『白い結婚のはずでしたが、夫の“愛”が黒い。 限界突破はお手柔らかに!』

夢窓(ゆめまど)

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毎日、少しずつ知るお互いの事

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夕方。
カレンが昼寝から起きて、広い廊下をとことこ歩き……
ジュディを見つけて飛びつく。

「ジュディ~~!!」

ジュディ「はいはい。起きたのね。抱っこしてあげる」

すぐに抱っこされ、頭をこすりつけるカレン。

そこへ、夕食の時間を知らせに来たタイロンが通りかかる。

「カレン、夕食——」

カレン「タイロンおじちゃんは、いい」
ぷいっと横を向く。

タイロン「えっ……いいって……」

カレンはギュッとジュディに抱きついたまま言い放つ。

 「ジュディだけでいい」

タイロン「ッ!?!?」

サリー(台所から小声)「あ~これは刺さる……」

ジュディは困ったように苦笑いしながら、
カレンの背をぽんぽん叩いた。

「カレン、そんなこと言わないの。
 タイロンも家族なんだから」

カレン「……じゃあ、ちょっとだけ」

(ちょっと、だけ!!)

タイロンは胸を貫かれ、
その“わずか1ミリの許可”に妙に嬉しくなる自分に混乱した。



夕食:ちょっとだけ優しくされる殺傷力

夕食の時間。

シェフの作った温かいスープと焼きたてのパンが並ぶ。

カレンはジュディの隣に座り、
タイロンは真正面。

最初はいつも通りの静かな食事だった。

しかし——

タイロンがパンをちぎろうとして、
少し熱さに手を引っ込めた、その瞬間。

ジュディが自然な仕草で言った。

「……熱いから、先にスープに浸して冷ましたほうがいいわよ」

いつもの冷たさじゃない。
責めるでも呆れるでもなく、
ただ“気遣うような声”。

タイロン「……っ」

(な、なんだ……!?
 なんで優しい!?
 俺、また何かやったか!?
 いや褒められたから!?
 いや昨日怒られたのに優しいの!?
 これどういう意味!?)

脳内に“?”が乱舞。

ジュディは気づかず、カレンに食べさせている。

「ほらカレン、口開けて」

「あーん!」

カレンは嬉しそうにジュディに甘える。

タイロンは思わず言葉にする。

「……ジュディは、その……
 子ども、慣れてるんだな」

ジュディは一瞬、横目でタイロンを見る。

その視線がほんの少し柔らかい。

「姉の……ランディの娘だから。
 慣れるというより……
 大切にしたいだけよ」

静かに、けれど深く響く声だった。

タイロンは息を呑む。

(……そうか。
 カレンは……ジュディの“全部”なんだ)

ジュディはサラダ皿をタイロンの方に寄せた。

「野菜、足りてないでしょ。
 少しくらい食べた方がいいわ」

それは本当に、ただの“優しさ”だった。

タイロンは固まる。

(……やばい。
 優しくされると……
 なんか……
 心臓が、変だ……)



食後:混乱MAXのタイロン

食後、カレンがサリーに連れられて風呂へ。

広い食堂に二人きり。

タイロンは耐えきれずジュディに言った。

「……さっきの、ありがとう」

ジュディは椅子を片づけながら、ごく普通に答える。

「どういたしまして。
 今日のあなたは、ちゃんと“人の役に立ってた”から」

タイロン「……っ!」

ジュディは淡々と続ける。

「あなたが有能なのは知れたし、
 私も、無駄に怒りたくはないの。
 それだけよ」

そう言って立ち去る。

タイロンはその背中を見送るしかできなかった。

(……なんだよ……
 なんで、ちょっと優しくされただけで……
 こんなに嬉しいんだよ……)

答えの出ないまま、
胸のざわつきだけが残った。


仕事現場:ジュディの本気モード

午後の客間。
ジュディは書類の束を机に広げ、
翻訳・文書整理・商談資料の下準備を同時進行していた。

書類を読む速度は尋常じゃない。
視線が走るたびに、注意書きや注釈が整然と並んでいく。

タイロンは廊下を歩いていて、
ふと開いた扉からその姿を見つけ、思わず足を止めた。

(……すげぇ……何これ……)

朝見るジュディとはまるで別人。
眉ひとつ動かさず、
静かで凛とした集中の空気が彼女を包んでいる。

タイロンはほとんど息を飲むように見つめてしまう。

(これが……ジュディの“仕事”なんだ……
 男遊びなんかじゃ……全然なかった……
 こんな……かっこいいなんて聞いてない……)

そこへ、扉がノックされた。



外務大臣夫人の突然の訪問

執事長「旦那様、奥様にお伝えしたいことがございます」

タイロン(な、なんだ……?俺怒られる?)

執事長「本日午後、外務大臣閣下の奥方様より“正式な面会”のご依頼がありまして、
 奥様に確認のうえお受けいただければ、とのことでございます」

タイロン「あ、ああ……ジュディに確認する」



「失礼いたします……シーラン侯爵家の奥方様はいらして?」

サリーが案内すると、
気品ある外務大臣夫人が優雅に入ってきた。


ジュディは慌てることなく、
すっと立ち上がり丁寧に挨拶する。

「ようこそいらっしゃいました。
この前は、ありがとうございました。
 本日は、どういったご用件でしょう?」

外務大臣夫人は微笑んだ。

「先日、夫が“ジュディ様がいなければ仕事が進まない”と大変感謝しておりましたの。
それで……可能であれば、また息子の家庭教師の再開をお願いできないかと」

タイロン(……家庭教師?やってたの!?)

ジュディは軽く考え、少し困った顔をした。

「カレンがいますから……以前のようには難しいかもしれません」

外務大臣夫人はぱっと目を輝かせた。

「では……うちの息子をこちらに通わせるのはダメかしら?
 タイロン様、迷惑になりまして?」

突然ふられたタイロン、のどを詰まらせる。

「わ、わたくしは……!
 ご子息が来られるのは……むしろ歓迎でございます……!」

(おかしい……俺、何答えてんだ……
 でもジュディの仕事の邪魔しないなら……
 むしろ協力したい……?)

ジュディは、タイロンの反応をちらっと見て、ふっと笑った。

「いいわね。
 カレンのお昼寝の時間なら、お受けできます」

外務大臣夫人は嬉しそうに手を合わせた。

「助かりますわ!
 ジェイコブも喜びます!また日程を改めてご連絡しますね」

帰っていく夫人を見送り、
部屋に静けさが戻る。



タイロンの“惚れかけ”瞬間

夫人が出て行ったあと。
ジュディは息をつき、書類に戻ろうとした。

タイロンはその横顔を見つめたまま動けない。

(……こんなに人から頼りにされて、
 落ち着いてて、かっこよくて……
 しかも育児しながら……
 なんなんだこの人……)

気づけば小さく声に出ていた。

「……すげぇな、お前」

ジュディ「え?」

タイロンは慌てて取り繕う。

「い、いや……
 その、誤解してたというか……
 この前、すまなかった。
 仕事……ちゃんとしてたんだなって」

ジュディは一瞬だけ、優しい目をした。

「……当たり前でしょう?」

その一瞬が致命傷だった。

(……くそ……
 好きになる……
 いや、もうすでに危ない……)

胸の奥が熱くなるのを、
タイロンは隠し切れなかった。




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