『定年聖女ジェシカの第二の人生 〜冒険者はじめました〜』

夢窓(ゆめまど)

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辺境の森 ― 盗賊の待ち伏せ

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情報収集の帰り道、森の中で盗賊団に囲まれた。
「へっへっへ……辺境でうろつく馬鹿どもはカモだな」

「また盗賊か……懲りないわね」
私がため息をつくと、エリオが緊張で手を震わせながら杖を構えた。
ヨシュアは剣を握りしめ、グラントは嬉々として肩を回す。

そして錬金術師は――
「待て待て待て! 俺の新作を試すチャンスだ!」

どん、と背中の鞄から取り出したのは……どう見ても、ただの瓶。
「こ、これ……大丈夫なの?」
「安心しろ! 今回は“多分”成功する!」
「多分!?」



変な発明、発動!

錬金術師は瓶を投げつけた。
「くらえ! 爆縮薬改!」

ぽふん。
白い煙が一瞬広がり――盗賊たちが一斉にくしゃみし始める。
「へっ……へっ……へーっくしょん!!」
「め、目がしみるっ!」

「……爆縮は?」
「いや、爆縮は失敗したが、代わりに“激烈クシャミ薬”になった」
「どっちでもいいけど、役立ってるわね!?」

盗賊が涙目でよろけた隙に、ヨシュアが剣で disarm(武器をはじき飛ばす)。
エリオは炎で足元を焼き、グラントがまとめて殴り飛ばす。

「やった! 勝った!」
「……本当に勝てちゃった……」



仲間としての承認

戦闘後、私は錬金術師をじっと見つめた。
「……あなた、変なのばっかり作るけど……案外役立つわね」

「だ、だろ!? 俺の発明は時代を先取りしてるんだ!」

ヨシュアがケラケラ笑いながら言った。
「お父さんに似てるよね。すごいけど、どっかずれてる!」
「だ、だから俺は父さんじゃな――」
「――あ、また臭いがするんだ!」
「うわあああああ!!」

森に笑い声が響いた。
こうして、“変な錬金術師”は正式に仲間に加わった。

宿の一室 ― 治療の時間

辺境の宿。食後のひととき。
「さて……エリオ、続きをやるわよ」
私は手を組んで宣言した。
「……ま、またか」
エリオは耳まで真っ赤にして俯いた。

「安心して。今回は少しずつ回路を調整するだけ。ね?」
「……うん」
こくこくと頷く姿は、まるで注射を待つ子供みたいで可愛い。



ハリスもついでに

そこへ、隣で怪しげな瓶を振っていた錬金術師ハリスに目をやる。
「ハリス、あんたも診てあげようか?」
「えっ、俺は別に――」

彼の腕を掴み、軽く魔力を流して確認。
するとすぐにわかった。
「……あら。ここ、折れてるままじゃない。
変に繋がってるわね。回路はズレてないけど、負担がかかってる」

「え、折れて……ってなにが!?」
「魔力回路よ。骨の折れた部分が、無理矢理つながってるの」
「そ、そんな……!」

私は平然と言った。
「一回折って、繋ぎ直そうか」

「えええええええーーーー!?」
部屋の天井が抜けるかと思うほどの悲鳴が響いた。




大騒ぎ

「お母さん怖い!!」とヨシュアがベッドの上で大はしゃぎし、
グラントは腹を抱えて転げ回る。
「ひ、ひぃ……“一回折る”とかホラーだろ……!」

エリオは顔を真っ赤にしながら、
「……でも、ジェシカに任せれば……ちゃんと良くなる」
と小声で呟き、ヨシュアにすぐ「お父さんデレた!」と茶化される始末。

ハリスは涙目で叫んだ。
「俺は絶対イヤだぞ! 再起不能になりそうだ!」

「大丈夫大丈夫。ちゃんと“麻酔”してからにするから」
「いやいやいやいや!!!」



ハリスの治療シーン

「つべこべ言わずに、治療するわよ」
ジェシカは麻酔の魔法をかけ、ハリスを強制的に横たえた。

「え、ちょ、待っ――」
その声は最後まで続かず、ハリスはぐったり。

――バキッ! ボキボキッ!!
骨の折れる音が静かな部屋に響く。
見ていた仲間たちは真っ青になった。



シュールな光景

「ひぃぃぃ!」
エリオは耳をふさぎ、
「オレ、飯食えなくなるぞこれ!」とグラントは顔を背け、

ハリスの腕の皮膚が少し盛り上がり、盛り下がる、
ジェシカは冷静に回路を整えていく。

「大丈夫、これで治るから」
さらりとした声が、逆に怖い。



治療完了

最後に光がふわりと溢れ、音が止んだ。
ジェシカは手を離してにっこり。
「はい、終了。起きたら治ってるから」

振り返ると――
仲間たちは全員、真っ白になって固まっていた。

「……あら、みんな。どうしたの?」
ジェシカの笑顔に、全員が同時に絶叫した。
「お前が一番怖いわーーー!!!」

ハリス目覚めシーン

数時間後。
ハリスがゆっくりと目を開けた。

「……ん? あれ? 俺、生きてる?」

仲間たちは一斉に前のめりになる。
「ハリス! 大丈夫か!?」

彼は首を傾げ、ぽつりと言った。
「……なんかよ、きれいな景色の夢見てたんだわ。
花畑で、天使みたいな子たちが歌ってて……そんで起きた」

仲間たちは顔を見合わせた。
エリオは肩を震わせ、グラントは頭を抱える。
「……夢じゃなくて、現実はバッキバキだったんだよ……」

事情を知らないハリスは、腕を軽く動かして笑った。
「おお、軽い! すげぇなジェシカ!」

その笑顔を前に、仲間たちはただ一言。
「……アンタ、幸せなやつだな……」




こうして宿の一夜は、大騒ぎの治療(?)で更けていった。

「笑いながらも怯えながらも……それでも彼らの心には、“この人なら大丈夫だ”という想いが芽生えていた。」
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