4 / 5
ハイリスク・ハイリターンでも結構でしてよ
ハイリスク・ハイリターンでも結構ですわ
しおりを挟む
わたしは宛てがわれた部屋のソファに座っていた。ため息しか出なかった。
あんなに憧れていた上流階級の貴族の屋敷。そして豪華な自室、美味しい食事が働かなくても出てくる。
事情が事情だけに気を使った公爵は無理にあれこれと言わない。優しい人だ。平民相手、命令すればいいものを。無理やりに罵り動かせば良いものを。そうではなくこちらの気持ちも慮ってくれるからこそ良い領主と領民にも慕われているんだろう。
もう、7日。
最初のような大きな衝撃が心押さえつけることは無かった。段々冷静さも取り戻す。今あるのは自分の選択ミスに対するガッカリ感と、今までこなしてきていた仕事をしなくて良くなってしまった事でおきる虚無感。
みんな仕事面倒くさいっていってたのに。
年に一度開催される長者くじをあてて仕事をやめて一生遊んで暮らすんだというものも多かったのに。
仕事がしたいわ。わたし、本当に仕事が好きだったのね…
仕事…か
またため息。
人生にはいくつかの後戻りのできない大きな分岐点があるらしい。どう進むかは自己責任よ。
ああ、でも神様こんな極端な結果ってあるかしら。
ため息。
正直、飽きてきた。
同じことを考えて悲観していることに。
馬鹿じゃないのわたし。これじゃ何も始まらない。
わたしが選んでしまったことなら。もう進むしかないじゃない。悪役が不適正だったら追い出されてセーフかも?ああ、だめね。口封じという制裁の方が確実に私を殺すわ。
温情が得られるようあらゆる温情に手を尽くすと言ってくれたじゃない。公爵の様子を見ればそれが上辺の事ではなくおそらく本当に手を尽くしてくれるのだろうと…信じられそうな雰囲気はある。ゼロじゃない。
立ち上がる。
部屋を見回す。入口とは違う角度に扉が見える。たしか案内してくれたメイドが言っていた。
私の部屋はリビングと寝室とクローゼットに別れていると。あの先はクローゼット。
扉を開ければ出来合いのものだと言っていたが既に私のサイズに合いそうなドレスがいくつか。たくさんのはこの中には靴や帽子が入っているのだろう。
悪役ってどんなドレスを着るかしら。
そうね、私のこの黒髪もつり目な顔も悪役と見た目からはいるのにはピッタリね。
ふふっと笑いが盛れた。
温情を得るにしたってそれだけしっかり働いたと公爵が認めなければ手を尽くすに足りぬ者だったと、切り捨てられるだけだろう。
逃げたって口封じに追われるだけ。
いいじゃない、やってやろうじゃない。
自分の命を守るために徹底的に「仕事」をこなすわ。
婚約者候補の引き立て役の悪役。
それでも普通の仕事をしていたら平民のままで終わっていた人生が、公爵家令嬢よ。
公爵家って何をするのかしら。貴族は私たち平民の見えないところで実際何をしているのかしら。普通なら手に入らないカッコイイドレスを着て、いつか宿に来た貴婦人の胸を飾っていた虹色の光を放つような大きなダイヤのネックレスを身につけて。
短くなってしまうかもしれない人生だけど、精一杯華やかに生きてやろうじゃない。
死ぬのは怖いわ。それも処刑だなんて。でも何か回避出来る方法が見つかれば。それを見つけることも生きてる感じしていいじゃない。
自分を奮い立たせるための虚勢だったのかもしれない。きっと今の私は父の死を誇りに思うと言った母とおなじ顔をしているわね。
でも、何もしないのはもったいないわ。
ハイリスク・ハイリターン。結構よ。
母は言った。あなたには幸せに生きて欲しいわと。幸せってなにかしら。
同じ日々を繰り返し人生を全うすることかしら。お金ちになることかしら。
お金もちには、なった。幸せなんじゃない?ただハイリスクなオプションが付いただけよ。
ああ、何を言っても自己肯定の言い訳!!
パンパン、と両手で頬をはたく。そしてクローゼットのドレスを漁った。
フリルがたくさんの流行りの可愛いドレスも多かった。それより、そうね。わたしにはレースが似合う。
淡い色よりは濃いめの色を。可愛いよりは綺麗を。差し色、手袋や小物には黒をアクセントにして。
かっこいいじゃない、わたし。
あんなに憧れていた上流階級の貴族の屋敷。そして豪華な自室、美味しい食事が働かなくても出てくる。
事情が事情だけに気を使った公爵は無理にあれこれと言わない。優しい人だ。平民相手、命令すればいいものを。無理やりに罵り動かせば良いものを。そうではなくこちらの気持ちも慮ってくれるからこそ良い領主と領民にも慕われているんだろう。
もう、7日。
最初のような大きな衝撃が心押さえつけることは無かった。段々冷静さも取り戻す。今あるのは自分の選択ミスに対するガッカリ感と、今までこなしてきていた仕事をしなくて良くなってしまった事でおきる虚無感。
みんな仕事面倒くさいっていってたのに。
年に一度開催される長者くじをあてて仕事をやめて一生遊んで暮らすんだというものも多かったのに。
仕事がしたいわ。わたし、本当に仕事が好きだったのね…
仕事…か
またため息。
人生にはいくつかの後戻りのできない大きな分岐点があるらしい。どう進むかは自己責任よ。
ああ、でも神様こんな極端な結果ってあるかしら。
ため息。
正直、飽きてきた。
同じことを考えて悲観していることに。
馬鹿じゃないのわたし。これじゃ何も始まらない。
わたしが選んでしまったことなら。もう進むしかないじゃない。悪役が不適正だったら追い出されてセーフかも?ああ、だめね。口封じという制裁の方が確実に私を殺すわ。
温情が得られるようあらゆる温情に手を尽くすと言ってくれたじゃない。公爵の様子を見ればそれが上辺の事ではなくおそらく本当に手を尽くしてくれるのだろうと…信じられそうな雰囲気はある。ゼロじゃない。
立ち上がる。
部屋を見回す。入口とは違う角度に扉が見える。たしか案内してくれたメイドが言っていた。
私の部屋はリビングと寝室とクローゼットに別れていると。あの先はクローゼット。
扉を開ければ出来合いのものだと言っていたが既に私のサイズに合いそうなドレスがいくつか。たくさんのはこの中には靴や帽子が入っているのだろう。
悪役ってどんなドレスを着るかしら。
そうね、私のこの黒髪もつり目な顔も悪役と見た目からはいるのにはピッタリね。
ふふっと笑いが盛れた。
温情を得るにしたってそれだけしっかり働いたと公爵が認めなければ手を尽くすに足りぬ者だったと、切り捨てられるだけだろう。
逃げたって口封じに追われるだけ。
いいじゃない、やってやろうじゃない。
自分の命を守るために徹底的に「仕事」をこなすわ。
婚約者候補の引き立て役の悪役。
それでも普通の仕事をしていたら平民のままで終わっていた人生が、公爵家令嬢よ。
公爵家って何をするのかしら。貴族は私たち平民の見えないところで実際何をしているのかしら。普通なら手に入らないカッコイイドレスを着て、いつか宿に来た貴婦人の胸を飾っていた虹色の光を放つような大きなダイヤのネックレスを身につけて。
短くなってしまうかもしれない人生だけど、精一杯華やかに生きてやろうじゃない。
死ぬのは怖いわ。それも処刑だなんて。でも何か回避出来る方法が見つかれば。それを見つけることも生きてる感じしていいじゃない。
自分を奮い立たせるための虚勢だったのかもしれない。きっと今の私は父の死を誇りに思うと言った母とおなじ顔をしているわね。
でも、何もしないのはもったいないわ。
ハイリスク・ハイリターン。結構よ。
母は言った。あなたには幸せに生きて欲しいわと。幸せってなにかしら。
同じ日々を繰り返し人生を全うすることかしら。お金ちになることかしら。
お金もちには、なった。幸せなんじゃない?ただハイリスクなオプションが付いただけよ。
ああ、何を言っても自己肯定の言い訳!!
パンパン、と両手で頬をはたく。そしてクローゼットのドレスを漁った。
フリルがたくさんの流行りの可愛いドレスも多かった。それより、そうね。わたしにはレースが似合う。
淡い色よりは濃いめの色を。可愛いよりは綺麗を。差し色、手袋や小物には黒をアクセントにして。
かっこいいじゃない、わたし。
0
あなたにおすすめの小説
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
許すかどうかは、あなたたちが決めることじゃない。ましてや、わざとやったことをそう簡単に許すわけがないでしょう?
珠宮さくら
恋愛
婚約者を我がものにしようとした義妹と義母の策略によって、薬品で顔の半分が酷く爛れてしまったスクレピア。
それを知って見舞いに来るどころか、婚約を白紙にして義妹と婚約をかわした元婚約者と何もしてくれなかった父親、全員に復讐しようと心に誓う。
※全3話。
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
悪役令嬢は手加減無しに復讐する
田舎の沼
恋愛
公爵令嬢イザベラ・フォックストーンは、王太子アレクサンドルの婚約者として完璧な人生を送っていたはずだった。しかし、華やかな誕生日パーティーで突然の婚約破棄を宣告される。
理由は、聖女の力を持つ男爵令嬢エマ・リンドンへの愛。イザベラは「嫉妬深く陰険な悪役令嬢」として糾弾され、名誉を失う。
婚約破棄をされたことで彼女の心の中で何かが弾けた。彼女の心に燃え上がるのは、容赦のない復讐の炎。フォックストーン家の膨大なネットワークと経済力を武器に、裏切り者たちを次々と追い詰めていく。アレクサンドルとエマの秘密を暴き、貴族社会を揺るがす陰謀を巡らせ、手加減なしの報復を繰り広げる。
悪意には悪意で
12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。
私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。
ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる