『古本屋眞子、今日もレアものみつけました! ――オークション日記』

夢窓(ゆめまど)

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眞子、オークションと、出会う。

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宝塚の街。朝の空気は甘い。
眞子は今日も “劇場に礼を尽くす” ところから一日を始める。



 朝:劇場の前で“神チケット”の気配を確認する

劇場に着くと、まず当日券売り場へ

もし一枚でも 本日の販売チケットが見えたなら……それがS席であれば、
その瞬間、眞子の朝の仕事の予定は消え失せる。

今日の予定
→「午前:宝塚観劇」
→「午後:古本整理&発送」
→「夜:郵便局へ走る」

彼女の人生は、宝塚の上演スケジュールと
購入者、発送締切の狭間で成立している。



眞子の贔屓:春野すみれ(架空男役)への“重すぎる愛”

春野すみれ。
その名前を口にするだけで眞子の目はキラリと光る。

贔屓の退団が発表されたあの日、

しばらくして、眞子は真夜中に友の会サイトへログインし、震える手でエントリーした。

そして――数日後

「当選」の文字を見た瞬間、
眞子は声にならない悲鳴をあげた。

「うわわわわーー!
正規品や!
ありえん……こんなん生まれて初めて……!!」

泣きながらパソコンに手を合わせ、
そのまま三日間、仕事にならなかった。

愛が重い?
いいえ、愛ゆえに働けなくなるだけである。

午後:倉庫に戻り、静かに“ひとり戦場”が始まる

宝塚駅から仕事場の倉庫へ戻ると、
そこには 段ボールの山、古本の匂い、レア漫画の背表紙。

眞子の仕事はここからが本番だ。
• 梱包
• 出品
• コンディションチェック
• 送ったらメッセージ返し

これらを淡々と、コツコツとこなす。

特別な技術があるわけじゃない。
ただ――

毎日コツコツ続ける。それだけで世界に届く。

眞子はそれを知っている。
それが“眞子の世界の歩き方”。

夜:郵便局へダッシュ(観劇帰りでハイテンション)

夕方、観劇の余韻に浸りながら梱包を終えると、
眞子は郵便局へ駆け込む。

局員さんに言われる。

「今日も宝塚帰りですか?」

眞子は胸を張って言う。

「はい。今日もすみれ様が、世界一かっこよかったです!」

局員さんは笑う。
眞子は本気だ。

そして深夜、eBayと語り合う

家に戻ると、eBayからの通知が光る。
• 海外のバイヤーが質問
• 古本が売れた
• 漫画セットが即決された
• たまに詐欺メッセージも混ざる

眞子は恐れない。
PayPal凍結やアカウント乗っ取り事件を
何度も聞き、何度も対策し、
イーベイ世界のサバイバルを知っているから。

そして…

「ああ、今日もよく働いた。
すみれ様のおかげで、力が湧くわ」

舞台の余韻と発送の達成感。
そのどちらも、眞子の“生きる燃料”。




――すべては、あの日いきなり始まった。

眞子は言う。

「あれは……革命のはじまりやった。」

まだ日本に“ネットで個人売買”という文化がなかった頃。
ヤフーのトップページに、突然ぽつんと現れたひとつの言葉。

「オークション」

告知も派手な宣伝もなく、
本当に、ふっと生まれた。
まるで 新しい文明 が追加されたかのように。



■「オークションって何?」から始まった時代

当時はまだ、
• メルカリもない
• ラクマもない
• SNSもない
• 便利な支払いシステムもない

そんな時代だ。

周りの人間も、口を揃えて言っていた。

「オークションって何?
落札ってどういう意味?」

眞子自身もよくわかっていなかった。

出品?
入札?
評価?

全部が未知の単語。

でも画面の向こうには、
欲しかった漫画・絶版雑誌がちらほら、
値段が上がってる。
これ、うちの店にも在庫ある!

「なんか、入札したら値段が上がるらしいで」
「ほんまに届くんかな?」
「郵便で送るんやて」

そんな噂が飛び交う。

眞子は、心臓をバクバクさせながら
初めて“出品”のボタンを押した。

画面は、テキストだけの簡素なもの、
みんな画像なんて、作ったことなかった。二つ折りの携帯の時代1999年
携帯にカメラなし、
デジカメ高級品な時代

■発送は郵便局。入金は銀行口座や郵便局

すべてが手打ち・手探りの時代。

出品者は皆、こう説明していた。

「発送は郵便局から行います」
「入金確認後に発送します」
「評価お願いします」

「評価って何?」
「この“よい出品者です”って何の儀式?」

いま思えば笑えるが、
当時はほんとうに“新世界のルール”だった。

しかも入会に必要なのは――

個人名義の銀行口座。

PayPayもなし。
クレカ連携もなし。

銀行や郵便局に行き、振り込みをATMからした、手数料を払い、
「どうか届きますように…」と祈る毎日。


■そして、眞子は気づく。

「これ……世界が変わるやつや」

初めて届いた“落札品”の封筒を抱きしめた瞬間、
眞子は確信した。

「ああ、これ……人生変わるわ」

絶版の漫画、古い宝塚プログラム、
地方では手に入らなかった本まで、
家にいながら買える。

そして売れば――
誰かの人生の宝物になる。

そのとき眞子は知らなかった。

この興奮が、
やがて“世界eBay行き”へつながることを。

そして、
人生の大半を捧げる“混沌の沼”になることを

**
新連載お読みいただきありがとうございます。
不定期更新です。
週2回ぐらい更新したいです。
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