召喚されし者からの溺愛

佐々木猫八

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召喚の儀、始まる

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僕の人生ここまでかなと思いました、ローウィズです。

召喚陣の前に立った僕には多くの囃し立てる声が投げかけられた。
応援の言葉など1つもないのはもう気にならない。
ただこの最後の魔法に賭けるしかないと墨は思っていた。
他の魔法は適正がなかったのだ、この召喚魔法だけはどうにか発動してほしい。
どんな魔物でも良い、最弱のスライムだってなんだっていい、兎に角発動してくれさえすれば適正がありとみなされる。
それからの努力などなんだってできる。

どうか発動してくれ!

ローウィズはありったけの魔力を召喚陣に流し込めた。

「ちょっと!ローウィズ君!それは、無理がっ!!」

召喚陣の線が眩い光を放ったかと思うと、直ぐに黒色へと戻る。
どことなく描かれていた先程の陣の線の黒よりも黒い気がする。

みずみずしくて、禍々しくて、艷やかな黒。

「あはは、流石は無能の魔法使いローウィズだ!召喚獣さえも出てこないじゃないか!」
「これで退学決定だよな!なにせ全教科不発動なんだから!」
「魔力あったなんて嘘なんじゃねーの?魔法球が壊れてたんだよ」

楽しそうに言い放つ彼らを尻目に、召喚魔法担当の教師は警戒を解かなかった。
そして。ウェンデルもなぜか召喚獣を出して召喚陣を警戒し始めていた。

すると、召喚陣が眩い白い光を放ち始める。
1分と満たない光の放出だったけれど、とても眩く強烈だった。
にも関わらず、召喚陣からは召喚獣らしいものは現れない。

「・・・お、脅かしやがって、何も出てこねーじゃん」
「光っただけマシなんじゃね?あ、蟻とか召喚¥してたりして」
「あそこの黒い点がそうじゃね?良かったなローウィズ召喚出来てるぞー」

と言っていた矢先、今度は魔法陣からあるものが吹き出した。

「ローウィズ君、下がって!危険だ!」

担任以外で僕の名前を初めて呼んだのは召喚魔法の先生になったな。
と、おかしな様子の召喚陣に不発なのか発動したのかはっきりしてくれと思っていたローウィズは、あわてて指示に従い召喚陣から離れる。

離れようとした。
が、出来なかった。

召喚陣から出てきた蔓に足を絡め取られ、ローウィズは陣の中心に引っ張り込まれてしまう。

「ローウィズ君!」

教師は蔓を切断しようと魔法を発動させようとした。
しかし、それを阻むように今度は樹木が召喚陣から伸びてきて、空高く覆った。

少し前まで召喚陣があった場所には、青く茂る大樹がそびえ立ち、ローウィズはその木の中へと閉じ込められてしまったのだった。
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