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なんで俺が……
なんでアイツの名前が……
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「二年D組の長谷部恵吾くん、職員室、林のところまで来るように」
帰りのホームルームが終ってすぐ、バイトまでの時間をどう潰そうかと考えていた長谷恵吾は、林からの突然の呼び出しに溜息を洩らした。林の呼び出しは、そのほとんどが面倒な雑務ばかりである。
実は、恵吾の母親と林は姉弟で、二人は親戚である。そのため、事ある毎に公私問わずにこうやって呼びつけるのだ。
(あいつ、校内放送を携帯電話かなんかと勘違いしてんな、ったく)
「翔ちゃん、頼むから校内放送を使って俺を呼ぶの止めてくんないかな」
「おう、恵吾、来たか」
「……今回は、何のようだよ」
「オイオイ、なんでお前はいつもそう不機嫌そうな顔をしてんだ」
「翔ちゃんが、嫌なことをするから」
恵吾は膨れっ面で言った。
「嫌なことって、呼び出しか?」
「いつもいつも呼び出し食らってちゃ、俺のイメージが……」
「はは、イメージってなんだ」
「恵吾様のイメージだよ!!」
「なんだお前、人の目なんか気にしてんのか一丁前に」
「とにかく恥ずかしいから止めてくれよな」
「わかったよ、もうしない」
嘘だ。林はいつもそうやって言うのだ。一枚上手というか、食えないやつという感じがある。母から聞くにプライベートも派手でいろいろあるらしく、そんな林が教師という職業を選択したときは家族みんな驚いたそうだ。
恵吾は甥っ子という立場のせいで、なんだかんだで気付けばいつも良いように利用されている気がする。いい加減、結婚でもして落ち着けばいいのに。
「翔ちゃん、結婚しないの?」
「なんだ、いきなり」
「翔ちゃん、もう若くないでしょ」
「そうかなあ」
「だって三十三でしょ」
「そうだよ」
「オジサンでショ」
「うん、僕が君の叔父さんであることは間違いない」
「俺のじゃなくって、世間一般にいうオジサン」
「うーん」
林は、結構真剣に唸っている。
「まあ、いいや、それより用って何? 俺、今日バイトがあるから手短にお願い」
「ああ、お前さ、有名人になる気はないか?」
「へ?」
「いや、ちょっとした大会に出てほしいんだけど、」
「大会? 俺チームプレイ、苦手だぞ」
「いいんだ、だが問題が一つあって、頭を使う」
「……バカの俺が?」
「……そうだ。でもお前、この学校に入れたんだから、できるって!」
「待って待って、何俺に試験以外に勉強すれっていうの? イヤだぜ、バイトだってあるし」
「代わりに一個、何でも言うこと聞いてやるからさ、頼む」
「何でもって……」
恵吾は、『何でも』という言葉に釣られそうである。今まで散々こき使われてきたけれど、交換条件の提案なんて初めてだった。この際、うんと高いモノでも買ってもらおうか――。
結局、今回も林のお願いを断れなかった恵吾は、話を一旦切り上げてバイト先のコンビニへ向かった。
恵吾の働いているコンビニは駅やバス停から少し遠い、自宅近くにある。その分、帰りは歩いて帰れるから気楽でいい。
その日は以外に客の出入りがあり、いつもより忙しなく働いた。
十分休憩の間、恵は林から手渡されたメモを見ながら、やっぱり今回だけは断れば良かったと後悔していた。
恵吾は少し長くなった前髪の毛先をちりちりと捩じりながら、そこに書かれたある人物の名前を、じっと見つめていた。
林からの説明はとても簡易なものだった。
「恵吾、このメモに書いている奴に声掛けて、八月の大会に出場してほしいんだ」
「は? 大会って何のだよ」
「暗記力を競うんだ」
「え~、俺、中の下なのに」
「うん、だからちょっとやってくれよ、勉強」
「なんで俺なんだよぉ」
「うーん、まあ、単純に見た目がな、ジャ○ーズにいそうだから」
「なんだよ、それー」
「どうせ我が校の宣伝するんなら可愛い子の方がいいだろ」
「はあ?」
「いやいや、こっちの話だ。とにかくお前が鍵なのは確かなんで。ま、頭の方は他の奴らには任せよう」
「っつーか、それに参加したらいいことあるのかよ」
「だから、何でも言うこと聞いてやるって」
「本当に何でも?」
「本当に、何でも」
怪訝そうな恵吾に対して、林は満面の笑みだ。
「回らない寿司屋でも、高級レストランでも、いいぞ。うまいもん、何でも食わしてやる」
「そうやって食いもんで釣ろうとして……、子どもじゃないんだぞ」
「子どもだろ」
「うるせっ! だいたい、他のやつらはどうやって集めるんだよ。翔ちゃんがやればいいのになんで俺が誘うの?」
「まあまあ、とにかくコレ、はい」
そう言って渡された林メモ。細かいことは何も書いていない。林の、決して綺麗とは言えない箇条書き。
恵吾は、そこに書かれた人物のうち、一人をよーく知っている。
(なんでだよ、翔ちゃん……よりによってなんてアイツの名前が)
悶々としていた恵吾は、バイトの相方に呼び鈴で呼ばれた。カメラを見るとレジが並んでいる。
「うわ、もう10分経ったのか~、パン食おうと思ってたのに!」
一先ず、急いでレジへと向かった。
帰りのホームルームが終ってすぐ、バイトまでの時間をどう潰そうかと考えていた長谷恵吾は、林からの突然の呼び出しに溜息を洩らした。林の呼び出しは、そのほとんどが面倒な雑務ばかりである。
実は、恵吾の母親と林は姉弟で、二人は親戚である。そのため、事ある毎に公私問わずにこうやって呼びつけるのだ。
(あいつ、校内放送を携帯電話かなんかと勘違いしてんな、ったく)
「翔ちゃん、頼むから校内放送を使って俺を呼ぶの止めてくんないかな」
「おう、恵吾、来たか」
「……今回は、何のようだよ」
「オイオイ、なんでお前はいつもそう不機嫌そうな顔をしてんだ」
「翔ちゃんが、嫌なことをするから」
恵吾は膨れっ面で言った。
「嫌なことって、呼び出しか?」
「いつもいつも呼び出し食らってちゃ、俺のイメージが……」
「はは、イメージってなんだ」
「恵吾様のイメージだよ!!」
「なんだお前、人の目なんか気にしてんのか一丁前に」
「とにかく恥ずかしいから止めてくれよな」
「わかったよ、もうしない」
嘘だ。林はいつもそうやって言うのだ。一枚上手というか、食えないやつという感じがある。母から聞くにプライベートも派手でいろいろあるらしく、そんな林が教師という職業を選択したときは家族みんな驚いたそうだ。
恵吾は甥っ子という立場のせいで、なんだかんだで気付けばいつも良いように利用されている気がする。いい加減、結婚でもして落ち着けばいいのに。
「翔ちゃん、結婚しないの?」
「なんだ、いきなり」
「翔ちゃん、もう若くないでしょ」
「そうかなあ」
「だって三十三でしょ」
「そうだよ」
「オジサンでショ」
「うん、僕が君の叔父さんであることは間違いない」
「俺のじゃなくって、世間一般にいうオジサン」
「うーん」
林は、結構真剣に唸っている。
「まあ、いいや、それより用って何? 俺、今日バイトがあるから手短にお願い」
「ああ、お前さ、有名人になる気はないか?」
「へ?」
「いや、ちょっとした大会に出てほしいんだけど、」
「大会? 俺チームプレイ、苦手だぞ」
「いいんだ、だが問題が一つあって、頭を使う」
「……バカの俺が?」
「……そうだ。でもお前、この学校に入れたんだから、できるって!」
「待って待って、何俺に試験以外に勉強すれっていうの? イヤだぜ、バイトだってあるし」
「代わりに一個、何でも言うこと聞いてやるからさ、頼む」
「何でもって……」
恵吾は、『何でも』という言葉に釣られそうである。今まで散々こき使われてきたけれど、交換条件の提案なんて初めてだった。この際、うんと高いモノでも買ってもらおうか――。
結局、今回も林のお願いを断れなかった恵吾は、話を一旦切り上げてバイト先のコンビニへ向かった。
恵吾の働いているコンビニは駅やバス停から少し遠い、自宅近くにある。その分、帰りは歩いて帰れるから気楽でいい。
その日は以外に客の出入りがあり、いつもより忙しなく働いた。
十分休憩の間、恵は林から手渡されたメモを見ながら、やっぱり今回だけは断れば良かったと後悔していた。
恵吾は少し長くなった前髪の毛先をちりちりと捩じりながら、そこに書かれたある人物の名前を、じっと見つめていた。
林からの説明はとても簡易なものだった。
「恵吾、このメモに書いている奴に声掛けて、八月の大会に出場してほしいんだ」
「は? 大会って何のだよ」
「暗記力を競うんだ」
「え~、俺、中の下なのに」
「うん、だからちょっとやってくれよ、勉強」
「なんで俺なんだよぉ」
「うーん、まあ、単純に見た目がな、ジャ○ーズにいそうだから」
「なんだよ、それー」
「どうせ我が校の宣伝するんなら可愛い子の方がいいだろ」
「はあ?」
「いやいや、こっちの話だ。とにかくお前が鍵なのは確かなんで。ま、頭の方は他の奴らには任せよう」
「っつーか、それに参加したらいいことあるのかよ」
「だから、何でも言うこと聞いてやるって」
「本当に何でも?」
「本当に、何でも」
怪訝そうな恵吾に対して、林は満面の笑みだ。
「回らない寿司屋でも、高級レストランでも、いいぞ。うまいもん、何でも食わしてやる」
「そうやって食いもんで釣ろうとして……、子どもじゃないんだぞ」
「子どもだろ」
「うるせっ! だいたい、他のやつらはどうやって集めるんだよ。翔ちゃんがやればいいのになんで俺が誘うの?」
「まあまあ、とにかくコレ、はい」
そう言って渡された林メモ。細かいことは何も書いていない。林の、決して綺麗とは言えない箇条書き。
恵吾は、そこに書かれた人物のうち、一人をよーく知っている。
(なんでだよ、翔ちゃん……よりによってなんてアイツの名前が)
悶々としていた恵吾は、バイトの相方に呼び鈴で呼ばれた。カメラを見るとレジが並んでいる。
「うわ、もう10分経ったのか~、パン食おうと思ってたのに!」
一先ず、急いでレジへと向かった。
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