恋におちたら止まらない

mimi*

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思惑

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「えと……、今村さん?」
「はい?」
「あ、えーと、君が今村さん?」
「はい。そうですけど……」
 五限目が終わり、日直の冊子を職員室にいる担任に届けたあとの帰りだった。 妃芽子は突然男子生徒に呼び止められた。彼の履いている上履きの色から、三年生であることが分かった。知らない人だったため、何となく妃芽子の警戒心が強くなった。
「これ……長谷川先生から」
「長谷川先生?」
 男子生徒から紙を差し出され、妃芽子はそれを受け取る。
 長谷川先生はこの学校の音楽の先生であり、妃芽子が所属しているピアノ部の顧問でもあった。
「じゃ……確かに渡したから」
「あ、はい。ありがとうございました」
 今の状況についていけないながらも、妃芽子は一応の礼を言った。
――長谷川先生……。さっき職員室で会ったとき、別に何も言ってこなかったけど……。
 教室へ戻る廊下を歩きながら、妃芽子はその紙を開いた。
『文化祭のことについてお話があります。放課後第二音楽室まで来てください。――長谷川』
「…………」
 話って何だろ。
 そんなことを思いながら、妃芽子は紙を綺麗にお折りたたんで、スカートのポケットに入れた。
 廊下を歩く途中、帰りのホームルームが始まるチャイムが鳴って、妃芽子は慌てて駆けだした。


*     *     *


「ひーめーこっ。帰ろ」
 ホームルームが終わったあと、いつもように茉莉子が妃芽子の元にやってきた。
 妃芽子は鞄に教科書を詰めながら、茉莉子に顔を向ける。
「ごめん。なんか今日放課後長谷川先生に呼び出されちゃって。遅くなるかもしれないから先帰ってて」
「えーっ。……残念。いろいろ聞こうと思ってたのに」
 茉莉子の正直な物言いに、妃芽子はくすくすと笑った。
「ごめんね。明日にでも話すから」
「ほんとー? 約束よ」
「うん」
「じゃ、今日はまあ勘弁してあげましょ。長谷川先生って、きっと文化祭のことでしょ? 頑張ってね」
「うん、ありがと」
「じゃね」
 茉莉子はひらひらと手を振って、教室を出て行った。
 妃芽子は彼女の後ろ姿を最後まで見送ってから、自分の鞄を手に取る。
 そして、六階にある第二音楽室へと足を向けた。
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