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目指せ大会優勝!
大会に向けての作戦
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放課後、集まった四人は広い教室の前方に、それぞれ散り散りになって座っていた。
「皆集まったな、よし、じゃあ八月の大会について説明していくぞ」
林の合図とともに、改めて顔を会わせる。恵吾はともかく、佐野と落語二人は互いに初めてのようだった。
最初に簡単な自己紹介をお互いにし合い、そこからの進行も林が上手にしてくれているおかげで、恵吾以外は社交的とは思えないこのメンバーも気まずさを感じずに時間を共有することができている。
「今回の大会の趣旨は、表向きは県内校の交流なんだが、昨今の我が校の汚名返上が本当の目的でもあるんだ、皆知っているだろう、三年前の事件」
「ああ……」
恵吾の声が漏れた。この学校内では有名な話だ。
「君達には直接関係ないことだけれど、あれから部活動の功績や学力だって決して衰えてはいないのに、一度世間から貼られたレッテルっていうのは簡単には剥がせないということだな……」
「でもその事件と今回の大会が関係しているとは思えないんですけど」
東條の発言に、うむ、と林は続けた。
「この大会で目指すのは優勝だ。君たちには我が校のイメージ戦略の重要な鍵になってもらいたい。来年から受験生の君達には面倒で骨折ることかもしれんが、だからこそ君達にはそれ相応の条件を提示させてもらったんだよ。悪い話じゃ、ないだろ?」
「イメージ戦略……ですか……」
林の言葉を聞いて、佐野がぽつりと呟く。何やら考えているようだ。
「まあまあ、あまり深く考え込むな。みんなは大会で優勝してくれればいいんだから。あとの手筈は俺が全部やるから、な」
「それがなんかこわいんだよな」
「なんだよ、恵吾」
「いや別に」
「先生、待ってください。優勝を目指すなら俺らはともかくとして、どうして長谷部くんなんですか?」
「おい、俺も思ったが……お前が言うなよ東條!」
東條の言葉に、恵吾が噛み付いた。
「まあまあ、学力でいうならもっと出来のいいヤツはたくさんいたが、今回は恵吾でいいんだよ」
「どういうことですか?」
「企画書も既に通ったから、皆には大会の概要を伝えておくな。高校生クイズ知ってるか? 予選はあんな感じで、お祭りのノリで、楽しくやろうと思ってんだ。だからさ、あまり真面目くんばかり集めても楽しくないだろ」
「俺、盛り上げ要員かよ」
「なんだ不服か?」
「別に」
「予選はチームの誰かが正解を答えられればいいんだから楽勝だよな。問題は決勝なんだが、四つの種目を一人が担当してもらう」
お祭りという言葉を聞いて、少し楽しそうだなと恵吾は思った。学園祭や体育祭、祭りという名前がつくイベントは大好きだ。
「実はもう参加校も決定して……あ、そうそう来週な、地元新聞の取材が来るから、恵吾、お前代表で受けてくれ。まあ、適当でいい」
「はあ? 取材?」
(なんで新聞の取材なんか)
「大丈夫、大丈夫、俺も一緒だ」
林はまたしても、不敵の笑みだ。この顔をされると恵吾は弱い。
「先生、質問ですが、大会まで僕らは何をすればいいですか?」
ここにきて三ノ宮が初めて挙手し質問した。
「大会まで、別にやることはないよ。君達の今まで培ってきた知能を信頼しているからな。いつも通り勉学に励み当日を待ってくれればそれでいい」
「はあ……」
「ただ、大会は夏休み明けすぐなんだが、夏休みに一週間だけ、集中して作戦を練るために集まってほしいんだ。それにお前らなんか仲悪そうだし、チームプレイは団結が大事だ。そういう目的で合宿をしたいと思っているから、それだけ参加してほしいんだ、それで終わり。一週間と、当日の一日だけ、君達の貴重な時間をくれれば、それで君等の飲んだ条件を叶えるのだから、悪くはないだろう?」
「合宿……暗記大会のための合宿ってなんかネクラでダサイな」
「そうなんだよ、暗記大会ってダサイよな。俺はこの大会をそんなふうにはしたくない。あくまで本校のイメージアップを目指しているから、そこだけはみんな協力してくれよ」
林が無敵の笑みを浮かべている。恵吾はこの笑顔の裏に隠れた思惑が絶対にあると踏んだ。
(なんかこわいな~)
「ただし恵吾。お前に関しては、今からみっちり暗記の特訓をしてもらうぞ。俺がやってもいいんだが、ここは佐野にコーチをお願いしたいと思っている。佐野、確認はしたが、いいよな?」
「いいですよ」
「ええーーー」
(なにー! いいですよって、俺は、あんまり……よくないよ……)
「ん? なんだ、恵吾、異議ありか?」
「へ? いや、異議なし、です」
(どうすっかなあ、でも、やるしかないよな)
「じゃあ、解散! 取材のこととか合宿のこととか、決まり次第また連絡する」
大会当日までちょうど二ヶ月。
そして翌日から、長谷部と佐野の放課後の訓練が始まった。
「皆集まったな、よし、じゃあ八月の大会について説明していくぞ」
林の合図とともに、改めて顔を会わせる。恵吾はともかく、佐野と落語二人は互いに初めてのようだった。
最初に簡単な自己紹介をお互いにし合い、そこからの進行も林が上手にしてくれているおかげで、恵吾以外は社交的とは思えないこのメンバーも気まずさを感じずに時間を共有することができている。
「今回の大会の趣旨は、表向きは県内校の交流なんだが、昨今の我が校の汚名返上が本当の目的でもあるんだ、皆知っているだろう、三年前の事件」
「ああ……」
恵吾の声が漏れた。この学校内では有名な話だ。
「君達には直接関係ないことだけれど、あれから部活動の功績や学力だって決して衰えてはいないのに、一度世間から貼られたレッテルっていうのは簡単には剥がせないということだな……」
「でもその事件と今回の大会が関係しているとは思えないんですけど」
東條の発言に、うむ、と林は続けた。
「この大会で目指すのは優勝だ。君たちには我が校のイメージ戦略の重要な鍵になってもらいたい。来年から受験生の君達には面倒で骨折ることかもしれんが、だからこそ君達にはそれ相応の条件を提示させてもらったんだよ。悪い話じゃ、ないだろ?」
「イメージ戦略……ですか……」
林の言葉を聞いて、佐野がぽつりと呟く。何やら考えているようだ。
「まあまあ、あまり深く考え込むな。みんなは大会で優勝してくれればいいんだから。あとの手筈は俺が全部やるから、な」
「それがなんかこわいんだよな」
「なんだよ、恵吾」
「いや別に」
「先生、待ってください。優勝を目指すなら俺らはともかくとして、どうして長谷部くんなんですか?」
「おい、俺も思ったが……お前が言うなよ東條!」
東條の言葉に、恵吾が噛み付いた。
「まあまあ、学力でいうならもっと出来のいいヤツはたくさんいたが、今回は恵吾でいいんだよ」
「どういうことですか?」
「企画書も既に通ったから、皆には大会の概要を伝えておくな。高校生クイズ知ってるか? 予選はあんな感じで、お祭りのノリで、楽しくやろうと思ってんだ。だからさ、あまり真面目くんばかり集めても楽しくないだろ」
「俺、盛り上げ要員かよ」
「なんだ不服か?」
「別に」
「予選はチームの誰かが正解を答えられればいいんだから楽勝だよな。問題は決勝なんだが、四つの種目を一人が担当してもらう」
お祭りという言葉を聞いて、少し楽しそうだなと恵吾は思った。学園祭や体育祭、祭りという名前がつくイベントは大好きだ。
「実はもう参加校も決定して……あ、そうそう来週な、地元新聞の取材が来るから、恵吾、お前代表で受けてくれ。まあ、適当でいい」
「はあ? 取材?」
(なんで新聞の取材なんか)
「大丈夫、大丈夫、俺も一緒だ」
林はまたしても、不敵の笑みだ。この顔をされると恵吾は弱い。
「先生、質問ですが、大会まで僕らは何をすればいいですか?」
ここにきて三ノ宮が初めて挙手し質問した。
「大会まで、別にやることはないよ。君達の今まで培ってきた知能を信頼しているからな。いつも通り勉学に励み当日を待ってくれればそれでいい」
「はあ……」
「ただ、大会は夏休み明けすぐなんだが、夏休みに一週間だけ、集中して作戦を練るために集まってほしいんだ。それにお前らなんか仲悪そうだし、チームプレイは団結が大事だ。そういう目的で合宿をしたいと思っているから、それだけ参加してほしいんだ、それで終わり。一週間と、当日の一日だけ、君達の貴重な時間をくれれば、それで君等の飲んだ条件を叶えるのだから、悪くはないだろう?」
「合宿……暗記大会のための合宿ってなんかネクラでダサイな」
「そうなんだよ、暗記大会ってダサイよな。俺はこの大会をそんなふうにはしたくない。あくまで本校のイメージアップを目指しているから、そこだけはみんな協力してくれよ」
林が無敵の笑みを浮かべている。恵吾はこの笑顔の裏に隠れた思惑が絶対にあると踏んだ。
(なんかこわいな~)
「ただし恵吾。お前に関しては、今からみっちり暗記の特訓をしてもらうぞ。俺がやってもいいんだが、ここは佐野にコーチをお願いしたいと思っている。佐野、確認はしたが、いいよな?」
「いいですよ」
「ええーーー」
(なにー! いいですよって、俺は、あんまり……よくないよ……)
「ん? なんだ、恵吾、異議ありか?」
「へ? いや、異議なし、です」
(どうすっかなあ、でも、やるしかないよな)
「じゃあ、解散! 取材のこととか合宿のこととか、決まり次第また連絡する」
大会当日までちょうど二ヶ月。
そして翌日から、長谷部と佐野の放課後の訓練が始まった。
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