『定年聖女ジェシカの第二の人生 〜冒険者はじめました〜』

夢窓(ゆめまど)

文字の大きさ
13 / 35

ゴシゴシとマッサージ、

しおりを挟む

「ぎゃああ! 痛い痛い! 皮が剥ける!?」
グラントが背中をタワシでゴシゴシされ、悲鳴をあげる。

「あのっ! そ、そこはっ……!」
エリオは顔を真っ赤にして石鹸の泡に埋もれ、髪をざばざば洗われていた。
「あっはっは! お父さん丸洗いされてる!」
ヨシュアが大笑いする。

ヨシュアはケラケラ笑って叫ぶ。
「お父さんたちみんな丸洗いだ! つるつるピカピカだぁ!」
「だから俺は父さんじゃねえぇ!」
 


ハリスはというと、
「待て! そこは押すな! ――ぬぉおお! 効くぅ!」
最初は嫌がっていたが、マッサージがツボに入ったらしく半泣きで声を漏らしていた。

香油と化粧

「仕上げに香油を」
首筋や髪に香油が垂らされ、甘い香りが漂う。
「うっ……くさい! いや、いい匂いだ! でも、俺じゃない!」
グラントが大騒ぎする横で、
「ちょ、ちょっと目に入った! あああ!」
エリオは涙目。

さらに化粧師が現れ、顔に粉や紅をぱたぱた。
「やめろぉ! 俺は戦士だぞ!?」


女性(ジェシカ)の浴場

一方その頃、私は広々とした大理石の浴場で、香草と花びらが浮かぶ湯に浸かっていた。
「はぁ……極楽……」
肩まで温泉のようなお湯に沈み、思わずうっとりする。

「ではお背中を」
メイドたちが柔らかい布で優しく洗ってくれる。
「あら……丁寧ね」

髪には香油がすり込まれ、梳かれるたびに甘い香りが広がった。
(……なんだか、本当に“期限切れ聖女”じゃなく“姫様”になったみたい)

ふっと鏡に映った自分を見て、少し照れてしまう。



化粧と仕上げ

風呂上がり、男性陣は香油を塗られ、無理やり髪を整えられ、
「やだやだ! 俺、もう汗かくのにぃ!」
「こんな靴じゃ走れない!」
と大騒ぎ。

私は淡い化粧を施され、髪を整えられ、
「……ちょっと、見られたくないな」
と顔を赤くした。

それでも仲間たちと向かい合った時、思った。
(みんな、本当に“場違いな冒険者”から“少しは王家を守れる仲間”に見えてきた)


豪華な晩餐

夜。長い食卓には金の燭台が並び、肉も魚も山のように盛られていた。
「ひぃぃ……ナイフとフォークが五本もある……!」
エリオが真っ青になり、手が震える。

「見ろよこの肉! うおぉぉ、でっけぇ! ……あ、丸かじりしちゃダメか」
グラントは目を輝かせて肉を手づかみにしようとし、従者に止められる。

ハリスはワインを口にして、
「んぐっ……! これ薬品の味がするぞ!? いや、ぶどうか!? あ、酸っぱい!」
「頼むから静かに飲んで!」

一方ヨシュアは、涼しい顔でナイフとフォークを使いこなしていた。
「こうだよ。ちゃんと習ったんだ」
「……やっぱり貴族の子なのね」
私は少し寂しそうに笑った。



ダンスの時間

食後、ホールに音楽が響く。
「ではお客様、どうぞご一緒に」
と舞踏会が始まった。

「む、無理だ! 俺、足がもつれる!」
グラントが踏み出すや否や、床にすっ転んでテーブルクロスを引っ張る。

エリオは真っ赤な顔で、
「え、えっと……ステップってどっちから!?」
片足を前に出したまま硬直。

ハリスは、
「だ、だれか数式で説明してくれ! 角度と回転数を!」
「踊りを理論化しないで!!」

そして、涼しい顔のヨシュアが言う。
「こうやるんだよ」
軽やかに舞い、ステップもターンも完璧。周囲の貴婦人たちが「まあ!」と拍手を送る。



取り残される冒険者たち

「……ヨシュア様、素晴らしいです!」
貴族たちが褒めそやす中、私たちはホールの端でただ見守るしかなかった。

グラントは床にへたり込み、エリオは足をつって悶絶し、ハリスは「理論は完璧だったのに!」と頭を抱えている。

私はため息をついて呟いた。
「……うちのパーティー、やっぱり場違いすぎない?」

その時、ヨシュアがにこっと笑って手を差し伸べてきた。
「ジェシカ、一緒に踊ろう」
「……え、えぇぇぇ!?」

場内がざわめき、私は顔が真っ赤になった。





ヨシュアのリードでなんとか踊る私。
ぎこちなくもステップを踏むと、観客から拍手が起こる。

「母さんすげぇぇ!」
「父さんじゃなくて母さん枠なのかよ!」

仲間たちの茶々に、私はもう穴に入りたい気分だった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】竜王に嫁いだら、推しの半竜皇子の継母になりました〜冷酷な夫には興味ありませんが、闇落ち予定の皇子は私が全力で幸せにします!〜

せりもも
恋愛
転生したのは、web小説の世界だった。物語が始まる前の時間、隣国の竜王へ嫁ぐ薄幸の王女、デジレに。 結婚相手である竜王ワッツァは、冷酷非道で人間を蔑む恐ろしい竜人だ。彼はデジレを、半竜(半分竜で半分人間)である息子の養育係としかみていない。けれどその息子バートラフこそ、前世の「わたし」の最オシだった。 この世界のバートラフはまだ5歳。懸命に悪ガキぶっているけど、なんてかわいいの!? 小説のバートラフは、闇落ちして仲間の騎士たちに殺されてしまうけど、そんな未来は、絶対に許さないんだから!  幼いバートラフに対する、愛情いっぱいの子育ての日々が始まる。やがて彼の成竜への通過儀礼を経て、父の竜王は、デジレに対して執着を見せ始める。 ところが、竜と人間の戦争が始まってしまう。おとなになったバートラフは人間側につき、聖女の騎士団に入った。彼は、父の竜王に刃を向けられるのか? そして、転生者デジレに与えられたスキル「プロットを破断する者」を、彼女はどう発動させるのか。

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます

なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。 過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。 魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。 そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。 これはシナリオなのかバグなのか? その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。 【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

処理中です...