幼馴染みが記憶トレーニングと称して、いやらしく俺に触れてくるんだが。

ことりさん

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目指せ大会優勝!

テレビ取材がイケメンを強調し過ぎなのはなんでだ??

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「先生、先生! 見てくれ! すごいだろ!」
「やめろっ、引っ張んな!」
「ぼ、僕も……嫌だな……」
「つべこべ言わずにこっち来いって、男だろーが!」
 恵吾は、なかなか更衣室から出てこない東條と三ノ宮を引きずり出そうと必死だった。
 そこへ林がタイミングよくやってきたのだ。

 合宿前日の当日、概要を知らされていなかった二人と佐野を連れ回し、何とかヘアスタイルと服装の見立てを終えた恵吾であったが、テレビ取材のことを話すと佐野以外は断固拒否の姿勢を見せた。
 今、死闘が繰り広げされている更衣室の傍で、さっさと私服に着替え終えた佐野がマイペースにお茶を飲んでいた。

「叡智学園の宣伝なら、制服で良かったんじゃないですか?」
 まだ騒いでいる三人の傍で、佐野が林に言った。

「ギャップだよ、佐野。イケメン高校生のオフショットをまず見てもらってから、本番の制服姿で……想像しただけでぐっとくるだろ」
「ふーん、そういうものですか……」
「佐野は自前の服? お金やったんだから新調しても良かったんだぞ」
「別にこれでいいでしょ、それより恵吾のやつ、昼飯代で全額使っちゃいましたよ」
「ああ、いいんだいいんだ、育ち盛りなんだからいっぱい食えってな。で、何食べたの?」
「肉……だから喉が乾いて」

 佐野は、低めのトーンで相槌を打ち、飲み干して残った氷を口に流し込む。上下する喉元のラインが男らしい。





「おお! 観念したか。それにしても、恵吾! でかしたぞ。これがあの東條と三ノ宮か~」

 観念した三ノ宮が照れたように、そして続いて東條が不機嫌に出てきた。

「いやあ、こいつらの私服、ほんとヒデーの。素材が悪くなくてよかったぜ」
 恵吾が自慢げに言うと、林は、うんうんと頷いている。

「お前ら、今までもったいないことをしたなあ~、早くに磨いていればきっと今頃は童貞じゃなかったぞ」
「ど、童貞とか、そういうこと言っていいのかよ、先公のくせして!」
 東條が耳まで赤くして怒っている。

 林の号令でとりあえず整列してみた四人。改めて林が一人一人をチェックする。

 右から、三ノ宮。
 瓶底みたいな博士メガネを、今流行りのダサかっこいい縁太メガネに変え、小さなドット柄のワイシャツとカラーパンツを合わせた。
 髪の毛は毛先に少しパーマを掛けて思い切って額を出した。
 三ノ宮の繊細な鼻筋が強調され、小ぶりの目と口も上品である。

 その隣は恵吾。
 茶色で少し伸びた前髪を斜めに流し、形の良い眉と瞳が印象的だ。
 健康的な肌、中学ではバスケ部に所属していた長谷部の体つきは細くもしなやかな骨格を作っている。
 ラフなジーンズに胸元の少し開いたTシャツを合わせたAラインシルエット。

 そして、佐野。
 小さい顔に、知的なパーツがバランスよく配置され、爽やかさの中に艶がある。襟足は短めに、前髪は目に掛かるか掛からないかくらいの長さで耳の方に流れている。ジーンズとTシャツはモノトーンでシンプルだが、シューズや腕時計にセンスを感じる。

 最後に東條。
 でかいキノコみたいだった前髪を思い切り短くし両サイドを刈り上げスタイルにした。
 初めて露わになった顔は意外にも彫りが深く、ハーフみたいな顔立ちだった。ファッションは、Tシャツにカーディガンを羽織らせ、サルエルパンツで遊んでみた。


「いいねえ、皆、個性が出てる。バッチリバッチリ」
「東條が変わり過ぎだろ」
 恵吾が笑いを堪え切れずに言うと、東條は、なんだよお前、とムキになる。
「でも、正紀くん、本当にカッコイイよ」
「そ、そうか、草太も……黙って突っ立ってればモデルみたいだな」
「お前ら褒め合ってホモホモな雰囲気で、キショイぞ」
「うるさいな!」
「まあまあ……」

 恵吾と東條は放っておくとすぐに揉めるので困る。






「よし、取材が来るまで、ペンションの掃除だ~」

 学園が用意した宿舎は、理事長の持ちペンションだと林が言っていた。
 ゲストルームが三部屋だったので、林を除いた四人でくじ引きをし、恵吾と佐野、三ノ宮、東條に部屋割が決まった。

 玄関を箒で掃きながら、恵吾は佐野に話しかける。
「合宿とか抜きにして、普通にこんな豪華なペンションにタダで泊まれるなんてラッキーだよな」
「そうだね」
「なあ、あの二人じゃないけどさ、佐野は私服もカッコイイな」
「そう?」
「うん、こんな男に告られたら、どんなやつもイチコロだと……」
(あっ)

 恵吾は言ってしまってから墓穴を掘った、と思った。
 何も考えずについ言ってしまったが、こんなこと佐野に言える立場ではないはずだった。
 思えば、佐野との距離は曖昧なまま、ただ昔みたいに仲良くできたことが嬉しくて忘れていたのだ。
 佐野と向き合う準備もできていないまま、微妙な空気を自分で生んでしまった。

「本当に、そう思う?」
「う、うん……」
「じゃあ、今ここで告白してみよっかな」
「え? ……だ、誰に?」

 長谷部が困った顔をしていることに、佐野が気付いたのだろう。

「冗談だよ、恵吾って自分はすぐに冗談ばかり言うのに、冗談の通じないやつだよね」
「え、はは、そうかも」
「恵吾も、カッコイイよ。本当はテレビとか、嫌だなあ。他の人にあまり見せたくないよ」
「誰が、誰を!?」
「俺がお前を」
「おま、おまっ、お前は、まだ冗談の続きか?」
「うん、そう」
 ここにきて何となく、新しい二人の関係が出来始めているような気がした。中学の頃とは少し違う形だけど、また良い関係を築くことができるかもしれない。そう考えると林に感謝だな、と恵吾は幾らか安堵した。






 そうこうしていると、テレビの取材が来た。
 レポーターで来たのは巷では有名のアナウンサーで、恵吾は普段テレビで見ている人物を生で見て、しかも共演することに、少しテンションが上がっていた。

「さて、本日も『インテリイケメンを探せ!』のコーナーがやってまいりました。今日はですね、私ももう既に興奮しておりますが、かなりのイケメン、しかも四人です! 四人もですよ~! さっそくご紹介したいと思います。は~い、叡智学園の皆さんです」

 こんな感じの紹介で始まった。

「いやあ、なんてイケメン、これぞイケメン。この回は、録画必須ですね! しかも、先生、先生もイケメンですね。ちなみに先生は既婚者ですか~?」
「いえ、独身です! 最近彼女に振られまして、現在募集中です」
 林はそう言ってカメラに極上スマイルを向けた。

(翔ちゃんって、生粋の女たらしだな。ってか、このアナウンサー、イケメンイケメン言い過ぎじゃね? この番組、こんなくだらねえコーナーあったんだな……)

 アナウンサーのテンションに押され気味の恵吾たち。
 恵吾は他の三人をちらりと見ると、佐野は興味なさそうな怠そうな顔をしている。
 東條は、緊張して能面みたいになっているし、三ノ宮はというと笑っているが明らかに引き攣っていて可笑しい。

「今回、このイケメンメンバーは、県内で開かれる交流大会に出場されるというお話を聞きましたが」
「はい、そうなんです。我が叡智学園主催で、今年から開催することになりました。今回は記憶力を競う大会です。これがきっかけで県の高校や地域の活性化に貢献できればと思っています。それから大会を通して、これから進路を決める子どもたちに各校の魅力や特色を伝えられたらとも思っています」
「へえ~、とても建設的で素晴らしい企画ですね」
「ありがとうございます」
「ところで、今回、主催校としては優勝を狙っていくのですよね?」
「もちろんです!」
「ちなみに、叡智学園って、こんなにイケメンが多いんですか~?」
「ええ、どうでしょうかね」
「どう思います?」
 それまで、レポーターと林の独壇場だったはずの現場で、突然、恵吾にマイクが向けられた。
 ぼけっとしていた恵吾は、答え辛い質問にシドロモドロになった。

「え~と……僕等、イケメンなんでしょうか……」
「………イケメンでしょ~、何言っちゃってんの~、なんて謙虚な少年たちなんでしょう」
「俺ら、目立たないほうですよ」
「え~、君達が目立たない方って、どんな学校なの~、ぜひぜひ今後は学園の方にもお邪魔させていただきたいですわ」
「それはいいですね。我が校は、生徒の知性と品性と重んじるだけではなく、校舎の設備や衛生にもこだわっていまして、とてもキレイな校内ですから、ぜひ見にいらしてください」
「行く行く~、皆さんも、行きたいですよねえ~」
「私が案内します」

 フィニッシュは、林のキメ顔だった。

(それにしても、この取材ってなんだか……前の新聞社とずいぶん違ってね? 妙にイケメンを押してるし……ってか大会よりもイケメンがメインじゃん)



「……ということで、交流大会は十日後、叡智学園の第一体育館で開かれます。一般の方も入場できますから、ぜひインテリイケメンを応援しに行きましょう! いやあ、今回は番組始まって以来のハイクオリティでしたね。この回を超えるイケメンは現れるのでしょうか。では、また来週、このコーナーでお会いしましょう!」





 取材はあっという間に終わった。

 そしてこの後日、問い合わせが学園に殺到し、林がほくそ笑むことになるということを、恵吾はまだ知らなかった……。























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