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公爵との晩餐会
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◆晩餐会当日
玄関ホール。
ジュディは落ち着いたドレス姿。
派手すぎず、上品で実用的。
サリー
「奥様、お気をつけて。
カレンは、私がしっかり見ていますから」
カレン
「ジュディー! かえってきたら、本よんでね!」
ジュディ
「もちろんよ。ありがとう、サリー。カレン、おりこうにね」
タイロン
(……この女、子供の扱いは慣れてるよな……
“遊び人”の噂はなんだったんだ?
……まあ俺には関係ないけど)
表情は無関心、胸の内は“引っかかり”だけ。
執事
「では、旦那様。
本日は旦那様も王宮の晩餐会にご出席でございますので、
奥様のエスコートをお願いいたします」
タイロン
「……まあ、仕方ないか」
=興味ゼロのままの義務エスコート。
ジュディ
「では、行きましょうか、タイロン様」
タイロン
「……ああ」
ただの“とばっちり婚の義務同行”である。
◆王宮・大広間
魔石シャンデリアが輝き、身分高い者たちが集まっている。
タイロン
(……相変わらず緊張する場所だ……
こういう晩餐会は苦手なんだよな)
そんなとき――
「おや、タイロン殿」
振り返ると、
堂々たる雰囲気をまとった男が立っていた。
外務大臣も兼ねる、
ダナー公爵。王都の中心人物の一人。
タイロン
「こ、公爵閣下……!」
(うわ、すげぇ……やっぱり威厳あるな……
こういう人が“国を動かす”んだよな……
ちょっと興奮する……)
ダナー公爵
「本日はお越しいただき感謝します。
そして――」
ジュディに視線を移す。
ダナー公爵
「ジュディ嬢。
あなたを少々お借りしたい。
本日の晩餐会は、あなたの“力”が必要でしてね」
タイロン
(……“力”?
え、何の話?
ジュディに……“力”?
あの地味女に??
公爵が???)
理解が追いつかない。
ジュディは当然のように微笑む。
ジュディ
「承知しました、公爵閣下。
必要とあらば、いつでも」
タイロン
(え?
なんでそんな当然みたいに返すんだ?
公爵にそんな顔向けする関係……?
いやいやいや、どういう繋がり!?
なんで俺は知らんの!?)
ここでようやく“モヤっ”が生まれる。
ダナー公爵
「では、こちらへ。
ジュディ嬢には中央卓で動いてもらう。
私は向こうの要人を連れてくる」
ダナーは颯爽と歩いていく。
ジュディも普通の顔でついていく。
タイロンはぽつんと残される。
タイロン
(……公爵が“借りる”って言ったよな?
国の中心人物が?
うわ……やっぱり威厳ある……
ビビるわ……
っていうか……
なんでジュディなんだ……?
どういう関係なんだ……?)
しかしタイロンはこう結論づけてしまう。
タイロン
(まあ……“白い結婚”の契約では、
ジュディの“外での交友関係”に
俺は口出ししないと決まってるしな……
契約、契約……
関係ない、関係ない……)
そう言いながら、
胸の奥がほんの少しざわつく。
タイロン
(……興味はないけど。
ないけど……
なんか……引っかかるよな……)
“興味ゼロから、興味5くらい”に上昇した瞬間。
◆晩餐会後
(ジュディ=汗ひとつかかず余裕/タイロン=気になる)
◆侯爵家・玄関
夜も遅い。
晩餐会を終え、馬車が屋敷に止まる。
タイロンは疲れ切った顔で降りた。
緊張と格式高い空気に、ぐったり。
タイロン
(……やっぱ王宮の晩餐会は疲れるわ。
大物の公爵と話すだけで胃に来る……
はー……帰ってきた……)
ジュディも降りてくる。
――息が乱れていない。
――汗ひとつかいていない。
――表情もいつもと同じ。
タイロン
(…………ん?)
ジュディ
「ただいま戻りました」
タイロン
(なんでそんな普通なんだ……?
外務大臣もいたし、公爵ダナーなんて国の中心人物だぞ……?
“借りる”と言われて中央卓で動いてたのに……
全然、疲れてない……?)
ジュディはマントを軽く整え、いつも通り。
サリー
「お帰りなさいませ、奥様。
カレンはもう寝ていますよ」
ジュディ
「ありがとう、サリー。助かるわ。
じゃあ、今日はもう休みますね」
軽い。
あまりに軽い。
タイロン(心の声)
(いや、軽すぎない!?
公爵の晩餐会って、あんなに緊張の塊なんだぞ!?
俺なんて背中に汗びっしょりだぞ!?
なんでこんな“日常の買い物”みたいな顔してんだ……?
どういう神経してんだ……?)
ジュディは振り返りもせず歩いていく。
タイロン
「……おい。
お前……その……大変じゃなかったのか?」
ジュディ
「え?何がですか?」
タイロン
「晩餐会……
公爵閣下に呼ばれて……
いろいろ、やってた、だろ?」
ジュディ
「ああ、まあ……いつものことなので」
タイロン
(いつもの!?
今、“いつもの”って言った!?
あのレベルが“日常”なの!?)
ジュディ
「では、休みますね。
お疲れさまでした、タイロン様」
タイロン
「あ、ああ……」
ジュディ退場。
タイロンは廊下に立ち尽くす。
タイロン
(……なんだ?
なんか……妙だよな……
俺より格上の貴族たちの中にいて、
俺より緊張してないって……どういうことだ……?)
執事がそっと声をかける。
執事
「奥様は、ああ見えて……
王宮の場にも慣れておられますから」
タイロン
「慣れてる……?
なんでだよ……?」
執事
「さあ……奥様のことは、奥様にお聞きになられては?」
タイロン
「いや……聞かれてないから言わない女なんだよ、あれは……」
執事
「ふふ……それは確かに」
タイロンはゆっくり手袋を外しながら思う。
タイロン
(……“仕事してる”なんて一言も言ってない。
語学も、何ができるかも、何も言ってない。
ただ、淡々とあの公爵と話し、中央卓に座り、
平然と戻ってきただけ……
俺は……俺は……
この女を……何も知らない……)
胸がざわつく。
タイロン
「……なんでだ?
なんで“汗ひとつかかない”でいられる……?」
その疑問が、
タイロンの興味の、最初の火種になる。
玄関ホール。
ジュディは落ち着いたドレス姿。
派手すぎず、上品で実用的。
サリー
「奥様、お気をつけて。
カレンは、私がしっかり見ていますから」
カレン
「ジュディー! かえってきたら、本よんでね!」
ジュディ
「もちろんよ。ありがとう、サリー。カレン、おりこうにね」
タイロン
(……この女、子供の扱いは慣れてるよな……
“遊び人”の噂はなんだったんだ?
……まあ俺には関係ないけど)
表情は無関心、胸の内は“引っかかり”だけ。
執事
「では、旦那様。
本日は旦那様も王宮の晩餐会にご出席でございますので、
奥様のエスコートをお願いいたします」
タイロン
「……まあ、仕方ないか」
=興味ゼロのままの義務エスコート。
ジュディ
「では、行きましょうか、タイロン様」
タイロン
「……ああ」
ただの“とばっちり婚の義務同行”である。
◆王宮・大広間
魔石シャンデリアが輝き、身分高い者たちが集まっている。
タイロン
(……相変わらず緊張する場所だ……
こういう晩餐会は苦手なんだよな)
そんなとき――
「おや、タイロン殿」
振り返ると、
堂々たる雰囲気をまとった男が立っていた。
外務大臣も兼ねる、
ダナー公爵。王都の中心人物の一人。
タイロン
「こ、公爵閣下……!」
(うわ、すげぇ……やっぱり威厳あるな……
こういう人が“国を動かす”んだよな……
ちょっと興奮する……)
ダナー公爵
「本日はお越しいただき感謝します。
そして――」
ジュディに視線を移す。
ダナー公爵
「ジュディ嬢。
あなたを少々お借りしたい。
本日の晩餐会は、あなたの“力”が必要でしてね」
タイロン
(……“力”?
え、何の話?
ジュディに……“力”?
あの地味女に??
公爵が???)
理解が追いつかない。
ジュディは当然のように微笑む。
ジュディ
「承知しました、公爵閣下。
必要とあらば、いつでも」
タイロン
(え?
なんでそんな当然みたいに返すんだ?
公爵にそんな顔向けする関係……?
いやいやいや、どういう繋がり!?
なんで俺は知らんの!?)
ここでようやく“モヤっ”が生まれる。
ダナー公爵
「では、こちらへ。
ジュディ嬢には中央卓で動いてもらう。
私は向こうの要人を連れてくる」
ダナーは颯爽と歩いていく。
ジュディも普通の顔でついていく。
タイロンはぽつんと残される。
タイロン
(……公爵が“借りる”って言ったよな?
国の中心人物が?
うわ……やっぱり威厳ある……
ビビるわ……
っていうか……
なんでジュディなんだ……?
どういう関係なんだ……?)
しかしタイロンはこう結論づけてしまう。
タイロン
(まあ……“白い結婚”の契約では、
ジュディの“外での交友関係”に
俺は口出ししないと決まってるしな……
契約、契約……
関係ない、関係ない……)
そう言いながら、
胸の奥がほんの少しざわつく。
タイロン
(……興味はないけど。
ないけど……
なんか……引っかかるよな……)
“興味ゼロから、興味5くらい”に上昇した瞬間。
◆晩餐会後
(ジュディ=汗ひとつかかず余裕/タイロン=気になる)
◆侯爵家・玄関
夜も遅い。
晩餐会を終え、馬車が屋敷に止まる。
タイロンは疲れ切った顔で降りた。
緊張と格式高い空気に、ぐったり。
タイロン
(……やっぱ王宮の晩餐会は疲れるわ。
大物の公爵と話すだけで胃に来る……
はー……帰ってきた……)
ジュディも降りてくる。
――息が乱れていない。
――汗ひとつかいていない。
――表情もいつもと同じ。
タイロン
(…………ん?)
ジュディ
「ただいま戻りました」
タイロン
(なんでそんな普通なんだ……?
外務大臣もいたし、公爵ダナーなんて国の中心人物だぞ……?
“借りる”と言われて中央卓で動いてたのに……
全然、疲れてない……?)
ジュディはマントを軽く整え、いつも通り。
サリー
「お帰りなさいませ、奥様。
カレンはもう寝ていますよ」
ジュディ
「ありがとう、サリー。助かるわ。
じゃあ、今日はもう休みますね」
軽い。
あまりに軽い。
タイロン(心の声)
(いや、軽すぎない!?
公爵の晩餐会って、あんなに緊張の塊なんだぞ!?
俺なんて背中に汗びっしょりだぞ!?
なんでこんな“日常の買い物”みたいな顔してんだ……?
どういう神経してんだ……?)
ジュディは振り返りもせず歩いていく。
タイロン
「……おい。
お前……その……大変じゃなかったのか?」
ジュディ
「え?何がですか?」
タイロン
「晩餐会……
公爵閣下に呼ばれて……
いろいろ、やってた、だろ?」
ジュディ
「ああ、まあ……いつものことなので」
タイロン
(いつもの!?
今、“いつもの”って言った!?
あのレベルが“日常”なの!?)
ジュディ
「では、休みますね。
お疲れさまでした、タイロン様」
タイロン
「あ、ああ……」
ジュディ退場。
タイロンは廊下に立ち尽くす。
タイロン
(……なんだ?
なんか……妙だよな……
俺より格上の貴族たちの中にいて、
俺より緊張してないって……どういうことだ……?)
執事がそっと声をかける。
執事
「奥様は、ああ見えて……
王宮の場にも慣れておられますから」
タイロン
「慣れてる……?
なんでだよ……?」
執事
「さあ……奥様のことは、奥様にお聞きになられては?」
タイロン
「いや……聞かれてないから言わない女なんだよ、あれは……」
執事
「ふふ……それは確かに」
タイロンはゆっくり手袋を外しながら思う。
タイロン
(……“仕事してる”なんて一言も言ってない。
語学も、何ができるかも、何も言ってない。
ただ、淡々とあの公爵と話し、中央卓に座り、
平然と戻ってきただけ……
俺は……俺は……
この女を……何も知らない……)
胸がざわつく。
タイロン
「……なんでだ?
なんで“汗ひとつかかない”でいられる……?」
その疑問が、
タイロンの興味の、最初の火種になる。
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