鑑定や亜空間倉庫がチートと言われてるけど、それだけで異世界は生きていけるのか

はがき

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第五章

鑑アク2?!!!

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さて、次はシスターテレサだ。
あれから俺の状況もずいぶん変わった。
当然、状況が変われば考え方も変わる。むしろ変わらなければならない。
それが理解出来ないなら、まだまだおこちゃまと言うことだ。
シスターテレサはどっちかな。

俺は神殿のように物々しい、いや、神々しい建物の聖女神教会の総本山につく。

入り口に立つ神殿騎士に話しかける。

「すいません、以前も来たのですが、シスターテレサにヨシトが来たと伝えてくれますか?」



◇◇◇◇◇◇◇



今回は投獄されることもなく、すんなりシスターテレサの部屋に案内された。
またここには司教とシスターテレサと俺の3人だ。

「約束通り女神様の封印は解いてくれたようだね、いひひひ」

やはりこのババアはどうみても魔女か盗賊だ。

「それなんだがな、俺もまだ確認が取れてない」
「・・・?どういうことだい?」
「俺は女神を殺した」
「「っ!!!!」」 


どうやら、エルダイト帝国に女神が現れたことで、俺が女神の封印を解いたから、現れたと思ったようだ。
それなら迷宮都市に現れそうなもんだが、人族の生活圏なら、そこは別にどうでも良いらしい。

そこで俺は、女神が母親だったと言うことだけは隠して、内容を説明した。


「・・・・・・なら、あの女神様は誰なんだい・・・?」
「会ったのか?」
「会ったよ・・・、でも、通りで・・・」
「何がだ?」

呆けているシスターの代わりに、司教が説明する。

「シスターテレサ様は、天啓が降りてこないことを懸念されていた。いや、神の為さることだ、疑うことがおかしいのだが、シスターテレサ様の天啓は、依然として反応を示されないようだ」
「多分、もう反応しないんじゃないか?女神は消滅したからな」
「・・・・・・」
「さっきも説明したが、元々女神もただの迷い人だった。それが力を持ちすぎて、いつの間にか女神と呼ばれるようになった。この世に女神、いや、神なんて居ねーんだよ。そしておそらく、その新しい女神も迷い人だ」

俺の言葉を信じるならば、日本の常識から考えれば神への冒涜とも取れる。
だが、元々地球のイエスキ◯ストだって、人間だったとされている。それが現代では神の扱いだ。女神も同じようなものだろう。
あとはこの世界の住人が、それをどう受け止めるのか。
神は存在すると考えるのか。神など居なかったとするのか。

司教もシスターテレサも、すぐには頭が整理できないようだ。どうしていいか迷っているように見える。

「結局、信仰なんてのは、自分の心の持ちようにも思うけどな。なんなら、シスターテレサ、お前が今日から女神になったらどうだ?」
「っ!何を言っている!!!」

司教が声を荒げる。流石に暴論すぎた。
でも、俺は続ける。

「神とも思える力があればいいんだろ?」

俺はぶつぶつと考えこんでいるシスターテレサに近づき、そっと耳打ちする。

「(信じろ。全ては信じることからだ。テレサ、お前は死んだものを生き返らせることが出来る。それが神から与えられたお前の本当の力だ。お前のユニークスキルだ)」


【女神の癒し】
死後1日以内で、死体状態が良好なものを
蘇生することが出来る。
外傷以外の死亡原因を取り除くことは出来ない。


シスターテレサは、カッと目を見開いた
俺はスッとシスターテレサから離れる。
そしてツカツカと、ここから立ち去ろうとする。

(ひょっとしたら、このせいでとんでもない宗教が新たに出来ちまったり、シスターテレサが傲慢に狂ってしまうかもしれない。だが、それも自然の摂理ってやつだろ。なるようになる。あとは本人次第だ)

俺の背中には、「おお、、、おおおおおぉぉぉぉぉ!」と言うシスターテレサの歓喜とも思える叫びが聞こえていた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇



さて、これで王都でのやることは終わった。あとはエルダイト帝国の女神に会わせてもらうことが条件として言ってあることだが、ぶっちゃけこれはどうでもいい。何故なら、誰に止められても行くからだ。
エルダイト帝国で、派手に動けばなんとかなると言う気持ちもある。

俺は王都の宿で四姫桜にその事を相談すると、

「ならヨシト、また何があるかわからないわ。王都で準備をしといたほうが良いわよ」
「そうだね、ヨシトが動くと何かしら起こるからね」
「人をトラブルメーカーみたいに言うな・・・」
「お兄ちゃん、せめて食料だけは万全な態勢を取りましょ。迷宮でかなり使ったでしょ?」
「それはある程度補給はしたが、そうだな、一個思い出した。あいつのとこに行ってみるか。よし、じゃあみんなも身の回りの物の準備を頼む。メリッサ、任せるぞ」
「流石に食料は入りきらないわよ」
「いや、着るものとか日用品とか、腐らないものだけでいい」
「わかったわ」



俺はオースティン商会を思い出した。乗り合い馬車の定期便で会った、感じの悪かったやつだ。
あいつも去り際にまた来てくれとも言ってたし。
バルトにも会えたら会っとくか。

(・・・・・・お母さんと・・・いや、それは無理か、時間もないし)


一件の屋台で、オースティン商会のやつに貰った紙を見せて、オースティン商会の場所を聞く。
相当大きな商会らしく、それはすぐに見つかった。

屋台のおっさんに教えてもらった場所につくと、

「お前、なんでここに・・・・、大きくなったな」
「パパっ!」
「いや、パパじゃねーから」

バルトだ。
商会の店の軒先で、身長よりも大きいホウキを持って、掃き掃除をしているバルトがいた。

それにしても、一緒に居たのはたった数日なのに、バルトはよく俺のことを覚えていたなと思う。

「もしかしてお母さんもここにいるのか?」
「うんっ、いるよ!お母━━━━」

俺はバルトの口を塞ぐ。

「いや、呼ばなくていいから」
「バルト、どう━━━、おや?」
「あっ」

見覚えのある、恰幅のいい男が現れる。

「あなたはいつぞやの」
「ああ。王都に来たので寄ってみたが、迷惑だったか?」
「とんでもない、どうぞ中へ」


・・・


「そうでしたか、色々大変でしたな。しかしあなた様がかの有名な竜殺しだったと聞いたときは、冷や汗をかきましたぞ」

そこから色々雑談をする。

「何か入り用はございますか?、あの時のお礼もかね、お安くいたします」
「そこまでのことはしてないぞ」
「いえ、食事も確かに美味しかったのですが、あの頃は商売が軌道に乗り、天狗になっておりました。あの時にもう一度自分を見つめ直すきっかけを貰えて感謝しています。それがなければ、このオースティン商会はもう潰れていたでしょう」
「そうか」

珍しい商品はなかったが、何もいらないってのもアレなので、目について気になったものを買った。
特に、上質な小麦粉、大きなボール、綺麗な布、まん丸な1m強の棒などだ。
ふふ、気づく人は気づくだろう。

それ以外にもなんとタバコがあった。フィルターは付いていないが確かにタバコだ。
試しに一本もらって吸ってみると、ものすごく不味く感じた。
異世界に来てから吸ってない、更に両切りタイプともなれば、くらくらもする。
もう、旨いと思えなくなっていた。だからタバコは買わないことにした。


すると、バルトが俺とオースティンの間に走り込んできて、俺に抱きついてきた。

「これ、バルト」

俺はピンとくる。

「まさか?」
「ええ。バルトの母、サリーと結婚しましてね。これもあなた様のおかげとも言えます。あの馬車での話がきっかけでした」
「おうふ・・・・・・それはめでたい、おめでとう」
「ありがとうございます」

これでお母さんともう一発は完全に消えた。だが、良かったのかもしれない。

(つうか、お母さんは娼婦をしてたけど、知ってるのかな?)

「大丈夫です。何も心配はありません」
「・・・そうか」

また読まれてしまった。俺は相当わかりやすい顔をしているらしい。

「バルト、バルトどこに━━━━、あなたは」

そこにお母さん、サリーが入ってきた。
お母さんは、生後間もないような子供を抱いている。

「では私はこれで。またご入り用がありましたらお願いします。バルト、一緒においで」
「はい!お父さん」
「いや、ちょっと」

何を思ったか、妻を置いてオースティンとバルトはこの場を離れた。

(き、気まずすぎるだろ!!!)

「お噂はかねがね聞いてました」
「・・・元気だったか」
「ええ、お陰さまで」

サリーはニッコリと微笑む。
俺が次の言葉に迷っていると、サリーから切り出してきた。

「私、お供はやめたんです」
「・・・旦那は知ってるのか?」
「ええ、お客様になりましたから。そうですね、時期的にはヨシト様のあとくらいでしょうか」
「・・・そうか」

俺は冷や汗をだらだらかいている。

「うふふ、バルトの弟が生まれましたので。お供は卒業です。ごめんなさいね、本日のお供が出来ませんで」
「い、いや、幸せそうでなにより・・・」

俺の冷や汗は止まらない。


そして、言葉につまる。何を言って良いのか、また何を言ってはいけないのか。
逃げたしたいが、それが一番の悪手だともわかる。
あまりにもの俺の憔悴ぶりに、サリーが船をだす。

「違いますよ」

サリーはこれが母親だとでも言わんばかりの、すべてを包み込むような微笑みをする。

「い、いや、でも・・・時期的にも・・・」
「うふふ、女にはわかるのです。この子は私とオースティンの子供です」
「・・・・・・」

この世界にDNA鑑定などない。女がそうだと言えばそうなる。

「・・・本当は━━━」

サリーは右手で子供を抱き、左手で俺の唇を軽く塞ぐ。そして優しく微笑む。

「本当に違います。だから何も気になさらないでください。万が一、そうなったとしてもお供はそういう仕事です。お客様には関係ありませんよ」
「・・・・・・」

俺はしばらく考える。

「また、来てもいいか?」

サリーは微笑みながらもきっぱりと言い切る。

「ダメです。これが最後です。ヨシト様、どうかお健やかに」

サリーは頭を下げた。

「・・・・・・ああ、元気で」
「はい」

俺はサリーの笑顔で見送られ、オースティン商会をあとにした。
だが、俺には見えていた。
サリーが抱く子供の顎の下、首には、何かアザのようなものがあった。

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