白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)

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真面目に夫婦

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「マリー、殴られっぱなしでは将軍の名がすたります」
「なによ、やり返す気?」
「もちろん。正々堂々と、体力勝負で」
「……いやな予感しかしないんだけど」

その予感は、見事に当たった。
翌朝、マリーはぐったりとベッドの端で白旗を上げていた。
「ま、負けた……」
「三年分の想いです」
「卑怯よ……でも、ちょっと楽しかったかも」

二人の新婚戦線は、こうして幕を開けた。

ベッド上で踊る夫婦

朝の光が差し込むころ、マルグリットはベッドの端で大の字になっていた。
髪は乱れ、息も絶え絶え。
足元では、シャツのボタンを留めながらテオドールが、穏やかに笑っている。

「……まだ、将軍を舐めてはいけませんね」
「ずるい……っ、あんた反則よ……!」
「戦場では、体力のある者が勝つんです」
「ここは戦場じゃないってば!」

マルグリットが枕を掴んで投げる。
テオドールはそれを軽くかわし、反撃にクッションを放った。
二人の“戦い”は、いつのまにか笑いに変わる。

「三年分の怒り、受け止めました」
「……ほんとに?」
「ええ。できれば毎日でも更新してほしいくらいです」
「また、殴るわよ?」
「では、私はまた愛で、受け止めます」

笑いながら、二人は同じ布団にもぐり込んだ。
まだ照れくさい。けれど、不思議と心は穏やかだった。

「ねぇ、テオドール」
「なんです?」
「三年分、もう取り戻せたと思う?」
「いえ、まだ始まったばかりです」

窓の外では雪が解け、光が静かに差し込んでいる。
氷のように冷たかった日々の上で、
二人はようやく、ゆっくりと――同じリズムで踊り始めた。


ふたりならば、いつも笑おう

春の風が吹き抜け、庭の小道に花の香りが漂っていた。
マルグリットは、紅茶を入れながら小さくくしゃみをした。

「……テオドール、また外で筋トレしてるの?」
「日課です。将軍、衰えるわけにはいきませんから」
「もう戦場じゃないのに」
「いえ。うちの戦場は、毎日が更新中です」

その“戦場”という言葉に、マルグリットは頬をふくらませる。
けれど、目尻には笑みが浮かんでいた。

テーブルの上には、紅茶と焼きたてのパン。
そして、小さな花束。
青いリボンが結ばれたそれは、初めて出会った日の紅茶店を思い出させた。

「今日は記念日でしょう?」
「……何の?」
「あなたが“もう一緒に暮らしてもいいかも”って言った日です」
「そんなこと言ったっけ?」
「言いましたとも。はっきりと。“まあ、考えなくもない”って」

マルグリットは顔を真っ赤にして、カップを持ち上げた。
「覚えてなくていいのに!」
「いいえ、覚えています。何発殴られたかも、ちゃんと」
「数えるなぁぁ!」

笑い声が春の空気に溶けていく。
怒って、笑って、時々泣いて。
けれど、そのすべてがもう“日常”の一部になっていた。

マルグリットは、ふと空を見上げて言った。
「ねぇ、テオドール」
「なんです?」
「“白い結婚だったので、勝手に離婚しました”って、今思うと――」
「はい?」
「……あれ、結構、いい決断だったわ」
「同感です。だってそのおかげで、本当のあなたに出会えた」

風がカーテンを揺らし、花弁がひとひら舞い込む。
マルグリットは笑った。

「次は離婚しないで済むように、がんばりましょうか」

「ええ。でも、もしまた離婚届を書く日が来ても」
「来ても?」
「今度は、二人の名前を並べて書きましょう。――再婚届として」

「はぁ? また言葉遊び?」
「いえ、誓い直しです」

彼の真面目な声に、マルグリットは小さく笑い、
その笑いは、春風のように穏やかに部屋を包んだ。


春の風がやわらかく吹き抜け、庭の花々が揺れていた。
マルグリットは紅茶を入れながら、ソファに座る。
その隣では、金髪の少年がにやにやしながら本を読んでいる。

「ねぇ、お母さま」
「なに?」
「昨日、お父さまが“夫婦は体力勝負だ”って言ってました」
「……あの人、まだ言ってるの!?」

マルグリットが顔を真っ赤にして立ち上がる。
廊下の向こうから、タイミングよくテオドールの声がした。
「マリー、紅茶もう一杯いいですか?」
「自分で入れなさいっ!」

少年は腹を抱えて笑い出した。
「やっぱりうち、仲いいよね」
「どこが!」
「うん、すごく仲いい」

マルグリットはぷいと顔を背けたが、頬はゆるんでいた。
テーブルの上には、いつもの花束。
青いリボンがひらひらと揺れ、窓の外では光がまぶしくこぼれていた。

「……まったく、誰に似たんだか」
「お母さまに決まってる」
「それ、褒めてないでしょ」
「ううん、ちゃんと褒めてるよ」

息子の笑い声が部屋いっぱいに広がる。
マルグリットは思う――
この家には、もう“沈黙の三年”なんて二度と訪れない。

笑って、怒って、騒いで、
それでも隣には、ちゃんと一緒に笑っている人がいる。

それが、彼女の選んだ“再出発”のかたちだった。



たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございました。
完結後もブックマークや★評価、ポイントが入ると、新しい読者さまの目にも留まりやすくなります。
この物語を少しでも気に入っていただけたなら、ぽちっと応援していただけると嬉しいです。

次作は、



✨新作予告✨

『風の魔女がステップをふめば、世界は笑う。
 ――追放令嬢のスローライフ、復讐は、計画的に』

追放された令嬢が、
“森の魔女”と呼ばれながら、
静かな暮らしを取り戻していく物語です。

スローライフ×魔女×爽快な復讐。
また少しだけ笑って、少しだけ泣ける物語になれたら嬉しいです。

今日
より更新開始いたします。
どうぞお楽しみに——。





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