ピアノはまだ悲しみを弾いている

夢窓(ゆめまど)

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最終章 ふたりで選ぶ、これからの未来

【セリア・サイド】花咲く未来へ

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セリアは、パーティー会場の隅でふたりの姿を見つめていた。

 花咲くアーチの下、セリアは腰を下ろして空を仰ぐ。

 「はぁ……お姉さまって、ほんと完璧なんだから」

 どこか拗ねたように、けれどその声にもう嫉妬はなかった。

 「でも、綺麗だったね、今日のリゼル嬢。ドレスも、演奏も」

 柔らかな声がして、隣に座る家庭教師――ルーファスがセリアの肩越しに空を見上げる。

 「……うん。ああいうふたり、いいよね。私も……あんな風に誰かと並べたらいいなって」

 「……じゃあ、俺は候補に入ってないの?」

 ふいに耳元で囁かれ、セリアはびくりと肩を跳ねさせる。

 「な、なに言ってんのよ!? 教師のくせに!」

 「もう“先生”だって好きな子ぐらい いてもいいだろう」

 ルーファスは、片肘をついてセリアの顔を覗き込む。
 その瞳に、からかう色と、ほんの少しの真剣さが入り混じっていた。

 「それに……君が大人になるの、俺はずっと見てたんだよ。いつまでも子ども扱いなんて、できるわけない」

 セリアは頬を染めて、でもまっすぐに彼を見返す。

 「……じゃあ、ちゃんと責任取ってよね。私、まだまだ未熟で、めんどくさいし、泣き虫だし……でも」

 ふっと、彼女は目を伏せ、静かに続けた。

 「でも、私……今、孤児院に勉強教えに行き始めたの。
 小さな子に文字や計算を教えるのって、すごく大変だけど、なんだか楽しくて……。私も“何かを与えられる側”じゃなくて、“与えられる側”になりたいなって」

 ルーファスは、しばらく何も言わず彼女の言葉を聞いていたが、ふと、目を細めて微笑んだ。

 「……ねえ、セリア」

 「なに?」

 「君、すっごくいい女になると思うよ」

 「~~~~っ!! バカ!! 笑ってんじゃないわよ!!」

 叫びながら顔を覆ったセリアの手に、ルーファスはそっと自分の指を絡めた。

 「ほら、照れてないで。手、貸してよ。君の未来に、俺も少しだけ関わらせてくれるなら、きっと悪くない」

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