悪役令嬢引き受けます

NAMO

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ハイリスク・ハイリターンでも結構でしてよ

所詮平民の命なんでしょ!

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 数日後唐突な退職に女将は驚いていたが、ネヴェルス公爵の養女になると聞いて育ての親として小さい頃から沢山働いた分、楽しく過ごしなさいと泣いてくれた。女将には本当に感謝しかない。迎えの馬車を従業員がみな出て見送ってくれた。みんな私の兄弟や家族のような人達だった。

  表向き、わたしは父が公爵の友人で娘を頼まれていた、今私の行方を見つけることが出来て養女に迎えたという筋書きになっている。これからは、この中年の少し細身の公爵が私の父。なんだか、変だわ。

 海辺の道を揺られながらわたしは「生みの親」「育ての親」「家族のような仕事仲間」「これからの親」…家族って一体なんなんだろうと、思案していた。でもどこか淡白な自分がいるなと感じてしまうだけだった。
 もしかしたら父の死を聞いて母が大泣したあの夜わたしの中でも何かが壊れてしまったのかもしれない。

「どうした、ルカイヤ。…やはり気が進まなくなったか」
  落ち着いた低い声はネヴェルス公爵だ。向かいの席でしばらく腕を組み目を閉じていたようだが今はこちらを見て様子を伺っている。
「いえ、1度決めたことですから。ところで公爵」
  と言ったところで公爵は人差し指を立てて左右に振った
「父上、だ」
「すみません、ちち、うえ」
  慣れない呼び方とのどことなく気恥ずかしさ。少し顔が火照ったのを感じて軽く自身の頬を叩いた。
「父上、なぜわたしを養女にしたのか教えてくれますか」
  今はもう接客時の「わたくし」を「わたし」に変えても悪くは無いだろう。
「そう、だな……お前には知る権利もあるし協力をしてもらわなくてはいけない。そして、本当にすまない」
 語尾はくぐもった声になり、表情も曇ったのを見た。そんなに深い事情なの?

「お前を養女にしたのは…」
  公爵の話したその理由に、わたしは言葉を無くしてしまった。

 戦が終わり15年。国もだいぶ落ち着いてきた。そして国王には2人の王子がいる。年は25と22。第二人とももう結婚相手を見つけても良い年だ。国がずっと平和であったなら16.7の時には婚約ないし早ければ結婚しているものだが、国がある程度落ち着くのを待っていたという所だろ。それでも年齢的には悪くない。
 そしていよいよ第1王子の婚約者候補が集められることとなったらしい。中でも小国ロベールの王女が第一候補となっているらしい。皇子の肖像画での反応も悪くないようだ。またこのロベールという国は最近高価な貴石の鉱脈と豊富な鉄の鉱脈が発見されたことで遠く一般には認知度のない小国ながら国家としての繋がりが国力の向上にも繋がるというわけで。
 だが、皇子の結婚は戦後の民衆にも期待あるものでなければならず、一般認知の低い国の王女ではパッとしない。しかも王女は大人しくあまり華やかなタイプでもなく特別な能力がある訳でも無い。王女として大事に育てられすぎたために世間ずれしており、この国の言葉も喋れず通訳がいれば大丈夫といった状態らしい。
  そこで、内々でこのおっとりとした王女を国民が認める王妃と仕立てるために、王女と敵対する悪役が必要と考えられた。このことはロベールの王女の事情を知る少数の推進派だけでの計画で皇帝も皇子も知らないらしい。

  婚約者候補の中に悪役を送り込み、他の候補者立ちを皇子から(いちおう)避けつつ、本命ロベールの王女に敵対し悪役をかい、民衆がロベールの王女に注目するように、王女の良い噂を流し悪役とのゴシップを流し、情報操作をする。

 悪役は当然民衆からの非難を浴びるだろうし、王女が妃となった際には、場合には不敬罪や何らかの罪を付けられて処刑されるかもしれない。

 戦後の国民感情は不遇な人間に同情的になり親しみを持ちやすくなる傾向がある、というのを利用しようと言うのだ。そして皇子の結婚で国への親愛度や期待値を高め、精神的な生産力や団結心をもたらすことが国家安泰に必要だというのだ。

 つまり、わたしが「悪役令嬢」

「でもなぜ……わたしなんです」
「それは。…国民の悪意を一身に受け処刑されるかもしれない役割を買ってでる娘も、親もいなかったからだ」

  当たり前だ。誰がそんな役を。
  それにたしかにこんな計画を養女を受け入れるという前聞いたら…断ったら口封じ。

  わたしは何も聞かずにお断りしますと言えばよかったの?違う世界に夢を見た少しばかりの欲がこんなにも酷いことになろうとは。

  わたしはどうしたら良かったの?
  この計画を遂行しなければわたしはどの道口封じ。やるしかなくなってしまった。逃げることは出来る??

「申し訳ない。何かあった時は私の娘として温情頂けるようできるだけの計らいはしよう」
「ふざけないで!!わたしが、平民だから、平民なら死んでも構わないと……貴族の女子にこんな重荷をさせるわけにはいかないから…平民だから…っ」

 久しぶりに声を荒げた気がする。大泣きした気がする。公爵はすまない、申し訳ないと苦しい声で言う。やめてよ!どうせなら本当に悪人でいてくれたら簡単に恨んでやれるのに!

何時間後か。もう時間がどれくらい経ったのかも分からない。屋敷の前に着いた時にはわたしは何も考えられなくなってて。広い庭も、美しい柱が無数に並ぶ立派な屋敷も、ただの緑色と白色の塊にしか見えてなかった。

  
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