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第8話 ヒロインイベントっぽいもの(文化祭デート)
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そして迎えた文化祭。
私のクラスの出し物は、手相占いだ。
占い師役は、男女三人ずつ。それぞれに脇で結果を紙に書きとめる役が一人ずつつく。それを三組作って、三交代のローテーションで回していくしくみだ。
基本、男性客は女性の占い師。女性客は男性の占い師が担当する。それって淑女的にどうなの? って思ったのだが、知り合い程度の男女でも、エスコートやダンスなどが授業で普通に行われるお国柄、あまり問題はないらしい。
ちなみに私は占い師役だ。この外見を集客に生かすのはやぶさかではない。この占い師の衣装はエロ可愛いのだ。
エルネスト殿下とは、契約事項にも入っているため文化祭を一緒に回る必要がある。時間を決めて待ち合わせしているので、その時だけ会えばいい、と思っていたのだが。
……なんで、ここにいるんだろう?
「アシュリーに占ってもらいたくて」
私の頭の中を読んだように殿下がつぶやく。
殿下は、私のところにやってくると、にこやかに威圧して私の順番待ちの最前列を勝ち取った。
ええと、占い好きなのかな?
でも、占ってほしいと言った後、私の手を握って放さない。
私は、殿下の意図を測りかねて、曖昧な微笑みを浮かべた。
「あの、手を放していただかないと占えないのですが」
周りの視線が痛いから。私に仕事させてよ!? どんどん他の占い師の順番待ちの列が伸びていく。王子の見物のために並んでる人もいるような気もするけど。
客観的に見て今の私は、仕事中にも関わらず、恋人とイチャイチャしてるとんでもない奴だ。
こんなことをしていたら私はクラスで絶対恨まれる。ただでさえ、いきなり可愛くなってクラス中の視線をかっさらい、さらに分不相応にもみんなが狙っていた王子様まで手に入れてしまったのだから、女性陣のやっかみの的なのだ。
現在いじめなどの直接的な被害にあっていないのは、私の背後でヒロイン養成講座の心強い仲間たちがうまく抑えてくれているからに過ぎない。
殿下は、そのままそこに陣取り、私の手を握りしめたまま動かない。
そして、私の心臓が針の筵に悲鳴を上げ始めた頃、いきなり私の手をつかんだまま立ち上がった。
「さあ、行こうか? 時間だろう?」
彼は結局、私の担当時間いっぱいまでそこに居座り、そのまま私を教室の外へ連れ出したのだった。
「君さ、考えが浅いんじゃないの?」
エルネスト殿下は、私を特別棟へとつながる人の少ない階段裏へと連れていくと、そのまま閉じ込めるように壁に手を突き、不愉快極まりないと言った様子で私を見下ろした。壁ドンである。前世も合わせて人生初めて。
でも、ドキドキしない。ビクビクである。
お、怒っていらっしゃる?
「僕達は溺愛設定なんだから、他の男に君の手をべたべた手を触らせるようなこと、許すはずないだろう? 僕は設定上、こうしないわけにはいかないんだよ?」
そこまで言われて私ははっと気づく。失態だ。
「お手を煩わせてしまい、申し訳ありません」
「君にある程度裁量を与えたのは僕だけど、君が始めた設定だ。責任を持って遂行してくれる? 中途半端なことはしないでほしいな。この後の占い師役は誰かに変わってもらうんだね」
「はい、わかりました」
「僕の手を煩わせた対価はもらわないとね。君はこの後、一日僕のお供だから」
「はい。精一杯務めさせていただきます」
今までうまくいきすぎていてすっかり忘れていた。
彼は、ただの優しい王子様ではない。
殿下の機嫌を損ねれば、契約があろうとなかろうと、私も仲間も窮地に陥ってしまうのだ。
私は気を引き締めなおした。
「あれ、買ってきて。喉が渇いた」
「はい、お待ちくださいませ」
私は、殿下が好きで好きでたまらないというような表情で買いに行き、彼に、頼まれた飲み物を差し出す。
「先に飲んで」
「え?」
「毒見。王子に毒見もしないで食べ物を渡す気?」
「はい申し訳ありません」
私はあわてて飲み物に口をつける。
飲みながら、クリスティーネ様にたこ焼きの食べ方指南をしたとき、毒見の件をすっかり失念していたことに気づく。きっとあたふたしてしまっただろう。大丈夫かな?
飲んだあと、ハンカチで飲み口を拭こうとしたら、すぐに取り上げられてしまった。
腕をくんだり、はしゃぎ声をあげたり、ちょっとしたものをおねだりして見せたり、私は一生懸命溺愛デートを演出する。
はじめのうちは多少固くなってしまったけど、最後の方には、今まで通りうまく溺愛デートの振りができていたと思う。
殿下と文化祭を回る時間は、当初二時間の予定だったが、午後の四時間全てを拘束された。
殿下の機嫌もやっと直った。よかった……。
もちろんくたくたです……。
私のクラスの出し物は、手相占いだ。
占い師役は、男女三人ずつ。それぞれに脇で結果を紙に書きとめる役が一人ずつつく。それを三組作って、三交代のローテーションで回していくしくみだ。
基本、男性客は女性の占い師。女性客は男性の占い師が担当する。それって淑女的にどうなの? って思ったのだが、知り合い程度の男女でも、エスコートやダンスなどが授業で普通に行われるお国柄、あまり問題はないらしい。
ちなみに私は占い師役だ。この外見を集客に生かすのはやぶさかではない。この占い師の衣装はエロ可愛いのだ。
エルネスト殿下とは、契約事項にも入っているため文化祭を一緒に回る必要がある。時間を決めて待ち合わせしているので、その時だけ会えばいい、と思っていたのだが。
……なんで、ここにいるんだろう?
「アシュリーに占ってもらいたくて」
私の頭の中を読んだように殿下がつぶやく。
殿下は、私のところにやってくると、にこやかに威圧して私の順番待ちの最前列を勝ち取った。
ええと、占い好きなのかな?
でも、占ってほしいと言った後、私の手を握って放さない。
私は、殿下の意図を測りかねて、曖昧な微笑みを浮かべた。
「あの、手を放していただかないと占えないのですが」
周りの視線が痛いから。私に仕事させてよ!? どんどん他の占い師の順番待ちの列が伸びていく。王子の見物のために並んでる人もいるような気もするけど。
客観的に見て今の私は、仕事中にも関わらず、恋人とイチャイチャしてるとんでもない奴だ。
こんなことをしていたら私はクラスで絶対恨まれる。ただでさえ、いきなり可愛くなってクラス中の視線をかっさらい、さらに分不相応にもみんなが狙っていた王子様まで手に入れてしまったのだから、女性陣のやっかみの的なのだ。
現在いじめなどの直接的な被害にあっていないのは、私の背後でヒロイン養成講座の心強い仲間たちがうまく抑えてくれているからに過ぎない。
殿下は、そのままそこに陣取り、私の手を握りしめたまま動かない。
そして、私の心臓が針の筵に悲鳴を上げ始めた頃、いきなり私の手をつかんだまま立ち上がった。
「さあ、行こうか? 時間だろう?」
彼は結局、私の担当時間いっぱいまでそこに居座り、そのまま私を教室の外へ連れ出したのだった。
「君さ、考えが浅いんじゃないの?」
エルネスト殿下は、私を特別棟へとつながる人の少ない階段裏へと連れていくと、そのまま閉じ込めるように壁に手を突き、不愉快極まりないと言った様子で私を見下ろした。壁ドンである。前世も合わせて人生初めて。
でも、ドキドキしない。ビクビクである。
お、怒っていらっしゃる?
「僕達は溺愛設定なんだから、他の男に君の手をべたべた手を触らせるようなこと、許すはずないだろう? 僕は設定上、こうしないわけにはいかないんだよ?」
そこまで言われて私ははっと気づく。失態だ。
「お手を煩わせてしまい、申し訳ありません」
「君にある程度裁量を与えたのは僕だけど、君が始めた設定だ。責任を持って遂行してくれる? 中途半端なことはしないでほしいな。この後の占い師役は誰かに変わってもらうんだね」
「はい、わかりました」
「僕の手を煩わせた対価はもらわないとね。君はこの後、一日僕のお供だから」
「はい。精一杯務めさせていただきます」
今までうまくいきすぎていてすっかり忘れていた。
彼は、ただの優しい王子様ではない。
殿下の機嫌を損ねれば、契約があろうとなかろうと、私も仲間も窮地に陥ってしまうのだ。
私は気を引き締めなおした。
「あれ、買ってきて。喉が渇いた」
「はい、お待ちくださいませ」
私は、殿下が好きで好きでたまらないというような表情で買いに行き、彼に、頼まれた飲み物を差し出す。
「先に飲んで」
「え?」
「毒見。王子に毒見もしないで食べ物を渡す気?」
「はい申し訳ありません」
私はあわてて飲み物に口をつける。
飲みながら、クリスティーネ様にたこ焼きの食べ方指南をしたとき、毒見の件をすっかり失念していたことに気づく。きっとあたふたしてしまっただろう。大丈夫かな?
飲んだあと、ハンカチで飲み口を拭こうとしたら、すぐに取り上げられてしまった。
腕をくんだり、はしゃぎ声をあげたり、ちょっとしたものをおねだりして見せたり、私は一生懸命溺愛デートを演出する。
はじめのうちは多少固くなってしまったけど、最後の方には、今まで通りうまく溺愛デートの振りができていたと思う。
殿下と文化祭を回る時間は、当初二時間の予定だったが、午後の四時間全てを拘束された。
殿下の機嫌もやっと直った。よかった……。
もちろんくたくたです……。
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