恋におちたら止まらない

mimi*

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思惑

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「失礼しまーす……」
 防音のため、重く厚く作られているドアを妃芽子はゆっくりと押して開いた。音楽室の電気はついていたが、誰かがいる気配はしない。
 妃芽子は自分の位置から死角になっているところに先生はいるのかと思い、音楽室の中へ足を踏み出した。カーペットの上をそろりそろりと歩いて、音楽室の中央へと行く。ドアのところから死角になっていた場所を見たが、そこに先生の姿はなかった。かわりにひとつの学生鞄。妃芽子は不思議に思って首を傾げた。
 そのとき、カチャッと後ろから聞き慣れない音がした。
「……先生?」
 振り返ると、そこには見慣れない制服を着た三人の男子生徒がいた。妃芽子は驚いて、うわずった声を出す。
「あ、あの……。ここに何か用ですか?」
「君にね」
「は?」
「君に用がある。君が、今村妃芽子サン?」
 何となく答えてはいけない気がして、妃芽子は首を振った。先ほどから自分に話してくる男子生徒は、妃芽子が苦手としている部類に入る容姿だった。
「ち、違います」
「ふーん……。でも聞いた今村妃芽子の容姿と君は大分似てるんだけどなあ……」
 ゾクッと背筋が震えた。
 ここにいては危ない。
 妃芽子は本能的にそう思った。そして、そう思った瞬間、妃芽子は音楽室の出口に向かって駆け出した。
 しかしその途中、彼らの一人に腕を取られてしまった。
「……っ!」
「ちょっと失礼」
「嫌!」
 鞄をもぎとられる。彼は妃芽子の鞄を開けると、その中から生徒手帳を取り出した。ぱっと一番後ろのページが開かれる。そして、その部分を見せられて、妃芽子は絶望感に襲われた。
 そのページは学生証。自分が今村妃芽子だと言うことがこの人達に確実にばれてしまった。
「……な……何ですか……わたしに何か……――きゃあっ!」
 妃芽子は自分の腕を掴んでいた男によって、床に押し倒された。抵抗しても、相手はびくともしない。これがどういう状況か、たとえ混乱している妃芽子にでもよく分かった。
「……や……」
「ちょっと君を痛めつけてほしいってある人物に頼まれたんだ。おとなしくしてればすぐ終わるから」
「い……いや……。やめ……っ」
「叫んでも外には聞こえないよ。防音なんでしょ、ここ。準備室の方も鍵も閉めたしね」
 自然と涙が溢れてきた。男にきつく押さえられている手首が痛い。
 ベストをまくし上げられる。妃芽子の精一杯の抵抗もすべてむなしく終わった。
「いやああぁぁっ!」
 妃芽子の悲痛な叫び声は、むなしく音楽室に響き渡った。
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