29 / 56
第四章 新生活は足りないものが多すぎる
プロローグ
しおりを挟む
「部屋を交換して欲しい」
休日の朝。
前職の激務の影響からか平日はとにかく必要最小限のことだけを行い、基本的にはゴロゴロしている事が多く、やるべき事は休日に回して一気に片付けるのが最近の俺の行動パターンだった。
つまり、今日は普段やりたくても出来ない事をやる為の特別な日であり、どうしようもない事に関わっている暇などなかった。
「うん。結構旨いな。なんかこう……和食とかパンとかじゃないものが食卓に並んでるとあまり朝食って感じがしなくて最初は戸惑ったけど、悪くないもんだ」
「ありがと。あ、おかわりいる? 私もおかわりするからするなら持ってくるけど……」
「いらん。流石に旨くても朝からそんなに入らねえよ。俺はお前じゃないんだ」
「ええい無視するな! 妾の話を聞け!」
で、あるというのに、目の前に座っていた金髪は華麗にスルーした俺の態度がお気に召さなかったようで、テーブルを両手でバンバンと叩いた。
「妾と、お主達の部屋を交換して欲しい。と、言っておるのじゃ」
「だから何でだよ。あ、おいリリ。お前また下着姿じゃないか。下を穿け下を。服はちゃんと買ってやってるだろう?」
朝飯を腹に入れた事でようやくボーッとした頭がすっきりしたのか、立ち上がったリリがトランクスとTシャツ姿だった事にようやく気が付いて苦言を呈する。
そんな俺の言葉に、リリは「えー?」と、不満の声を上げた。
「旦那様と姫様しかいないのに? 別に見られても何とも思わないよ?」
「俺が思うんだよ。目のやり場に困る」
唯一の救いなのは女性物の下着ではなくてトランクスという点だが、女性物の下着が家にないのだから仕方がない。
毎度仕事が終わる度に「買いに行かなくちゃなぁ……」とは思っているのだが、中々買いに行く勇気がでないのである。
流石に独身の中年男が一人で女性用の下着をレジに持っていくのはレベルが高すぎた。
ちなみに、リリの年齢だが19歳との事だった。こちらでは成人前のギリギリ少女という年齢だが、あちらでは既に成人している年齢らしい。だが、それならば相応の恥じらいは身につけておいて欲しかった所だが。
「だから! 無視するでないわ!」
いつの間にか思考がそれてしまった俺に対して、再び金髪が癇癪を起こす。
なんかこいついつも怒ってるような気がするな。
もっとカルシウムの多い料理を増やすようにリリに言っておくか。
「何だよ。ああ、部屋を交換して欲しいんだっけ? ダメに決まってんだろ」
「何故じゃ!?」
「お前は一人部屋で俺達は二人部屋だからだ」
俺は湯呑に手を伸ばしてお茶をすすると簡潔に告げる。
そもそも、リリとの二人部屋を嫌がったこいつにどうして譲歩しなければいけないのか。
「別にお主らを離れ離れにするつもりは無いというのに。単純に部屋を入れ替えてくれたら良いのじゃ」
「何で二人で部屋使ってる俺達が狭い方の部屋に行かなきゃならないんだよ。頭腐ってんじゃねぇのか?」
「く、腐ってなどおらぬわ!」
思い当たる節でもあるのか自らの頭を両手で押さえた金髪に呆れた視線を向ける俺の隣に、戻ってきたリリが腰を下ろす。
「何? 何の話?」
「ああ。なんかこの馬鹿が部屋交換してくれって」
テーブルに茶碗を置いて金髪を見つめた後、俺に視線を戻すとリリはコテンと首を傾げた。
「何で?」
「知るか。どうせいつもの我が儘だよ」
「そっか。じゃー、しょうがないね」
「ああ。しょうがないんだ」
「何故今の説明で納得する!? 理不尽じゃ!」
土曜の朝っぱらからクソガキの我が儘を聞かされるこっちの方が余程理不尽だよ。
取り敢えず、不本意ながら三人で始まった生活の最初の休日はこうして始まった。
休日の朝。
前職の激務の影響からか平日はとにかく必要最小限のことだけを行い、基本的にはゴロゴロしている事が多く、やるべき事は休日に回して一気に片付けるのが最近の俺の行動パターンだった。
つまり、今日は普段やりたくても出来ない事をやる為の特別な日であり、どうしようもない事に関わっている暇などなかった。
「うん。結構旨いな。なんかこう……和食とかパンとかじゃないものが食卓に並んでるとあまり朝食って感じがしなくて最初は戸惑ったけど、悪くないもんだ」
「ありがと。あ、おかわりいる? 私もおかわりするからするなら持ってくるけど……」
「いらん。流石に旨くても朝からそんなに入らねえよ。俺はお前じゃないんだ」
「ええい無視するな! 妾の話を聞け!」
で、あるというのに、目の前に座っていた金髪は華麗にスルーした俺の態度がお気に召さなかったようで、テーブルを両手でバンバンと叩いた。
「妾と、お主達の部屋を交換して欲しい。と、言っておるのじゃ」
「だから何でだよ。あ、おいリリ。お前また下着姿じゃないか。下を穿け下を。服はちゃんと買ってやってるだろう?」
朝飯を腹に入れた事でようやくボーッとした頭がすっきりしたのか、立ち上がったリリがトランクスとTシャツ姿だった事にようやく気が付いて苦言を呈する。
そんな俺の言葉に、リリは「えー?」と、不満の声を上げた。
「旦那様と姫様しかいないのに? 別に見られても何とも思わないよ?」
「俺が思うんだよ。目のやり場に困る」
唯一の救いなのは女性物の下着ではなくてトランクスという点だが、女性物の下着が家にないのだから仕方がない。
毎度仕事が終わる度に「買いに行かなくちゃなぁ……」とは思っているのだが、中々買いに行く勇気がでないのである。
流石に独身の中年男が一人で女性用の下着をレジに持っていくのはレベルが高すぎた。
ちなみに、リリの年齢だが19歳との事だった。こちらでは成人前のギリギリ少女という年齢だが、あちらでは既に成人している年齢らしい。だが、それならば相応の恥じらいは身につけておいて欲しかった所だが。
「だから! 無視するでないわ!」
いつの間にか思考がそれてしまった俺に対して、再び金髪が癇癪を起こす。
なんかこいついつも怒ってるような気がするな。
もっとカルシウムの多い料理を増やすようにリリに言っておくか。
「何だよ。ああ、部屋を交換して欲しいんだっけ? ダメに決まってんだろ」
「何故じゃ!?」
「お前は一人部屋で俺達は二人部屋だからだ」
俺は湯呑に手を伸ばしてお茶をすすると簡潔に告げる。
そもそも、リリとの二人部屋を嫌がったこいつにどうして譲歩しなければいけないのか。
「別にお主らを離れ離れにするつもりは無いというのに。単純に部屋を入れ替えてくれたら良いのじゃ」
「何で二人で部屋使ってる俺達が狭い方の部屋に行かなきゃならないんだよ。頭腐ってんじゃねぇのか?」
「く、腐ってなどおらぬわ!」
思い当たる節でもあるのか自らの頭を両手で押さえた金髪に呆れた視線を向ける俺の隣に、戻ってきたリリが腰を下ろす。
「何? 何の話?」
「ああ。なんかこの馬鹿が部屋交換してくれって」
テーブルに茶碗を置いて金髪を見つめた後、俺に視線を戻すとリリはコテンと首を傾げた。
「何で?」
「知るか。どうせいつもの我が儘だよ」
「そっか。じゃー、しょうがないね」
「ああ。しょうがないんだ」
「何故今の説明で納得する!? 理不尽じゃ!」
土曜の朝っぱらからクソガキの我が儘を聞かされるこっちの方が余程理不尽だよ。
取り敢えず、不本意ながら三人で始まった生活の最初の休日はこうして始まった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
「モブ子で結構。クラスでパシリにしていたあなたより、フォロワーが100万人多いので、趣味の合わない方とはお話ししない主義なので」
まさき
ライト文芸
静はイヤホンをつけ、眼鏡を外した。
「ごめんなさい——趣味の合わない方とはお話ししない主義なの」
——これは、モブ子と呼ばれた少女が、誰にも媚びなかった夏の話。
学校では地味で目立たない女子高生・葛城静。分厚い眼鏡、冴えない服装、クラスのリア充グループには「モブ子」と呼ばれ、パシリにされる日々。「ブスに夏休みは似合わないよね」——そんな言葉を笑顔で浴びせてくる同級生たちは、知らない。
彼女が、フォロワー100万人を誇る超人気ストリーマー「シズネ」だということを。
夏休み。秘密の別荘プールから配信した100万人記念ライブが大バズり。特定班の動きは早く、やがて「シズネ=あのモブ子」という事実がXのトレンドを席巻した。
翌朝の教室。昨日まで見下していた同級生たちが、一斉に満面の笑みを向けてくる——。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる