便利スキル持ちなんちゃってハンクラーが行く！ 生きていける範疇でいいんです異世界転生

王都

３１ 妖精の国作成の中間報告？

　そこからはハインリヒさんとガロンの親方に囲まれて話残しがないかを代わる代わる取り調べられ、出せる情報を全部すっからかんになるまで話さされた。
　そしていつの間にかとんとん拍子で正式に俺が仲介人ということで書類にもキッチリ、サインさせられ仲介料までもらってしまった。
　嫌だったのに、貴族が絡む案件に名前とか残したくなかったのに、善意の推し売りがひどい。自分の仕事には責任取るものだとかなんとか言われてサインを書かざるえなかったけど絶対違う。俺の手柄は俺の手柄にするために書かされたヤツだ。これ一枚あるだけで大人になった後の商売のやりやすさが違うやつだから、口は悪かったけど完全に善意の奴だ。
　もう、二人して俺の仲介挨拶完全に無視しやがって。正直ランクで言うと一番立場が弱いはずの俺が仲介者かつ立案者だったから俺にとっとと手柄上げてほしいのもわかるけど！！　完全に飴ねじ込まれた時と同じ構図だったわ！！
　俺は妖精の国ぶったてるから必要ないのに！　ぶっちゃけ防水シートの売り上げだけで生きていけるのに！！
　大人にやりこまれてしまった羞恥で夜には一人で顔を覆ってゴロンゴロンしている。
　今はその羞恥を拠点で木材にぶつけているところだ。
　ハインリヒ商会にもリストランテ・チェーリオへも、しばらく納品の必要はないし、ハインリヒ商会へは布として防水シートを納品するからハトメやゴムを取り除くだけでいいし、エネルギーバーは庶民にとっては高級品だから必要以上に作らなくてもいいから一日かけて作るだけで一回の納品分くらいは作れる。
　つまり今凄く暇なのだ。
　もちろん、妖精の国の取引相手探しも続行中だけどこればっかりは相性だし、そういう意味では忙しいが、そうそう簡単に見つかるもんでもない。ハインリヒさんが相手になってくれるなら楽だしうれしいけどそうもいかない。ここ何回かやりとりしただけであの人が妖精なんて存在を信じない人だってよくわかる。独自の商法でのし上がってきた商人で門戸を広く開いている人だから、面白がってくれればワンチャンあったけど面白がるは面白がるけど猛禽類の目をするタイプの面白がり方をする人だ。隅から隅まで調べ上げ完全に自分の手駒にしないと信用まではしないし、おそらくガロン工房の話し合いの時でも対等な商談相手である姿勢を崩さなかったことで俺は『目をかけられているけど懐には入れられない商談相手』ぐらいの立ち位置になったはずだ。これ以上踏み込めば俺のスキルにまで言及されるだろうから、今の位置を動かしたくない。
　正直、俺のスキルを安心して開示できる相手だとは言えない。
　できるなら、俺の妖精の国という設定を仮にそうと見破っても追及してこず、調べず、面白がってそのまま取引してくれるような、それでいて防波堤になるような権力があり、かつ真面な経営をしているような商会がいい。
　え？　我儘だって？　知ってる。なんならだからこそ相手が見つからなくてすごく暇。
　あんまり暇すぎて『お買い物』の本屋でラノベでも読み漁ってやろうかと思ったけどそれに手を出したが最後、自堕落な生活に一直線しそうであえて手は出していない。
　そうして今やっているのはこれだ。
　タイプライター作成だ。
　もうみんな忘れているかもしれないがタイプライター自作しよってなってたのは覚えているだろうか。俺はおぼている。
　折角電化製品屋さんで『お買い物』できるんだからパソコンでやってやろうと思わなくも無かったんだけども、自分が電化製品持ち込める系異世界転生お馴染みの「外字エディタ」なるものを使えないことを思い出した。
　こっちの言語に翻訳できないパソコンなんて自分のデータ処理にしか使えなくない？
　俺に備わってる文字を誤魔化す能力なんて中学の時に美術でハマって我流で遊んでたレタリングぐらいだ。
　となったら自分で自作するしかない。
　え？　外字エディタについて調べればいいじゃんって？　オフィス系ソフトについてならまだし、俺にそんなことができると思うてか。昔製本に手を出してた時期に四苦八苦しながらフリーフォントを落として使えるようにしたぐらいがギリギリパソコンの設定をいじれる限界のような自分に「外字エディタ」について本越しで説明されてわかるとでも？？
　それならタイプライター自作した方がまだなんぼかマシなもん作れる気がする。
　ちなみに、てこの原理で作れるキーボード部分は大体理解できたので作ってるところだ。ネックは一文字ずつ横にずらす部分をどうするかなんだけど、これから実験したり本で詳しく書いているものがないか探してみたりするかしか無いだろう。100均で買った消しハン用の消しゴムに自分でレタリングしたこっちの文字も彫り込んでいかねば……。
　こんな調子じゃ取引相手を見つけるまでに、ちゃんと出来るのかすこぶる不安だ。