28 / 53
【番外編】シスコン王太子は女性騎士と結婚したい
3-2
しおりを挟む
(フレイアが危ない!ソラリスも…!)
テルル王太子夫妻襲撃の知らせを受けたサイラスは、すぐさまテネシン山の麓へ向かった。
テネシン山はテルルとの国境付近にある山で、豊かな金鉱があることで知られている。
そしてその山の麓の村には、金鉱で働く元傭兵の鉱夫が多数住んでいる。
平和によって仕事をなくした屈強な元傭兵を鉱夫に仕立て、また、国境も守ってもらえれば一石二鳥というわけである。
サイラスはそこで鉱夫たちを組み込む軍勢を仕立てると、一路、国境を目指した。
国境に着けば、当然テルル側の国境を守る警備兵はアルゴン兵を足止めした。
突然アルゴン軍が、しかも王太子自らテルルを攻撃してきたのかと右往左往の大騒ぎである。
とにかく状況説明と援軍を要請するため、国境警備の指揮官は王都へ使者を立てた。
サイラスとしても、すぐにフレイアの元に駆けつけたいが、だからと言って無理矢理突破して、ここでテルル軍と戦いたくはない。
そうしてテルル警備兵とアルゴン軍とで睨み合っている最中、やっとテルル王太子夫妻が襲撃されたという第一報が指揮官に入った。
一方その頃。
森での襲撃に失敗した反乱軍は、王太子セレンが逃げたであろう離宮に向かっていた。
それを知ったセレンは籠城戦に持ち込むため東の砦に向かう。
そして王太子妃フレイアも夫を助けるため、離宮を出て東の砦に向かった。
その途中フレイアは、付き従っていた侍女ソラリスに、国境までサイラスを迎えに行くよう指示を出す。
ハロルドから、サイラスが国境へ向かっていることを知らされていたからだ。
「お兄様を迎えに行って、ソラリス。
多分アルゴン軍は国境で足止めされているはずだから」
国境を守る警備兵の指揮官宛に、王太子妃である自分の手紙と親衛隊長ハッサムの手紙を持たせる。
ハッサムには万が一実家に助けを求める際には国境を解放する命令を出して欲しいと話しておいたのだ。
しかしソラリスは首を縦に振らない。
「嫌です。私は姫様のそばを離れません」
ソラリスは死ぬも生きるもフレイアのそばでと決めている。
今から籠城戦に加わろうとしている主人から離れるなど、言語道断なのである。
「お願い、ソラリス。
今ここで、アルゴン軍にすんなり近づけるのはあなただけでしょう?」
「では姫様も一緒に逃げましょう。
何故あんな男のために姫様が命をかけて守ろうとするのですか?」
ソラリスはセレンが大嫌いだ。
正直、このクーデターで彼がどうなろうともソラリスの知ったことではない。
最近フレイアに対する態度が優しくなったとは思うが、今までの仕打ちを払拭できるとは露ほども思えない。
ソラリスの敬愛する主人に不幸な結婚生活を送らせた夫など、助ける価値も無いと思っている。
そんなソラリスを見て、フレイアは苦笑した。
「仕方ないでしょう?
私はこれでもまだ王太子妃で、セレン殿下の妻なのだもの」
「いいえ、その前に貴女はアルゴン王女です。
お願いですから、このまま私とサイラス殿下の下へ参りましょう」
「違うわソラリス。
私はテルル王太子妃。逃げるわけにいかないの。
もう夫としてのセレン殿下への想いはないけれど、同士みたいなものなのよ」
「では私も残ります。
絶対に姫様のそばを離れません」
「これは命令よ、ソラリス。
貴女が希望なのよ。
お兄様が間に合ってくれれば、勝ち目があるわ。
だから…、きっと貴女がお兄様を連れてきてくれるって信じてる。
それまで持ちこたえるって約束するわ」
『希望』とまで言われ、ソラリスは唇を噛んだ。
たしかに今のこの状況で、セレン側は絶対的に不利なのだから。
「絶対に…、危なくなったら逃げてくださいね、姫様」
ソラリスは滅多に見せない涙を溢れさせ、フレイアに抱きついた。
「わかった。約束するわ」
フレイアも声を震わせながらソラリスの背中に腕を回す。
(約束なんて言ったって、姫様は絶対に逃げない)
それはソラリスもわかっている。
だから今は。
一刻も早くサイラスを連れて戻ることだ。
「ご武運を、姫様」
「貴女も、気をつけて」
ギュッと、思い切りフレイアを抱きしめた後、ソラリスは真っ直ぐに立って、胸に手を当てた。
「行って来ます、姫様。
必ず、サイラス殿下をお連れします」
「頼んだわ、ソラリス」
この時フレイアは、本当は兄が間に合うかなんて五分五分だろうと思っていた。
もちろん兄はフレイアを助けるために最善を尽くすであろう。
だが、そもそも視察旅行に向かっていたはずの兄が、俄かに兵を集めるのも、国境を越えるのも難しいと感じていたのだ。
だが、なんとしても姉とも慕うソラリスだけは助けたかった。
メアリとケティはすでに森の襲撃直後に落ち延びさせた。
あとはソラリスが離れてくれれば…。
籠城戦になるのをわかっていて砦に向かうのは自分の我儘だ。
そこに、ソラリスを巻き込みたくはない。
フレイアは国境に向かって祈りを捧げた。
願わくば、サイラスの援軍が間に合うようにと。
しかしもし間に合わない時は、ソラリスを連れてアルゴンへ引き上げて欲しい。
フレイアはそう、願っていたのだ。
テルル王太子夫妻襲撃の知らせを受けたサイラスは、すぐさまテネシン山の麓へ向かった。
テネシン山はテルルとの国境付近にある山で、豊かな金鉱があることで知られている。
そしてその山の麓の村には、金鉱で働く元傭兵の鉱夫が多数住んでいる。
平和によって仕事をなくした屈強な元傭兵を鉱夫に仕立て、また、国境も守ってもらえれば一石二鳥というわけである。
サイラスはそこで鉱夫たちを組み込む軍勢を仕立てると、一路、国境を目指した。
国境に着けば、当然テルル側の国境を守る警備兵はアルゴン兵を足止めした。
突然アルゴン軍が、しかも王太子自らテルルを攻撃してきたのかと右往左往の大騒ぎである。
とにかく状況説明と援軍を要請するため、国境警備の指揮官は王都へ使者を立てた。
サイラスとしても、すぐにフレイアの元に駆けつけたいが、だからと言って無理矢理突破して、ここでテルル軍と戦いたくはない。
そうしてテルル警備兵とアルゴン軍とで睨み合っている最中、やっとテルル王太子夫妻が襲撃されたという第一報が指揮官に入った。
一方その頃。
森での襲撃に失敗した反乱軍は、王太子セレンが逃げたであろう離宮に向かっていた。
それを知ったセレンは籠城戦に持ち込むため東の砦に向かう。
そして王太子妃フレイアも夫を助けるため、離宮を出て東の砦に向かった。
その途中フレイアは、付き従っていた侍女ソラリスに、国境までサイラスを迎えに行くよう指示を出す。
ハロルドから、サイラスが国境へ向かっていることを知らされていたからだ。
「お兄様を迎えに行って、ソラリス。
多分アルゴン軍は国境で足止めされているはずだから」
国境を守る警備兵の指揮官宛に、王太子妃である自分の手紙と親衛隊長ハッサムの手紙を持たせる。
ハッサムには万が一実家に助けを求める際には国境を解放する命令を出して欲しいと話しておいたのだ。
しかしソラリスは首を縦に振らない。
「嫌です。私は姫様のそばを離れません」
ソラリスは死ぬも生きるもフレイアのそばでと決めている。
今から籠城戦に加わろうとしている主人から離れるなど、言語道断なのである。
「お願い、ソラリス。
今ここで、アルゴン軍にすんなり近づけるのはあなただけでしょう?」
「では姫様も一緒に逃げましょう。
何故あんな男のために姫様が命をかけて守ろうとするのですか?」
ソラリスはセレンが大嫌いだ。
正直、このクーデターで彼がどうなろうともソラリスの知ったことではない。
最近フレイアに対する態度が優しくなったとは思うが、今までの仕打ちを払拭できるとは露ほども思えない。
ソラリスの敬愛する主人に不幸な結婚生活を送らせた夫など、助ける価値も無いと思っている。
そんなソラリスを見て、フレイアは苦笑した。
「仕方ないでしょう?
私はこれでもまだ王太子妃で、セレン殿下の妻なのだもの」
「いいえ、その前に貴女はアルゴン王女です。
お願いですから、このまま私とサイラス殿下の下へ参りましょう」
「違うわソラリス。
私はテルル王太子妃。逃げるわけにいかないの。
もう夫としてのセレン殿下への想いはないけれど、同士みたいなものなのよ」
「では私も残ります。
絶対に姫様のそばを離れません」
「これは命令よ、ソラリス。
貴女が希望なのよ。
お兄様が間に合ってくれれば、勝ち目があるわ。
だから…、きっと貴女がお兄様を連れてきてくれるって信じてる。
それまで持ちこたえるって約束するわ」
『希望』とまで言われ、ソラリスは唇を噛んだ。
たしかに今のこの状況で、セレン側は絶対的に不利なのだから。
「絶対に…、危なくなったら逃げてくださいね、姫様」
ソラリスは滅多に見せない涙を溢れさせ、フレイアに抱きついた。
「わかった。約束するわ」
フレイアも声を震わせながらソラリスの背中に腕を回す。
(約束なんて言ったって、姫様は絶対に逃げない)
それはソラリスもわかっている。
だから今は。
一刻も早くサイラスを連れて戻ることだ。
「ご武運を、姫様」
「貴女も、気をつけて」
ギュッと、思い切りフレイアを抱きしめた後、ソラリスは真っ直ぐに立って、胸に手を当てた。
「行って来ます、姫様。
必ず、サイラス殿下をお連れします」
「頼んだわ、ソラリス」
この時フレイアは、本当は兄が間に合うかなんて五分五分だろうと思っていた。
もちろん兄はフレイアを助けるために最善を尽くすであろう。
だが、そもそも視察旅行に向かっていたはずの兄が、俄かに兵を集めるのも、国境を越えるのも難しいと感じていたのだ。
だが、なんとしても姉とも慕うソラリスだけは助けたかった。
メアリとケティはすでに森の襲撃直後に落ち延びさせた。
あとはソラリスが離れてくれれば…。
籠城戦になるのをわかっていて砦に向かうのは自分の我儘だ。
そこに、ソラリスを巻き込みたくはない。
フレイアは国境に向かって祈りを捧げた。
願わくば、サイラスの援軍が間に合うようにと。
しかしもし間に合わない時は、ソラリスを連れてアルゴンへ引き上げて欲しい。
フレイアはそう、願っていたのだ。
114
あなたにおすすめの小説
お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!
水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。
シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。
緊張しながら迎えた謁見の日。
シエルから言われた。
「俺がお前を愛することはない」
ああ、そうですか。
結構です。
白い結婚大歓迎!
私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。
私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫」と笑った夫。~王宮から私が去ったあと「愛していた」と泣きついても、もう手遅れです~
水上
恋愛
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫だ」
夫である王太子はそう笑い、泣き真似が得意な見習い令嬢ばかりを優先した。
王太子妃セシリアは、怒り狂うこともなく、静かに心を閉ざす。
「左様でございますか」
彼女は夫への期待というノイズを遮断し、離縁の準備を始めた。
1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません
水川サキ
恋愛
「僕には他に愛する人がいるんだ。だから、君を愛することはできない」
伯爵令嬢アリアは政略結婚で結ばれた侯爵に1年だけでいいから妻のふりをしてほしいと頼まれる。
そのあいだ、何でも好きなものを与えてくれるし、いくらでも贅沢していいと言う。
アリアは喜んでその条件を受け入れる。
たった1年だけど、美味しいものを食べて素敵なドレスや宝石を身につけて、いっぱい楽しいことしちゃおっ!
などと気楽に考えていたのに、なぜか侯爵さまが夜の生活を求めてきて……。
いやいや、あなた私のこと好きじゃないですよね?
ふりですよね? ふり!!
なぜか侯爵さまが離してくれません。
※設定ゆるゆるご都合主義
白い結婚なので無効にします。持参金は全額回収いたします
鷹 綾
恋愛
「白い結婚」であることを理由に、夫から離縁を突きつけられた公爵夫人エリシア。
だが彼女は泣かなかった。
なぜなら――その結婚は、最初から“成立していなかった”から。
教会法に基づき婚姻無効を申請。持参金を全額回収し、彼女が選んだ新たな居場所は修道院だった。
それは逃避ではない。
男の支配から離れ、国家の外側に立つという戦略的選択。
やがて彼女は修道院長として、教育制度の整備、女性領主の育成、商業と医療の再編に関わり、王と王妃を外から支える存在となる。
王冠を欲さず、しかし王冠に影響を与える――白の領域。
一方、かつての夫は地位を失い、制度の中で静かに贖罪の道を歩む。
これは、愛を巡る物語ではない。
「選ばなかった未来」を守り続けた一人の女性の物語。
白は弱さではない。
白は、均衡を保つ力。
白い結婚から始まる、静かなリーガル・リベンジと国家再編の物語。
【完結】王妃を廃した、その後は……
かずきりり
恋愛
私にはもう何もない。何もかもなくなってしまった。
地位や名誉……権力でさえ。
否、最初からそんなものを欲していたわけではないのに……。
望んだものは、ただ一つ。
――あの人からの愛。
ただ、それだけだったというのに……。
「ラウラ! お前を廃妃とする!」
国王陛下であるホセに、いきなり告げられた言葉。
隣には妹のパウラ。
お腹には子どもが居ると言う。
何一つ持たず王城から追い出された私は……
静かな海へと身を沈める。
唯一愛したパウラを王妃の座に座らせたホセは……
そしてパウラは……
最期に笑うのは……?
それとも……救いは誰の手にもないのか
***************************
こちらの作品はカクヨムにも掲載しています。
あなたへの愛を捨てた日
柴田はつみ
恋愛
公爵夫人エステルは、冷徹な夫レオニスを心から愛していた。彼の好みを調べ、帰宅を待ちわび、献身的に尽くす毎日。
しかし、ある夜会の回廊で、エステルは残酷な真実を知る。
レオニスが、未亡人クラリスの手を取り囁いていたのだ。
「君のような(自立した)女性が、私の隣にいるべきだった」
エステルは悟る。自分の愛は彼にとって「重荷」であり、自分という人間は彼にとって「不足」だったのだと。その瞬間、彼女の中で何かが音を立てて砕け散る。
【完結】その約束は果たされる事はなく
かずきりり
恋愛
貴方を愛していました。
森の中で倒れていた青年を献身的に看病をした。
私は貴方を愛してしまいました。
貴方は迎えに来ると言っていたのに…叶わないだろうと思いながらも期待してしまって…
貴方を諦めることは出来そうもありません。
…さようなら…
-------
※ハッピーエンドではありません
※3話完結となります
※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。