便利スキル持ちなんちゃってハンクラーが行く! 生きていける範疇でいいんです異世界転生

翁小太

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王都

30 忘れてました。

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「つまり、ガロン工房と独占契約をすると同じ大きさの家が大量生産できます」
 家の大量生産という途方もない単語にハインリヒ商会側はデニスさん含め呆けたように笑いながら、目だけぎらつかせた。
「ええ、法律上地面に直接つながる基礎工事をするまでは、建造物は家としては見なされないので商品として商人が販売することも出来ます。しかし、今回こちらへ来てもらったダニエル大工見習はちょっとした事情で商人として物を売買できません」
「細かいことは聞いておきたい。話せ」
 ダニエル少年に視線をやると、彼はコクコクと首を上下に動かした。むち打ちになるなよ少年。
「ダニエル大工見習のご実家は商家です」
「ああ、ガロン工房の商人の子供ってお前か」
 やはり、ある程度別の商人についても情報を収集していたらしいハインリヒさんにはそれで通じたようで、合点のいった顔で相槌をうった。
「契約でご実家の名前は名乗れませんので、事情を把握しておいていただけたなら話は簡単です。そういった事情がありますので少年は引き抜けませんのでご遠慮ください。ちなみにと言っては何ですがこちらで確認できるだけの『収納(小)』の持ち主はこちらとすでに契約しています。そちらは個々人の判断で出向できますのでご自身で口説き落としてください」
「いや、待て。災害支援をしている貴族が絡んでくるんだから取り合いになるだろうになんでガロン工房に所属させるんだ。ダニエルはまだし、いくらなんでもそんなにいたら危ないだろう」
「……えーっと、ハインリヒさん今興奮のあまり忘れてるみたいですけど『収納(小)』を持っててちゃんとしたお仕事につけてないの、ほとんど商家出身の子たちなんですけど、それ皆ハインリヒ商会に入れたら流石にまずくないですか?」
 お仕事に差し障りません? と聞くとはっとした顔をする。全く関係ないはずの大工のガロンの親方だって大揉めしているのだ。これが直接かかわりない商会に自分の子供が雇われているなんて知られた日には商業ギルドで針の筵になることは免れまい。しかし、これがガロン工房に所属していたら仕事のない工房を取り立てた美談になるし、まだ風当たりが弱くなる。それに、関係がダニエル少年と実家ほど悪くなければこれは逆に商機になるわけだから喜ぶだろう。
「それに、これ、たぶん災害支援より先に市井でやった方がいいです。市井でやって根付かせて取り上げると経済や市井からの反発が強くないと簡単に取り上げられちゃうと思うんで」
「とりあげ……戦争か!」
「ハインリヒさん! 濁した意味!」
「うちにスパイを入れるようなヘマはしてない」
「ダニエル少年が真っ青なんでお察しください」
「説明しないとまずいだろう?」
「すでに説明してるけどまだ怖いんだと思います! 配慮してください!」
 そう、災害支援で被災した人々に家をなるべく早く与えることができるのと同様に、戦地に拠点を一晩で建てることが出来るようになる。
 だから早々に市井に食い込ませて生活に無くてはならないものにして、取り上げると経済に混乱をきたすようにしてお互いに困るものにして起きたい。そのためには先にして起きたい。
「最初は『収納(小)』じゃない何かだと思ってもらえるように市井に一晩で店舗を建て替えたり、リフォーム出来たらいいんじゃないかと思います」
 いわゆるプレハブ化だ。もともとプレハブは“あらかじめ作っておいた”という意味だからけしてプレハブ小屋だけがプレハブじゃない。日本では一日たりとも土地を空けて置けないほど高価な一等地に初めてハンバーガーショップが立った時に初めて使われた技法じゃなかったかな? バーカウンターをあらかじめ作って置いたり、床を組んでおいたものを『収納(小)』に入れておけばいい。しかもスキルの中にしまってるからリフォーム際にどこから入れるかという問題も発生しないので、そのことを考える労力が一切いらないだけでなく、場合によっては少しづつ形を変えたものを持って合わせてみるということも出来る。
「徐々にそうやって慣れさせて行った後、『収納(小)』で実際に家を置いてみて、自分の土地にどんな家が合うか実際に目で確認できるようにもなりますよ」
 家を実際に置いてみてカタログ代わりにするとか、日本ではできないことまで出来るなんてこれぞファンタジーの醍醐味よな。と、一人で頷いてると四つほど視線を感じる。あれ? デニスさんとハインリヒさんはわかるけど何でダニエル少年とガロンの親方まで?
「ゆーらすくん……、おれ、そのはなしきいてないです……」
 そう言われると貴族関係の話しかしてなかったような……?
 おそるおそる顔を上げると血管を浮き上がらせた親方と目が合う。
「そういう話は先に俺にしておけ!!」
 そう怒鳴られた瞬間に、特大の拳骨が降ってきた。
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