鑑定や亜空間倉庫がチートと言われてるけど、それだけで異世界は生きていけるのか

はがき

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第五章

英雄?

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四姫桜にも絶対に言えない秘密が出来てしまった。

だが、俺は忘れることにした。
本人が違うと最後まで否定したのだから、それを信じる。それがこの世界のあり方なのだから。


今まででもケイノスがなくなることは嫌だった。
マイアも、おっちゃんも、ハルート、アンジェラ、もっと、もっと、いろんな人と出会った、誰にも死んでほしくはない。
そこに新たに3人、いや4人死んでほしくない人が増えた。

俺は世界を救いたいなんてのはない。どこで戦争が起きようが、知らないやつが死のうが割りとどうでもいい。でも、守りたい人が自分の手の届く範囲ならば、そしてそれが実現可能ならば、守りたいとも思う。


「改めてみんなに言うことがある。俺はこの戦争に参加する」

四姫桜に意思表明をする。

「あたしはそうすると思ってたけど、改まってどうしたんだい、ヨシト?」
「正直迷っていた。でも参加することにした。そんで一応みんなにも聞いとこうかなと」
「もちろんあたしはヨシトについていくよ」
「良いのかモーラ。自分の命の危険もあるが、罪のない人を殺すことになるぞ?」

メイが答える。

「ヨシト様、戦争では全ての人間が罪人です。末端の兵士でも、それを送り出す住民でも。全員が被害者でもあり、加害者でもあります。ですからそれは気にしてはいけません」
「そうだよ、ヨシトのいた世界ではどう思われてるか知らない。でもあたしらの、この世界ではそれが普通だし、全員がそれをわかってるよ」
「そうか」

メリッサも答える。

「何も故郷を守ることだけが戦争じゃないわ。自分の居場所を、自分の幸せを壊そうとするものと戦うのよ。私も戦う。今度は力があるわ。3年前と同じじゃない」

メリッサも当時は何かしらあったようだ。

「まあ、でも!私が降らせておしまいよっ、一瞬ね!」
「アリサ、それはかなり現実的な話になる。本当に良いのか?何万の命をお前が刈り取るんだぞ?」

アリサは真面目な顔で答える。

「私はお兄ちゃんより、20年近く先輩よ?・・・この世界はやらなければやられる・・・、そしてそれは、相手が一人でも10万人でも同じよ。一人だから殺していい、10万人だから殺したらダメなんてことはないもの」
「・・・」
「10万人を殺せば10万人の家族から恨まれるわ。でもそれは相手も同じ。・・・・・・だからやるわ。逆にためらってはダメよお兄ちゃん。所詮善悪なんて表裏一体。自分が信じるようにやるしかないのよ」

まさか妹からもたしなめられた。

「私はっ、マスターにどこまでもついてくよっ!」

俺の隣を浮いてるリモアが言う。

(なるほど。覚悟がなかったのは俺だけか・・・。そうだな。余計なことは守りきってから考えよう)

「よし、わかった。ならばここに宣言する。四姫桜はこの戦争に参加する。やるとなったら完全勝利を目指す。お前ら、覚悟はいいな?」

それぞれが口にする。

「あたしに任せな。指揮はヨシト頼むよ」
「ヨシトの命は私が守るもの、心配しないで」
「お任せください。ヨシト様の敵は徹底的に排除いたします」
「むしろ、ヘタレなのはお兄ちゃんだけなんだけど?今さらよ」
「マスター、ダッサァ~!」

(くそが、しまらねえ・・・。特にこのロリコンビめ。今に見てろよ・・・)



◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「リモア、テレポートだ」
「はぁ~~~い!」

俺はリモアの左胸に手を当てる。

「いっくよぉ~!」

俺たちは消えた。


次に現れたのは、フリーポート合衆国とエルダイト帝国との国境だ。ここにはリモアとの修行で来た。

俺、リモア、モーラ、メリッサ、メイ、アリサ、システィーナの7人で大地に降り立つ。

「テレポートはすごいね」
「本当、リモアも大概チートよね」
「システィーナ、大丈夫ですか?」

メイがシスティーナに声をかける。システィーナはテレポートにびっくりしてるはずなのに、まったく顔に出さない。

「イエス、マム!問題ありません、マム!」

ピンと直立不動だ。

「メイ、やりすぎじゃねーのか?」
「そうですね、システィーナ風に言いますと、「問題ありません、サ~。」って感じでしょうか」

そんなだるだるな返事をする海兵はいない。

「ヨシト、どっちに向かうの?」
「多分南だな。メリッサ、人や魔物に気を付けながら先頭を歩いてくれ」
「わかったわ」




既にエルダイトには入ってる。
このへんはオークの領域なのか、豚頭のオークにしか出会わない。オーク程度ではもう四姫桜には準備運動にすらならない。

「結構歩いたわね」
「後一時間ぐらいで首都につくはずだ」
「ヨシト、いきなり首都なのかい?」
「ああ、首都が国の中心ってわけじゃないらしい。まあ、だからフリーポート合衆国側にテレポートしたんだけどな」


俺は姫だからシスティーナがへばると思っていた。
確かに疲れは見せている。だが泣き言1つ言わない。
意外とすごい精神力だ。

「システィーナ、平気なのか?」
「サー、イエス、サー!!」
「・・・・・・」

(俺にはやりすぎにしか見えないが・・・。誰だよこれ、姫の面影すらねーじゃねーか・・・)



更に歩き続ける。

「見えてきたわ、あれね!」

メリッサが指を指す。
ケイノス王都よりも更に高い城壁、そしてその城壁より高い王城の先端が見えている。

「ヨシト様、普通に行くつもりですか?」
「え?」

アリサがため息をつく。

「お兄ちゃん、今は戦争が始まるって時よ?ケイノスから来たとわかったらどうなるか。それにケイノスの姫がいるなら、向こうからしたら棚ぼた感覚じゃない?」
「あー、なるほど」

(どうしようか・・・)

メイとモーラが顔を見合わせる。

「決まってるよ。なあ、メイ子」
「はい、決まってますね」

二人が声を合わせる。

「正面突破さ!」
「ここから都市ごと凍らせましょう」

「合わせて!そこまでしたなら、合わせなさいよ!」

二人は少し顔を赤らめた。

(すまんな、アリサ。突っ込み役までやらせて。実は俺、突っ込みは好きじゃないんだ・・・)



◇◇◇◇◇◇◇



俺たちは普通にエルダイトの首都にたどり着き、普通に門番と話をした。

「ん?冒険者か。ほう、プラチナ。待て待て、・・・・・・おお、お前らがあの竜殺しの四姫桜か!。よく来たな!、冒険者ギルドには顔を出せよ!」

バンバンと門番に肩を叩かれる。
少々荒っぽいが歓迎までされてしまった。
どういうことだ?俺たちのホームが迷宮都市と思われてないのか?

みんなも拍子抜けって顔をしている。
仕方ないので、俺たちは門番に場所を聞いて、首都エルダイトの冒険者ギルドに向かった。

正直、町並みはケイノスと変わらない。
都市の中心に城があり、それを囲むように街が広がっているのも一緒だ。
文化レベルも同じくらい、でもケイノスの王都より亜人が更に少ないのと、スリが少ない。

スリの技術がないのか、はたまたケイノスより貧困層が少ないのか。

そして、冒険者ギルドでの俺たちの扱いも違っていた。

「わっ!竜殺しさんですかっ!、サ、サイン貰えますか!」 

これが、受付にいた女職員の、ポーター証明板と冒険者タグを見た第一声だ。
予想と180度違う。
それにモーラは分かりにくいが、メリッサやメイは獣人、エルフと丸わかりなのに、蔑んだ視線もない。どういうことだ?
唯一浮いているリモアだけは、好奇の目で見られているが・・・・・・。

「四姫桜が女神様を解放してくれたんですよね?!凄いなー!」
「えっと、その話はどこから?」

女職員は、何言ってるの?って顔をしている。

「もちろん、女神ラステル様からですよ?迷宮の奥地に封印されていたのを、四姫桜が解放してくれたって」
「・・・・・・他には?」

女職員は、ん~~、と顎に指を当てる。

「どうでしょ。四姫桜さんがご存じのことしかないと思いますが」
「・・・・・・」
「四姫桜全員を勇者として任命したとかー、人族をまとめあげて人族のつながりを強固にする旗頭とかー」
「・・・他には?」

おもいっきり雲行きが怪しくなってきた。

「後は古代の魔導書グリモアを授けたとか。貰ったんですよね?」
「あ、ああ。・・・貰ったよ」

貰ったのは魔導書ではない、武器や防具だ。
それに勇者に任命もされてないし、人族をまとめあげるなんて話も聞いてない。

俺は四姫桜の顔を見る。
口には出さないが、もちろん全員違和感ありまくりだ。

「あっ、あと、近いうちに四姫桜はエルダイトに移住して、人族の為に戦うって言ってました。ケイノスに居るのは、女神様をお救いするためだったって!流石女神様、本当にいらっしゃいましたもんね!」

女職員はニッコニコだ。

「・・・ああ。女神様に会えるかな?どこにいる?」
「知らないんですか?」
「ああ。俺たちは任務帰りだから、それの報告をしに行かないと」
「なるほど~」

女職員はカウンターから身を乗り出し、右の方を指差す。

「いつもはお城ですけど、この先にステージがありまして、週に一度お顔を見せてくれます。明日がその日になりますね。あっ、でも四姫桜さんならお城に行けばいいのか」
「いや、いい。俺らも女神様をびっくりさせたいから。ステージの観客を装ってみようかな?」

女職員は、ぱあと花開く。

「うわぁ、サプライズですね!良いですね!」
「ああ。じゃあ、ありがとうな」
「こちらこそ!明日のお昼ですよー!」


俺たちは冒険者ギルドを後にした。

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