『定年聖女ジェシカの第二の人生 〜冒険者はじめました〜』

夢窓(ゆめまど)

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辺境の村 ― 回り道の提案

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山を下り、辿り着いたのは辺境の小さな村だった。
ひなびた酒場でスープをすすりながら、私は仲間に切り出す。

「ねぇ、正規ルートは全部塞がれてるって言ったわよね、ヨシュア」
「うん……兄上の息がかかってる」
「だったら、辺境で情報を集めて回り道しましょう。
それに──エリオの魔法回路、まだ全部は治してないのよ。ここで少し腰を落ち着けた方がいい」

エリオはスプーンを落としかけて、真っ赤になる。
「ま、また治すのか……?」
「もちろん。絶対良くなるんだから」



ヨシュアへの問い

ふと、私は前から気になっていたことを口にした。
「そういえばヨシュア。なんで私たち、あの砦に向かえたのか、不思議に思わなかった?」

ヨシュアはぱちくりと瞬き、首をかしげる。
「……そういえば。どうして?」

私はにやりと笑って、胸を張った。
「わかるのよ。あなたの臭い」

「えっ!? ぼ、僕そんなに臭う!?」
顔を真っ赤にするヨシュア。

「ち、違う! “気配”よ! 私の力を使えば、仲間の在処がわかるの。聖女だからね」
「………………」
みんなが気まずそうに黙る。

「な、なによ!?」

グラントが肩を揺らして笑いをこらえ、そして一言。
「いや……それなら……」

エリオを見た。
「………………」
私も気づいて、顔を引きつらせる。
「……エリオ! 臭いがするんだ!」

「な、なんだってぇぇぇぇ!?」
エリオが耳まで真っ赤にして飛び上がる。
ヨシュアは「お父さんやっぱり臭いんだ!」と大爆笑。

酒場はその夜、笑いで包まれた。



新しい出会いの予兆

けれど、笑いの裏で村人たちの噂を耳にした。
「この辺境には、昔から奇妙な術を使う隠者がいるらしい」
「腕は確かだが、癖が強くてな……」

(……いいわね。新しい仲間候補、かも)

嵐のような日々の中で、私たちのパーティーは少しずつ“家族”になっていく。
そして、この村からまた新たな冒険が始まろうとしていた。


辺境での出会い ― 気難しい錬金術師

村の外れに、煙突から紫色の煙を吐く小屋があった。
「……怪しい」
「絶対、怪しい」
私とエリオが同時に呟いた。

ドンッ! と爆発音。
「ぎゃああああ!!」
中から飛び出してきたのは、白衣にゴーグルをかけた青年。
髪は爆発で逆立ち、顔も煤だらけ。

「また失敗だぁぁぁ!!!」

私は思わず口にした。
「……あんたも、回路ズレてるんじゃないの?」
「なっ!? 俺のはズレじゃない! “独創”だ!!」
(……絶対、ズレてるわ)



彼の発明品

机の上には、謎の瓶やら歯車やら。
「これは爆縮薬だ! 一滴で壁が吹き飛ぶ!……かもしれない!」
「“かもしれない”って何!?」

「こっちは透明薬! 飲むと体が透ける!……ただし内臓から!」
「やだそんなの!!」

「……変なのばっかり作ってるのね」
「うるさい! 俺は天才なんだ! たまたま失敗してるだけだ!」

その横で、エリオがぽつりと呟いた。
「……なんか、親近感わくな」
「エリオ!? ダメ! そっちにシンパシー感じちゃダメ!」



仲間に?

錬金術師は腕を組んで言った。
「君たち……王家の追手に狙われてるんだろ? 噂は村まで来てる。
なら、俺の知識と発明が役に立つはずだ。行き先によっては、裏道や隠し通路の情報もある」

グラントが顎を掻いた。
「役立つのか、爆発するのか、どっちだ?」
「……両方だ」

(……あー、めんどくさそうだけど。確かに使えるかも)

私はため息をついた。
「仕方ないわね。条件付きで仲間にしてあげる。――ただし、変なのばっかり作らないこと!」
「そ、それは……努力する!」
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