『白い結婚のはずでしたが、夫の“愛”が黒い。 限界突破はお手柔らかに!』

夢窓(ゆめまど)

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タイロン昇格を聞いた外務大臣、爆速で押しかける回

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翌日。
まだ朝の片付けが済んだばかりの時間。

別宅の門前が、突然ドカドカとうるさくなる。

サリー
「だ、旦那様!!
 “大臣馬車”が来てます!!」

タイロン
「もう!?
 なんでこんな朝早く……!」

ジュディ
「外務大臣の馬車?」
(嫌な予感しかしない)

◆外務大臣、玄関で大声

ガチャーーーン!!!

外務大臣ズカズカ案内も待たずに、食堂へ
「タイロン男爵!! おめでとう! いや“もうすぐ侯爵”か!!」

タイロン
「え、ええ!? まだ何も……!」

外務大臣
「聞いたぞ聞いたぞ!!
 王も絶賛、行政能力は一級品、
 そして奥方は多国語を操る天才……!」

ジュディ
「いや、天才というほどでは……」

外務大臣
「遠慮するな君達!!
 君達さえいれば、隣国外交は全部丸投げできる!!」

タイロン
「丸投げ!? え、俺、そんな……!」

ジュディ(小声)
「あなた、外務大臣に任されてる自覚が薄いのよ。
 ほら、“外交は商談の応用”って、昨日も言ってたじゃない」

タイロン
「俺、言ったっけ……!?」

外務大臣、テンション最高潮

外務大臣
「タイロン!
 君さえいれば、どんな王だって怖くない!
 なんたって——」

指をビシッとジュディに向ける。

外務大臣
「“万能通訳の奥方”がついている!!」

ジュディ(固まる)
「ちょっ……!」

タイロン
「だ、大臣!? 妻をそんな武器みたいに!!」

外務大臣
「武器じゃない、宝だ!!
 これで我が国は勝った!!
 隣国の王にも紹介できるぞ!
 行くぞ!」

タイロン
「待ってくれ!! 俺はまだ侯爵にもなってない!!」

外務大臣
「心配ない、王が“ほぼ決定”と言っていた!!
 それより外交だ!!」

サリー(ひそひそ)
「旦那様……出世って怖い……」

ジュディ(ひそひそ)
「あなた、昨夜まで“平民落ちかも”って震えてたのに……」

タイロン
「今は色々追いつかないんだ!!」

◆ジュディの一言が外務大臣に火をつける

ジュディ
「……まあ確かに、隣国の王室語も、地方語も、
 話せないことはないけど……」

外務大臣
「よし決定ーーーー!!」

タイロン
「決めるのはあなたじゃない!!」

外務大臣、タイロンの肩をがっちりつかむ

外務大臣
「タイロン!
 我が国は君たち夫婦に未来を託す!!!
 頼むぞ、“未来の外交夫婦”!!!」

ジュディ
「ふ、夫婦……?」

タイロン
「ま、まて! 俺たちは契約で——」

外務大臣
「契約でもいい!!
 夫婦である以上、外交の顔だ!!
 “仲が良さそうに見えれば”それでいい!!」

タイロン
「条件が雑!!」

ジュディ(小声)
「仲が良さそうに……見える……?」

タイロン(真っ赤)
「見られるのか……俺たち……?」

サリー(小声)
「旦那様、期待してますよ?」

タイロン
「サリー黙れ!!」

◆大臣、帰り際に爆弾

外務大臣
「では来週、王宮前で待っている!!
 海外派遣の契約書を作るぞ!!」

タイロン
「勝手に決めるなぁぁぁあ!」

外務大臣は大笑いしながら帰っていった。


ジュディ
「……あなた、本当に出世しちゃうのね」

タイロン
「俺は……ただ……
 兄の代わりに書類を書いてただけなのに……」

ジュディ
「いいえ。
 “できる人間”って、そういうものよ」

タイロン
「……ジュディ、お前……
 なんか……今日優しくないか……?」

ジュディ
「気のせいよ。ほら、仕事に行きなさい」

サリー
「旦那様、照れ顔100点満点です」

タイロン
「もうやめてくれぇぇぇ!」



◆ジュディとタイロン “本気夫婦のふり”

外務大臣に“夫婦として振る舞え”と言われ、
王宮からも正式に「夫婦席にて参加のこと」と通知が届く。

その日、カレンが昼寝に入った静かな午後。

ジュディ
「……はぁ。
 どうするの? 王宮のレセプション、夫婦らしくしろって」

タイロン
「夫婦らしくって……俺たち白い結婚だろ?
 しかも……お互い“当人以外の理由”で結婚したんだぞ?」

ジュディ
「そうなのよ。
 とばっちり婚約で、結婚式も、ドレスも、誓いもなくて……」

タイロン
「そこ、そんなにこだわる?」

ジュディ
「こだわるわよ。
 だって――
 指輪も、プロポーズも、
 デートも、
 キスもないのよ?」

タイロン
「き、キスまで行く!?」

ジュディ
「別に、行かないけど!?
 でも、普通……そういう流れがあってこその“夫婦”でしょ……?」

ちょっと頬を赤くするジュディ。

タイロン、目のやり場に困る。

まずは “腕を組む” の練習

ジュディ
「……じゃあ、まず腕を組むところからね」

タイロン
「お、おう……」

二人ともぎこちなく腕を出す。

ジュディ
「そんな……棒みたいに固い腕、組めないわよ」

タイロン
「お前だって、手が震えてるだろ……!」

ジュディ
「震えるわよ……!!
 だってこんなの、初めてなんだから……」

タイロン
「俺も初めてだ!!」

沈黙。
視線が一瞬だけ合う。

そして――
ゆっくり腕を絡める。

ジュディ
「……(小声)意外と……普通ね」

タイロン
「(小声)……温かいな」

ジュディ
「っ、今の忘れて!!」



“距離を近づける” 練習
家の応接室で、練習は、続く。

ジュディ
「次は……距離ね。
 夫婦なら、こう……自然に近いでしょ?」

タイロン
「自然に……ね……」

二人の肩が触れるくらいに近づく。

タイロン
「……近いな」

ジュディ
「夫婦ってこんなものよ。
 ……たぶん」

タイロン
「……胸がドキドキしてきたんだけど」

ジュディ
「知らないわよ!! 私だってしてるわよ!!」

距離を取りたいのに、
練習だから取れない。

空気が妙に甘い。

最後の課題 “手をつなぐ”

ジュディ
「……王宮で手をつなぐかもしれないって言われたのよ」

タイロン
「手を……つなぐのか……俺たちが……?」

ジュディ
「……練習しないと、恥をかくでしょう」

タイロン
「……ああ」

二人は向かい合う。
ゆっくりと手を伸ばし――
指先が触れた瞬間、お互いびくっとする。

ジュディ
「……っ」

タイロン
「……緊張してるだろ?」

ジュディ
「してるわよ……!
 指輪も、プロポーズもないのに……
 なんでこんなことするのよ……」

タイロン
「……それは……俺だって……」

ジュディ
「“夫婦らしく”って……
 なんか、変に意識するじゃない……」

タイロン
「ジュディ……」

静かに、指が絡む。

キュッ。

ジュディ
「っ……(もじもじ)」

タイロン
「……大臣の言う通り、
 “仲が良さそうに見えるように”か……」

ジュディ
「……に、見えるのかしら?」

タイロン
「俺からは……見える」

ジュディ
「……っ(顔真っ赤)!!
 やめて、そういうこと急に言わないで……!!」

タイロン
「いや、事実だから……」

ジュディ
「……もういいわ、今日は終わり!!
 でも……練習は、続けないとね……?」

タイロン
「……ああ。
 “夫婦として”……な」

二人の手は、しばらく離れなかった
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