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7歳、やり直し
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父の話は長く、たくさんわからない言葉もあったので、コンスタンスは欠伸を堪えながら聞かなくてはならなかった。
いきなり「おまえは本当は7歳じゃなくて19歳だ」と言われても、到底受け入れられるものではない。
目覚める前日、コンスタンスは王太子フィリップ殿下の婚約者になったはずだった。
ところが今、自分は王太子妃ではないという。
父の話は当然そこから始まる。
王太子フィリップとの婚約の話は、王家の方から持ち込まれたものである。
筆頭公爵家であり常に王家を支えるルーデル家にとっては栄誉なことであり、ある程度予想もついていたことであった。
フィリップ殿下の母である王妃とコンスタンスの母である公爵夫人が親友同士というのもこの縁談に大きく作用しただろう。
当然、断るという選択肢はない。
フィリップ殿下とコンスタンスの仲は概ね良好だった。
幼馴染のような2人は元々仲良しだったし、話や好みも合っていたようだ。
フィリップ殿下はコンスタンス同様幼い頃はやんちゃであったが、王太子教育が始まるといずれ国王になる自分をよく理解し、教育も難なくこなしていく。
12、3歳頃にはすでに将来楽しみな、優秀な王太子として知られており、生まれ持ったカリスマ性も遺憾無く発揮されていた。
コンスタンスもまたお妃教育の成果か自由奔放だった少女の姿はすっかり失せ、やがて淑女の鑑とまで賞賛されるに至り、王太子と2人、並び立つ日を国民に嘱望されていた。
2人の仲に所謂燃えるような恋愛感情はなかったが、穏やかに育んでいる気持ちは当然あった。
一番近い親友であり、将来国のトップに立つ同士として。
政略で決められた婚約者ではあるが、たしかに、お互いを想い合う気持ちはあったのである。
ところが…、お互いの教育も終わり、翌年には結婚を…、というところで、状況が一変する。
フィリップ殿下が大国である隣国を表敬訪問した折、その国の王女に一目惚れされ、縁談が持ち込まれたのである。
当然王太子にはすでに婚約者がいると一旦は断ったものの、二度三度と言って来られれば、拒絶し続けるわけにもいかなかった。
隣国の力を恐れる貴族たちにも突つかれ、結局国王は折れ、王太子とルーデル公爵令嬢の婚約を解消せざるを得なかった。
どんなに娘を溺愛する公爵でも、国の命運を左右するような問題なら涙を堪えて受け入れるしかない。
「…ここまでは理解できたか?」
父にたずねられ、コンスタンスは小さく頷いた。
正直、数日前にフィリップ殿下と婚約したという記憶しかないコンスタンスには、あまりよくわからない。
今のフィリップはまだコンスタンスにとって仲の良い幼馴染でしかないのだから。
ただ漠然と、この先フィリップ殿下と一緒にいる未来はないのだな…、と思ったら、胸の奥がキリキリと痛んだ。
わけもわからず哀しくなり、唇を噛んで、俯く。
ルーデル公爵はそんな娘の姿を見て、思わず瞳を揺らした。
当時の…、あの婚約解消の時のフィリップ殿下の気持ちも、コンスタンスの気持ちも、公爵は知らない。
コンスタンスはあの時、
「殿下とはよくよく話して、2人で納得しましたから」
と言っていた。
父親としても、それ以上は聞けなかった。
だから、2人が泣く泣く別れたのか、笑顔で別れたのかはわからない。
ただ、
「父の力が及ばず、申し訳ない」
と娘に謝った。
穏やかではあるが2人が愛を育んでいたのは知っている。
そろそろウェディングドレスの仮縫いだと、いつも冷静な娘が頬を染めていたことも。
いくら隣国の横槍が入ったとは言え、王太子との婚約が解消された令嬢はキズモノ同然だ。
捨てられたわけでもないのにさも王太子に捨てられたような話になっている。
国のために涙を飲んだ公爵家に同情する気持ちはあっても、とかく人は噂好きであるから。
コンスタンスの新たな婚約者探しが始まったが、長年お妃教育を受けて自国を知り尽くしている彼女を他の国に嫁がせるわけにはいかない。
しかし王族や高位貴族はそれなりに早いうちに許嫁がいたりするから、公爵令嬢と釣り合う紳士を探すのは大変だった。
だが王家は…、とくにコンスタンスを気に入っていた王妃は、コンスタンスの新たな婚約者探しに躍起になった。
なんとしても、王太子の成婚より前にコンスタンスを嫁入りさせなければと。
例えそれを、全く彼女が望まなくとも。
そして…。
王家が新たにルーデル公爵令嬢コンスタンスに用意した花婿が、当時伯爵家を継いだばかりのオレリアンその人だった。
嫡子のいなかった伯父の急死に伴って伯爵家を継いだオレリアンは、騎士として華々しい活躍を見せていた人である。
そして見目も良く、何よりまだ婚約者がいなかった。
それが、オレリアンに白羽の矢が立った理由である。
オレリアンは王命により、ヒース侯爵への叙爵、広大な領地、花嫁の持参金…つまり婚約解消による王家からの莫大な慰謝料を条件に、ルーデル公爵令嬢コンスタンスを娶るよう命じられたのである。
いきなり「おまえは本当は7歳じゃなくて19歳だ」と言われても、到底受け入れられるものではない。
目覚める前日、コンスタンスは王太子フィリップ殿下の婚約者になったはずだった。
ところが今、自分は王太子妃ではないという。
父の話は当然そこから始まる。
王太子フィリップとの婚約の話は、王家の方から持ち込まれたものである。
筆頭公爵家であり常に王家を支えるルーデル家にとっては栄誉なことであり、ある程度予想もついていたことであった。
フィリップ殿下の母である王妃とコンスタンスの母である公爵夫人が親友同士というのもこの縁談に大きく作用しただろう。
当然、断るという選択肢はない。
フィリップ殿下とコンスタンスの仲は概ね良好だった。
幼馴染のような2人は元々仲良しだったし、話や好みも合っていたようだ。
フィリップ殿下はコンスタンス同様幼い頃はやんちゃであったが、王太子教育が始まるといずれ国王になる自分をよく理解し、教育も難なくこなしていく。
12、3歳頃にはすでに将来楽しみな、優秀な王太子として知られており、生まれ持ったカリスマ性も遺憾無く発揮されていた。
コンスタンスもまたお妃教育の成果か自由奔放だった少女の姿はすっかり失せ、やがて淑女の鑑とまで賞賛されるに至り、王太子と2人、並び立つ日を国民に嘱望されていた。
2人の仲に所謂燃えるような恋愛感情はなかったが、穏やかに育んでいる気持ちは当然あった。
一番近い親友であり、将来国のトップに立つ同士として。
政略で決められた婚約者ではあるが、たしかに、お互いを想い合う気持ちはあったのである。
ところが…、お互いの教育も終わり、翌年には結婚を…、というところで、状況が一変する。
フィリップ殿下が大国である隣国を表敬訪問した折、その国の王女に一目惚れされ、縁談が持ち込まれたのである。
当然王太子にはすでに婚約者がいると一旦は断ったものの、二度三度と言って来られれば、拒絶し続けるわけにもいかなかった。
隣国の力を恐れる貴族たちにも突つかれ、結局国王は折れ、王太子とルーデル公爵令嬢の婚約を解消せざるを得なかった。
どんなに娘を溺愛する公爵でも、国の命運を左右するような問題なら涙を堪えて受け入れるしかない。
「…ここまでは理解できたか?」
父にたずねられ、コンスタンスは小さく頷いた。
正直、数日前にフィリップ殿下と婚約したという記憶しかないコンスタンスには、あまりよくわからない。
今のフィリップはまだコンスタンスにとって仲の良い幼馴染でしかないのだから。
ただ漠然と、この先フィリップ殿下と一緒にいる未来はないのだな…、と思ったら、胸の奥がキリキリと痛んだ。
わけもわからず哀しくなり、唇を噛んで、俯く。
ルーデル公爵はそんな娘の姿を見て、思わず瞳を揺らした。
当時の…、あの婚約解消の時のフィリップ殿下の気持ちも、コンスタンスの気持ちも、公爵は知らない。
コンスタンスはあの時、
「殿下とはよくよく話して、2人で納得しましたから」
と言っていた。
父親としても、それ以上は聞けなかった。
だから、2人が泣く泣く別れたのか、笑顔で別れたのかはわからない。
ただ、
「父の力が及ばず、申し訳ない」
と娘に謝った。
穏やかではあるが2人が愛を育んでいたのは知っている。
そろそろウェディングドレスの仮縫いだと、いつも冷静な娘が頬を染めていたことも。
いくら隣国の横槍が入ったとは言え、王太子との婚約が解消された令嬢はキズモノ同然だ。
捨てられたわけでもないのにさも王太子に捨てられたような話になっている。
国のために涙を飲んだ公爵家に同情する気持ちはあっても、とかく人は噂好きであるから。
コンスタンスの新たな婚約者探しが始まったが、長年お妃教育を受けて自国を知り尽くしている彼女を他の国に嫁がせるわけにはいかない。
しかし王族や高位貴族はそれなりに早いうちに許嫁がいたりするから、公爵令嬢と釣り合う紳士を探すのは大変だった。
だが王家は…、とくにコンスタンスを気に入っていた王妃は、コンスタンスの新たな婚約者探しに躍起になった。
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例えそれを、全く彼女が望まなくとも。
そして…。
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そして見目も良く、何よりまだ婚約者がいなかった。
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オレリアンは王命により、ヒース侯爵への叙爵、広大な領地、花嫁の持参金…つまり婚約解消による王家からの莫大な慰謝料を条件に、ルーデル公爵令嬢コンスタンスを娶るよう命じられたのである。
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