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初めて馬に触る
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「ちょうどご飯ができたところだよ。お座りして待っててね」
「へ・・・」
机にマリアンヌの椅子はやはりなく、部屋の隅に赤く丸いクッションが敷いてある。
(ま、まさか、昨日のあれを今日もすんの!?)
「私の椅子は・・・?」
「え?そんなものないよ。君は僕の手から以外は食事はしちゃだめだからね。冷蔵庫も魔法の鍵が掛かってるから、勝手に開けようとしたら駄目だよ」
「そ、そんな・・・!!」
マリアンヌは目の前のふざけたガキを殴ってやろうかと拳に力を入れる。しかしマリアンヌの計画の為に、ぐっと堪えた。
(我慢我慢我慢我慢我慢)
マリアンヌはクッションに座る。ユーグはまだ食事が終わっておらず、彼は優雅に食事をしている。マリアンヌはそれを待てをされた犬のようにじっと待っていた。食事が終わったのか、ユーグは手に食事の残りを持ってマリアンヌに近づいた。そしてユーグはソーセージをマリアンヌの口の前にもっていくと、マリアンヌは口を開けた。
「ちゃんと君の毎日の習慣を覚えるんだよ。君は僕の手からしか快感を得てはいけなっていうね。ほら、指もちゃんとしゃぶって。汚れちゃった」
(・・・我慢、我慢)
マリアンヌは少しくらい反抗したく、キッと彼を睨むが、彼はニコニコと嬉しそうで、怒る気も失せた。マリアンヌは全てを平らげ、ユーグの手を言われたとおりねぶった。
「じゃあ、今日はちゃーんと仕事してね」
「・・・分かった」
マリアンヌは馬小屋に行き、馬の寝床の藁を変える。そしてショベルで馬の糞を片づけた。
「うぅ・・・くせぇ・・・まじで馬なんか嫌いだ」
「ヒヒィン」
「なんだ、やんのか、コラ!?」
馬のホワイトがマリアンヌに興味を示しだした。しかしマリアンヌはまだ恐怖感が拭えず無駄にファイティングポーズをして威嚇する。
「触ってみなよ。ホワイトなら人懐っこいから大丈夫」
ユーグが馬小屋を覗きにくる。地下から音がしていたが、きっと仕事をしていたのだろう。
「い、いやだ。触るなんて・・・襲ってきたらどうするんだ、馬だぞ!」
「ほら、彼女の目を見て、怯えずにそっと近づくんだ」
「っ・・・」
マリアンヌはホワイトの目を見てみる。良く見ると綺麗な瞳である。ホワイトはマリアンヌに首を伸ばした。
「ほら、触っていいって言ってる」
「・・・おめえ、暴れたらただじゃおかねえからな」
マリアンヌは強がりを言ってそっと彼女の顔を触った。ツルリとした毛並みが、とても気持ちいい。
「お、おい、触ったぞ、凄いだろ!!」
「ははは、すごいすごい、良くやったね」
マリアンヌはホワイトに更に近づき、何度も撫でる。ホワイトも安心したのかヒヒンと喜びの声をあげる。すると隣にいたブラウンも『僕にも触って』と言っているように近づいてきた。
「お、おい、ははは、くすぐったい!!」
ブラウンがマリアンヌをペロリと舐めた。口は臭いのだが、マリアンヌは夢中で全く気づかない。マリアンヌは馬たちと打ち解けたようだ。マリアンヌは得意げに振り返ると、ユーグはかつて見たことのないような優しい表情でマリアンヌを見つめていた。
──ドキン──
(っ・・・いつから・・・見てたんだ)
ユーグはマリアンヌを眺めるように、馬小屋の手すりに手をついてリラックスしていた。ユーグの分厚い眼鏡の奥から優しげな色が見えた気がした。鼻筋は整っており、唇は薄く、眼鏡を外せば観れる顔なんじゃないかと少し疑う。マリアンヌの胸が何故かドキドキと高鳴った。
「じゃ、あそこにある肥料全部こっちに運んどいてね」
「は・・・?」
丘の下に移転魔法が掛かっているのか、目を凝らすと荷物がまとめて置いてあるようだ。そこに何キロもの肥料が置いてある。それをここまで何往復もしれ運ばなければならないらしい。
(・・・やっぱり鬼畜眼鏡野郎だ───!!!!)
マリアンヌの心の叫びは馬に届いたのか、一緒にヒヒィィィィン!!と叫んでいた。
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