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冬樹

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星の中央を回っている太陽の光は端っこにあるこの国にはわずかにしか届かない。
振り向いた時に見えるのは闇だ。
「チッ、お前ら全員殺せ!!」
頭領の声に盗賊たちは大きな声で答える。
「殺せ!殺せ!物を奪わせるな!!」
金属のぶつかり合う音、肉が切断される音。そして苦痛の声。それらがすべて耳に入ってくる。
ラルフは岩の影で息を潜めていた。
所属する盗賊団が謎の集団に奇襲されたのはつい10分ほど前のことだ。今日、商人を襲って手に入れた果実。暗いところでしか育たないその植物は中央の国では高値で取引される。
取り戻しに来たのか、奪おうと思ったのか。どちらにしても盗賊団にとって敵なのは間違いない。
すぐ近くでまた盗賊が殺された。そのことを認知する。
「抵抗は諦めたらどうかな?こっちは命まで取る気はないからね」
奇襲してきた集団の一人が叫ぶ。
「ふざけんなあ!!」
青年はナイフを持ち、突っ込んできた盗賊をかわす。盗賊は勢いを殺せずに体勢が崩れる。
「考えが甘かったね」
その隙を逃すことなく、青年は右手で銃を抜くと引き金を引く。銃声とともに盗賊の体は崩れ落ちた。
「あと少しで勝てる!押しきれ!」
青年の掛け声とともに一気に活気づく襲撃者たち。
ラルフは少しづつ青年の近くへと移動した。戦っている後ろから一撃で仕留めること。それがこの戦いでの役割だ。
「君がこの盗賊たちのリーダーだね」
「はっ、調子に乗るなよ」
頭領の振り下ろした剣を避け、引き金を引く。二人が戦っている中、ラルフは様子を見ながら近づいていく。
息を殺し、その瞬間を待つ。
青年が頭領の剣を避けきれずに銃で受け止める。その瞬間、ラルフは一気に走り出た。青年の左側。
手に持ったナイフをつきさそうとした。
「ふたりがかりなんて卑怯だね」
青年は一瞬力を抜く。\拮抗は崩れ、振り下ろされた剣を前に踏み出して青年は攻撃をかわす。
「失敗しやがって」
殴られる。そう思いラルフは構える。\それと同時に拳は振り下ろされた。
「お前ら、撤収しろ!!」
戦力が減って、奇襲も失敗した。これ以上勝ち目はないと判断したのだろう。盗賊たちは悔しそうにしながらも命令に従って引く。青年も逃げる相手を追うつもりはないらしく、見ているだけだ。
ラルフは殴られたことでふらつきながらも立ち上がる。
「大丈夫かい?」
「ああ」
心配するような声をかけてきた青年に戸惑いながらも返事を返す。
「行くぞ」
マフラーを引っ張られた。首が絞まる苦しい。すぐに体制を整えてついていく。
背中に視線を感じたがラルフが振り返ることはなかった。

「さっきの盗賊……」
「アーノルドさん!」
青年、アーノルドは部下の声に振り向く。
「商品は?」
「大丈夫です!手に入れました」
「そうか。それはよかった。入手できなかったら船長になんて言われるか」
「そろそろ金が危なかったですしね」
部下の言葉にアーノルドはうなずく。
盗賊団を襲った彼らは海賊だった。中央の大陸とこの端の大陸を行き来し、荷物を奪ってきていた。
「全く、船を動かすのにも金がいるなんて儲からないね」
そうぼやく。
アーノルドは先ほどの盗賊が気になっていた。まだ若い盗賊。
ほかの盗賊が戦いに目をぎらつかせていたのに対し、彼の目はやけに冷静だった。盗賊らしくない。
「また縁があれば会えるか」
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