運命の番は僕に振り向かない

ゆうに

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8 発情期

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インターホンごしに話す時間も惜しく、千遥はすぐに玄関にむかう。
鍵をあけ、藤郷の姿が視界に入る。

(来てくれた…)

彼の香りをいつもより濃く感じ、それだけで千遥は足から力が抜けその場にへたり込む。

千遥の様子を見ていた藤郷が無言で千遥を抱き上げると、そのままベッドまで千遥を運びおろした。

そこで初めて自分がTシャツ一枚で下になにも履いてないことに気がつく。

「あっ、こんな格好で…すみません」
「構わない。触るぞ」
「あっ…」

彼の長い指が無遠慮に千遥のナカに侵入する。それだけで堪らなく気持ちいい。

(もっと…もっと…)

「充分濡れてるな。挿れるぞ」

藤郷は躊躇いもなく自身のモノをずぶりと千遥のナカに押し込む。
その瞬間、千遥は頭が真っ白になりそうなほど強い快楽に襲われる。

揺さぶられ、浅く深くナカを擦られ――
ただただ気持ちが良すぎてもう何が何だかわからない。

ふと眉間に皺を寄せ苦しそうな藤郷と目が合った。キスがしたくて、藤郷の首に手を絡めようとしたが彼は煩わしそうに千遥の両手をひとまとめにしてシーツに縫い止めてしまった。
  


――
――――



翌日、千遥が目を覚ますとすでに藤郷の姿はなかった。

まだ発情期二日目なのにいつもと比べて、身体が怠くない。運命の番と寝たからだろうか。
千遥は昨夜を思い出し頬を赤らめる。

(すごく気持ちよかった…)

挿入され、揺さぶられただけで全身に快感が走り、どうにかなってしまいそうだった。

(することしたんだし…恋人ってことでいいんだよね?)

忙しい藤郷が千遥のためにわざわざアパートまで来てくれた。心底嫌ってる人間のためにそんなことするはずがない。
やっぱり二人は運命の番だから、惹かれ合う運命なのだ。表面上は冷たい彼も、千遥のこと少なからず想ってくれてたんだ。

これからきっと二人の距離も縮まって、いつか番に……
(わー)

そんなことを想像してまた恥ずかしくなり、千遥はひとり枕に顔を埋めた。

焦がれてきた運命の番と付き合えることが嬉しくて、早く藤郷に会いたくて、千遥は休暇が終わるのが待ち遠しくなった。



◇◇



休暇明け――


「藤郷さん」
「…何だ?」

呼び止められた藤郷は眉を顰め、千遥を前に不機嫌さを隠そうともしない。

(あ、あれっ?)

あまり好かれてないことは分かっていたが、自分たちは運命の番で身体も繋げた。だから千遥に対する態度も多少軟化しているはずだと期待していた。が、藤郷の態度はあいかわらず素っ気ない。

「あっ、あのこの前は家まで来てくれてありがとうございました。いろいろ助かりました。
それで……いつでもいいので週末とか、どこかに出かけたりしませんか?僕、予定合わせるので…」

「……なんで俺がお前と出かけなきゃいけないんだ?」

「えっと…でも僕たち恋人になったんですよね?」

藤郷が大きく息を吐く。
「一度寝たくらいで恋人になったつもりなのか」

「えっ…?」

「俺はお前と恋人になるつもりは一切ない」

「……じゃ、じゃあどうして家に来たんですか?どうして…」
(僕を抱いたんですか?)

「ただ興味が湧いただけだ。俺のお陰で君も発情期
の苦しさが減っただろ。まあ慈善活動のようなものだと思ってくれ」

「じ、慈善活動って…」

「この際だからはっきりしておこう。俺が君の恋人になることはこの先も絶対にありえない。可能性があるとすれば体の関係だけだな…」

(体の関係って…セフレってこと?)

「でも僕たち運命の番ですし、あんなに…」

抱き合ったとき肌がぴったりと合う感じがしたし、気持ちよかったのは千遥だけじゃないはずだ。

「勘違いするのはやめてくれ、迷惑だ。俺は君にはなんの魅力も感じない。例え運命の相手だとしても君のようなオメガは願い下げだ」

藤郷の切れ長の瞳がどこまでも冷たく、千遥を見下ろしている。

千遥は普通のオメガのように華奢でも可愛くもない。
言われ慣れているはずなのに胸がきゅーっと痛んだ。
この世界にたった一人の、唯一無二の存在であるはずの運命の番にまでそう言われると、流石に堪えた。

胸の奥がズキズキと苦しいくらいに痛くて、藤郷が立ち去った後もしばらくその場から動けなかった。

(ひとりで浮かれて勘違いして馬鹿みたいだ…)






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