イケボな宰相と逃げる女騎士

ほのじー

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休暇②

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「さあ、一日に二回、一時間程度は歩いて良いけど、運動はしばらく禁止だよ、お嬢ちゃん」


事情聴取も終え、二日後ジュリアは退院することになった。痛み止と塗り薬を渡される。ランプ医師は一人の女性を部屋に呼んだ。


「ジュリア様、お迎えにあがりました」
「え、どういうことですか」


女性の名はエデといって看護師の資格を持ちジュリアのサポートを任されているらしい。ニコニコと笑顔のその女性は有無を言わさずジュリアを馬車に乗せ、王城を出発した。


「ジュリア様、着きましたよ」
「ん・・・は、はい」


痛み止を飲んだ副作用で、ジュリアは馬車のカタカタと揺れる音を聞きながら眠ってしまっていたようだ。


「ここは、第一地区?」


第一地区は王都の高級住宅地エリアである。そこから王城まで三十分程の距離があり南東向きに王城が見えていた。そんなジュリアは品のある大きな屋敷の前にいた。女性とジュリアを門番が認めるとその門を開け、中へと導いた。


「お待ちしておりました、ジュリア様。ベッドの準備ができております。こちらへどうぞ」


そこには執事であろう老人が一人と優しそうな五十歳くらいの女性、そして十代後半の女性が、ジュリアを歓迎してくれた。


「あの・・・執事さん」
「セバスチャンとお呼びください。ジュリア様。ご用件は何でしょうか」
「ここは・・・どなたの家なのでしょうか」


執事であるセバスチャンと家政婦らしき女性が驚いた表情をした。


「な、なんと坊っちゃんは何も伝えてないのでしょうか」
「セバスチャン、あの方はそういう人よ。大切なことちゃーんと言わないんですから!!」


セバスチャンはふらふらと信じられない、という風に項垂れた。


「はじめまして、ジュリア様。私はこの家の家政婦をしております、マーサです、そしてこちらは娘のリリアです」
「は、はじめまして」


マーサはこほんと咳をして、何も分かっていないジュリアに説明をしてくれた。


「私が説明させていただきましと、ここはサイラス坊っちゃんのタウンハウスです。基本坊っちゃんはここで暮らしています。ほとんど寝に帰ってくるだけなのですがね」
「サイラス・・・様の?」


(ってことは、サイラス様が私をここに?)


「あの、私はここにいても良いのでしょうか、ご迷惑かかりませんか」
「!!何を仰るのです!!何ならこのままずっといらっしゃっても・・・」


マーサはぶんぶんと首を振った。マーサはジュリアを広い部屋に通した。もっと狭い部屋で良いと言ったのだが、マーサは「滅相もございません!!」と言って聞き入ってくれなかった。

その部屋には高そうなベッドやソファーが置いてあり、ジュリアは上質なシーツに包まれる。こんな豪華な部屋では眠れないと思っていたのだが案外ベッドはふかふかで心地よく、すぐ眠りについてしまったのだった。


+++


(やめて・・・痛い、痛いの)


ジュリアは体の痛みとトラウマが原因で、夢と現実の狭間を行ったり来たりしていた。


『大丈夫、大丈夫ですよ』


(ああ、温かい・・・)


大きな手がジュリアの頭を撫でる。ジュリアは深い眠りへと誘われていった。

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