的な一軒家。
 白壁にオレンジ色した屋根の可愛い家。
 家主の趣味なのか、出窓や玄関前によく手入れされた花の鉢植えがずらっと並んでいる。
 家の中に入ったらリースやドライフラワーが彼方此方に飾られていた。
 内も外も花に囲まれた家だ。

 これが魔王の家ってマジですか。親指サイズのウサギの人形が住んでそうな家だぞ。
 俺の生ぬるい視線に気付いたのか、アウクトルは母親がお店の観葉植物の管理や、フラワーアレンジメントの仕事をしていると説明してくれた。
 インテリアとして飾ってある花はサンプルで、鉢植えに入っているのは納品前の商品なので頻繁に入れ替わるらしい。
 ちなみに父親はサラリーマンで経理担当。

 アーヴォ家のご夫婦は、突然息子がコスプレ異邦人を連れてきても、笑顔で歓待してくれる素晴らしい人たちだった。セールスマンにお茶振る舞いそう。
 魔界の家庭料理というものに戦々恐々としていたら、出てきたのは普通の洋食だった。
 とんでもない食材とか、ヤバそうな外見した料理を想像していたので、安堵と失望が半々。
 モンスターの目玉とか爪とか出されると思った。

 それにしても、アウクトルは全く両親に似ていない。
 俺は彼が魔王の外見引き継いでいることを知っているけど、ご両親は疑問に思わないんだろうか。というかご両親はどこまで知っているのか。

 母親のメールは小柄で、茶色いクリッとした瞳が小動物を彷彿させる。
 緑色のふわふわしたロングヘアーをゆるく編み込んでいる。彼女の持つ色彩は植物系の仕事をしているのと関係があるのかな、と思って鑑定スキル使ったら案の定特殊能力持ってた。

 父親のパドレは、ゆるキャラだ。
 どこのご当地キャラとは言わないけど、ゆるキャラ擬人化したらきっとこんな感じになる。
 ちょび髭とメタボなお腹が特徴的で、全体的に丸い。目の色は水色で、髪の色は茶色。家族の中では一番色白。
 二人とも息子との外見的共通点皆無。
 しかし気に病むどころか「いやー。伝承にある魔王様と同じ色彩なんて光栄なことですよ。でもうちのアウクトルの方がイケメンですよ絶対!」とパドレは顎のお肉タプタプさせながら笑ってる。
 これは何も知らないな。
 魔王様と息子さん顔一緒ですよ。

 どうやら魔王が眠りにつく前後で旧世代、新世代と魔族は区別されるらしい。
 旧世代は現役の魔王を知っている世代で、新世代は魔王が眠りについた後に生まれたので外見については伝聞でしか知らないらしい。
 どちらも魔王崇拝は共通。但し、熱量は旧世代が圧倒的強火。

 アウクトルの名前に関しても、特に問題はないらしい。
 子供に魔王アウクトル・ゲネリスにあやかった名前をつけるのは魔族の間ではメジャーなのだとか。黒髪だったり、赤目だったりすると、高確率でアクトとかアークとかそれっぽい名前らしい。NGなのはゲネリスの方。

「魔王様は魔族全員の父と呼ばれるお方だし、あーくんは隔世遺伝ってやつね~」

 ご両親は新世代。

「ママぁ。それをいうなら先祖返りじゃないかな?」

 それってソウル的な話で遺伝子的な意味じゃないと思うので、どちらも不正解です。ご馳走になっている身なので無粋な指摘は致しませんが。

 天然夫婦の会話は微笑ましい。アウクトルと俺は自然と聞き役になった。
 温かい料理に舌鼓を打ちながら、俺はすごい事に気付いてしまった。
 もしかして生まれて初めて家族団欒というやつを経験しているのでは。

 =========

 夕食をご馳走になった俺は、意気揚々と資金稼ぎのためお暇しようとしたが引き止められた。
 ご両親は俺のことを「職を求めて都会に出て来た天涯孤独の田舎者。服装は地元の流行り。職安探している時アウクトルに助けられた」と認識している。
 自己紹介時に流れるように説明した。
 何もやましい事はない、と畳み掛けるように聞かれる前に率先して言う。勢いで押し切った。
 説明しているときは完璧だと思っていたけど、思い直せば後半余分だったかもしれない。
 俺のトークに二人はやや押され気味だった。
 怪しいセールスマンに、お茶どころかダダ飯タダ宿提供してくれる魔王の両親。色々と心配になるレベルで善良だ。
 今後何かあれば力になろう。
 一宿一飯の恩は返す。守りたいこの笑顔。

 兎に角二人の同情を買った俺は、家に泊めてもらえる事になった。
 風呂借りられるのはありがたい、夜はこっそり抜け出すつもりだ。

「あーくん、フォン君をお部屋に案内してね」と、送り出されて二階へあがったのだが連れていかれたのは客間じゃなく、何処からどう見てもアウクトルの部屋。

 え。

 ベットひとつだけど一緒に寝ろってこと?

 ママさん正気?

 今日出会ったばかりの成人男性と、大事な息子を同じベッドに寝かすの?
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