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町の出口?
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マーズは虫かごも虫とり網も地面に置いて、あぐらをかいている。彼は隣に座っているムーンの頭を撫でた。ムーンはちらっとマーズを見てから、つまらなそうに、今戻って来た道に目をやった。どうやらマーズとムーンは、みんなの中で最初にこの町に飽きてしまった。
ビーナスとジュピターが、何か話しながらマーズたちの方に歩いてきた。
ビーナスとジュピターの後ろを、マーキュリーが大股で歩いてきた。今にもビーナスとジュピターを追い越す勢いで歩いている。二人とマーキュリーの距離がだんだん縮まっていく。
「みんなそろったようだね」
マーキュリーはみんなの顔を見てそう言った。
「そのようね」
ビーナスはマーズとムーンを見て微笑んだ。
「あんまりおもしろくなかった」
マーズが遠慮なくそう言うと「ワン」(まったくその通りだわ)とムーンがマーズに続いた。
「素敵な町だし、スィーツも美味しかったけど……、何かが変なの。それに誰もいないと何だか怖いな」
ジュピターがそう言うと、四人と一匹はお互い顔を見合わせた。
「ところで町の入り口は、確かこの辺だったと思うんだけど。ここから町に入ったんだよね」
マーキュリーが辺りを見回す。
「確かにここだわ。町に入ると、真っすぐな道があってあの山が見えたんですもの。だから出口はここのはずなんだけど」
ビーナスは山を背にして、町に入ってきたところを見てそう言った。ところが出口が見つからない。
「町の入り口は、町の出口になるんじゃないの」
ジュピターが町の入り口があった方を指さした。
「入り口と出口は一緒なんでしょ。入口は消えたの?」
空っぽの虫かごを首から下げているマーズが、虫とり網をぶんぶん振り回しながらそう言った。
「ワンワンワン」(ねぇ、早く出口を探してよ)
ムーンは吠えた。
マーキュリーは、明日からの仕事のことを思った。エンジニアの彼は、一週間後海外に出張しなければならない。しばらく家を空けることになるので、彼は直ぐにも家路につきたかった。最愛の妻と高校一年の息子のことを思った。(家族のためにがんばろう。また忙しくなるぞ)
ビーナスは、夫と二人の子供の夕食の事を考える。(子供たちの大好きなハンバーグにしようかしら。次の日曜日は、小学五年の長男の運動会。今年はリレーの選手に選ばれたと言っていた。ビーナスは去年よりも応援に力が入るような気がした(早く子供たちに会いたい。私がいない間いい子にしてたかしら)
ジュピターは、数学の宿題があることに気付く。そして来週は英語のテストが待っている。英語は大好きな教科なのだが、なかなか点数が上がらない。だから今回はしっかりテスト勉強をしてきた。(宿題忘れたら大変、先生に叱られる。英語の試験は絶対にいい点を取るんだから)
友達の顔が一人一人浮かんでくる。(よーし、友達とたくさん遊ぶぞ)マーズはそう思った。(ただ、この町のことは話さない。虫とりはたいして面白くなかったし、網を振れば勝手にクワガタが網に入っているなんて、誰も信じてくれない。それよりゲームの話をした方が楽しい。そうだ、みんなとゲームをするんだゲームの方が面白い)
ムーンは買主のパパとママとの散歩の時間が気になった。(お散歩お散歩楽しいな。パパとママはリードの取り合いでいつも喧嘩をする。パパとママに愛されているのはうれしいけど、喧嘩はよくない。ドッグランで柴犬のコウ君と遊んでいると、パパとママはあまり機嫌がよくない。それはコウ君が男の子だからだろうか?)
彼ら一人一人の心の中には、家に帰る準備ができていた。
四人と一匹は、町の入り口のあった方を見る。出口は依然として見つからなかったが、赤いボックスが見えた。彼らはボックスに向かった。
マーキュリーがボックスの中から町の地図を何枚か取り出した。それらをビーナスとジュピター、そしてマーズに一枚ずつ渡した。もらえなかったムーンは「ワン」(私にもちょうだいよ)とマーキュリーに向かって吠えたが、マーキュリーの目はすでに手にしている地図に落とされていた。
ビーナスとジュピターが、何か話しながらマーズたちの方に歩いてきた。
ビーナスとジュピターの後ろを、マーキュリーが大股で歩いてきた。今にもビーナスとジュピターを追い越す勢いで歩いている。二人とマーキュリーの距離がだんだん縮まっていく。
「みんなそろったようだね」
マーキュリーはみんなの顔を見てそう言った。
「そのようね」
ビーナスはマーズとムーンを見て微笑んだ。
「あんまりおもしろくなかった」
マーズが遠慮なくそう言うと「ワン」(まったくその通りだわ)とムーンがマーズに続いた。
「素敵な町だし、スィーツも美味しかったけど……、何かが変なの。それに誰もいないと何だか怖いな」
ジュピターがそう言うと、四人と一匹はお互い顔を見合わせた。
「ところで町の入り口は、確かこの辺だったと思うんだけど。ここから町に入ったんだよね」
マーキュリーが辺りを見回す。
「確かにここだわ。町に入ると、真っすぐな道があってあの山が見えたんですもの。だから出口はここのはずなんだけど」
ビーナスは山を背にして、町に入ってきたところを見てそう言った。ところが出口が見つからない。
「町の入り口は、町の出口になるんじゃないの」
ジュピターが町の入り口があった方を指さした。
「入り口と出口は一緒なんでしょ。入口は消えたの?」
空っぽの虫かごを首から下げているマーズが、虫とり網をぶんぶん振り回しながらそう言った。
「ワンワンワン」(ねぇ、早く出口を探してよ)
ムーンは吠えた。
マーキュリーは、明日からの仕事のことを思った。エンジニアの彼は、一週間後海外に出張しなければならない。しばらく家を空けることになるので、彼は直ぐにも家路につきたかった。最愛の妻と高校一年の息子のことを思った。(家族のためにがんばろう。また忙しくなるぞ)
ビーナスは、夫と二人の子供の夕食の事を考える。(子供たちの大好きなハンバーグにしようかしら。次の日曜日は、小学五年の長男の運動会。今年はリレーの選手に選ばれたと言っていた。ビーナスは去年よりも応援に力が入るような気がした(早く子供たちに会いたい。私がいない間いい子にしてたかしら)
ジュピターは、数学の宿題があることに気付く。そして来週は英語のテストが待っている。英語は大好きな教科なのだが、なかなか点数が上がらない。だから今回はしっかりテスト勉強をしてきた。(宿題忘れたら大変、先生に叱られる。英語の試験は絶対にいい点を取るんだから)
友達の顔が一人一人浮かんでくる。(よーし、友達とたくさん遊ぶぞ)マーズはそう思った。(ただ、この町のことは話さない。虫とりはたいして面白くなかったし、網を振れば勝手にクワガタが網に入っているなんて、誰も信じてくれない。それよりゲームの話をした方が楽しい。そうだ、みんなとゲームをするんだゲームの方が面白い)
ムーンは買主のパパとママとの散歩の時間が気になった。(お散歩お散歩楽しいな。パパとママはリードの取り合いでいつも喧嘩をする。パパとママに愛されているのはうれしいけど、喧嘩はよくない。ドッグランで柴犬のコウ君と遊んでいると、パパとママはあまり機嫌がよくない。それはコウ君が男の子だからだろうか?)
彼ら一人一人の心の中には、家に帰る準備ができていた。
四人と一匹は、町の入り口のあった方を見る。出口は依然として見つからなかったが、赤いボックスが見えた。彼らはボックスに向かった。
マーキュリーがボックスの中から町の地図を何枚か取り出した。それらをビーナスとジュピター、そしてマーズに一枚ずつ渡した。もらえなかったムーンは「ワン」(私にもちょうだいよ)とマーキュリーに向かって吠えたが、マーキュリーの目はすでに手にしている地図に落とされていた。
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