15 / 35
国の混乱を目撃ーーひとりの少女
しおりを挟む
馬車を降り、街を歩く。
道端にはやせ細った農民たち、泣き叫ぶ子供。
兵士に追われる男の姿も。
「税を払えないなら牢屋だ!」
さらに、街の巡回兵は皆、見知らぬ言語を話す移民傭兵だった。
「……治安維持の名目で、雇われたんでしょうね」
私はつぶやき、胸が痛くなる。
(国が腐るって、こういうことか……)
⸻
エリオの修行
一方で、叔父が用意した“影の魔法使い”が姿を現した。
長い髪を揺らす、美丈夫。名はレン。
「エリオ殿、魔力回路は整った。次は“魅せる術”を覚えよ」
「……魅せる?」
エリオが首をかしげた瞬間――
「フレイム・ローズ!」
炎の中に薔薇が舞い、散る。
「!?!?」
「戦いは芸術。美しくなければ意味がない」
それ以来、なぜかエリオの魔法にバラが飛ぶようになった。
「……なんで!? なんでバラ出るの!?」
「うふふ、華やかでいいじゃない」
「笑い事じゃないよぉ!」
⸻
グラントの武器強化
グラントは鍛冶場にこもり、武器職人と汗を流した。
「もっと重さを……いや、バランスも欲しい!」
火花が散るたび、目を輝かせてハンマーを振るう。
「こいつがあれば、どんな敵でもぶっ飛ばせる!」
⸻
ハリスの錬金術談義
ハリスは地元の錬金術師と机を挟んで議論していた。
「爆薬は“安定性”こそが命だ!」
「いや、爆発力を追求してこそ真の錬金術だ!」
「お前、仲良くなれるんじゃなくて殴り合うんじゃ!?」
机の上では薬瓶が揺れ、あやうく大爆発寸前。
「やめろおおおお!」
⸻
ジェシカの聖女業
そして私は。
聖魔力で街を遠隔浄化し、病を癒やし、土地を清めて回った。
「……やれやれ。最近の若い聖女は、こんな雑なバリアー張ってるの?」
気づけば口から出ていた。
「あ、いかん……完全にお局モードだわ……」
ヨシュアがケラケラ笑いながら囁く。
「お母さん、もう完全に“元上司”って感じ」
「誰が上司よ!!」
⸻
民の声
街の広場で、老婆がヨシュアの手を握った。
「どうか……国をお救いくださいませ」
ヨシュアは小さな手で握り返す。
「必ず。僕はもう逃げない」
その背を見つめながら思う。
(……国の声は、確かにヨシュアに届いている。この子が旗になる日も、近いのかもしれない)
飢える少女
裏通り。
薄汚れた服の小さな少女が、パン屑を抱えてしゃがみ込んでいた。
それすら、犬に奪われそうになって必死にしがみつく。
「おい、やめろ」
グラントが追い払うと、少女は怯えて身を縮めた。
「ごめんなさい、ごめんなさい……!」
ヨシュアがしゃがみ込み、やさしく声をかける。
「大丈夫だよ。僕らは取り立てに来たんじゃない」
少女は震える声で答えた。
「お母さんが……食べられなくて……だから私が……」
胸が締めつけられた。
(……聖女をやめた私でも、放っておけない)
⸻
病気の家族
少女の案内で家を訪ねると、そこには病に伏した母親と幼い弟がいた。
頬はこけ、咳に苦しみ、薬も手に入らぬ様子だった。
「税が重くて……食べるのがやっとで……」
声にならぬ呻きが部屋に満ちていた。
私は膝をつき、両手を掲げる。
「――癒えよ」
聖光が部屋を包み、母の呼吸が落ち着き、弟の熱がすっと下がる。
「あ……楽に……なった……」
「お母さん!」
少女が涙をこぼしながら抱きつく。
⸻
民の声に触れて
「ありがとう、ありがとう……!」
病床の母が私たちの手を握り、泣きながら繰り返した。
ヨシュアはその様子をじっと見つめ、唇を強く噛んだ。
「……やっぱり、放っておけない。
この国を変えなきゃ、こんな苦しみはなくならないんだ」
エリオが黙って隣に立ち、ハリスは照れ隠しのように鼻を鳴らす。
グラントは拳を握りしめ、
「だったら、俺たちが旗を守ってやる」
と力強く言った。
私は微笑んだ。
「……そうね。聖女の定年だなんて言ってる場合じゃないか」
⸻
次への布石
少女が去り際に言った。
「……お母さんを助けてくれてありがとう。
でもね、王宮に閉じ込められてる“かわいそうなお姫さま”もいるんだって。
その人も、助けてあげて……」
私たちは顔を見合わせた。
(……ヨシュアのお母さんのことね)
こうして、離宮潜入の決意が、胸の奥で固まっていった。
道端にはやせ細った農民たち、泣き叫ぶ子供。
兵士に追われる男の姿も。
「税を払えないなら牢屋だ!」
さらに、街の巡回兵は皆、見知らぬ言語を話す移民傭兵だった。
「……治安維持の名目で、雇われたんでしょうね」
私はつぶやき、胸が痛くなる。
(国が腐るって、こういうことか……)
⸻
エリオの修行
一方で、叔父が用意した“影の魔法使い”が姿を現した。
長い髪を揺らす、美丈夫。名はレン。
「エリオ殿、魔力回路は整った。次は“魅せる術”を覚えよ」
「……魅せる?」
エリオが首をかしげた瞬間――
「フレイム・ローズ!」
炎の中に薔薇が舞い、散る。
「!?!?」
「戦いは芸術。美しくなければ意味がない」
それ以来、なぜかエリオの魔法にバラが飛ぶようになった。
「……なんで!? なんでバラ出るの!?」
「うふふ、華やかでいいじゃない」
「笑い事じゃないよぉ!」
⸻
グラントの武器強化
グラントは鍛冶場にこもり、武器職人と汗を流した。
「もっと重さを……いや、バランスも欲しい!」
火花が散るたび、目を輝かせてハンマーを振るう。
「こいつがあれば、どんな敵でもぶっ飛ばせる!」
⸻
ハリスの錬金術談義
ハリスは地元の錬金術師と机を挟んで議論していた。
「爆薬は“安定性”こそが命だ!」
「いや、爆発力を追求してこそ真の錬金術だ!」
「お前、仲良くなれるんじゃなくて殴り合うんじゃ!?」
机の上では薬瓶が揺れ、あやうく大爆発寸前。
「やめろおおおお!」
⸻
ジェシカの聖女業
そして私は。
聖魔力で街を遠隔浄化し、病を癒やし、土地を清めて回った。
「……やれやれ。最近の若い聖女は、こんな雑なバリアー張ってるの?」
気づけば口から出ていた。
「あ、いかん……完全にお局モードだわ……」
ヨシュアがケラケラ笑いながら囁く。
「お母さん、もう完全に“元上司”って感じ」
「誰が上司よ!!」
⸻
民の声
街の広場で、老婆がヨシュアの手を握った。
「どうか……国をお救いくださいませ」
ヨシュアは小さな手で握り返す。
「必ず。僕はもう逃げない」
その背を見つめながら思う。
(……国の声は、確かにヨシュアに届いている。この子が旗になる日も、近いのかもしれない)
飢える少女
裏通り。
薄汚れた服の小さな少女が、パン屑を抱えてしゃがみ込んでいた。
それすら、犬に奪われそうになって必死にしがみつく。
「おい、やめろ」
グラントが追い払うと、少女は怯えて身を縮めた。
「ごめんなさい、ごめんなさい……!」
ヨシュアがしゃがみ込み、やさしく声をかける。
「大丈夫だよ。僕らは取り立てに来たんじゃない」
少女は震える声で答えた。
「お母さんが……食べられなくて……だから私が……」
胸が締めつけられた。
(……聖女をやめた私でも、放っておけない)
⸻
病気の家族
少女の案内で家を訪ねると、そこには病に伏した母親と幼い弟がいた。
頬はこけ、咳に苦しみ、薬も手に入らぬ様子だった。
「税が重くて……食べるのがやっとで……」
声にならぬ呻きが部屋に満ちていた。
私は膝をつき、両手を掲げる。
「――癒えよ」
聖光が部屋を包み、母の呼吸が落ち着き、弟の熱がすっと下がる。
「あ……楽に……なった……」
「お母さん!」
少女が涙をこぼしながら抱きつく。
⸻
民の声に触れて
「ありがとう、ありがとう……!」
病床の母が私たちの手を握り、泣きながら繰り返した。
ヨシュアはその様子をじっと見つめ、唇を強く噛んだ。
「……やっぱり、放っておけない。
この国を変えなきゃ、こんな苦しみはなくならないんだ」
エリオが黙って隣に立ち、ハリスは照れ隠しのように鼻を鳴らす。
グラントは拳を握りしめ、
「だったら、俺たちが旗を守ってやる」
と力強く言った。
私は微笑んだ。
「……そうね。聖女の定年だなんて言ってる場合じゃないか」
⸻
次への布石
少女が去り際に言った。
「……お母さんを助けてくれてありがとう。
でもね、王宮に閉じ込められてる“かわいそうなお姫さま”もいるんだって。
その人も、助けてあげて……」
私たちは顔を見合わせた。
(……ヨシュアのお母さんのことね)
こうして、離宮潜入の決意が、胸の奥で固まっていった。
3
あなたにおすすめの小説
【完結】竜王に嫁いだら、推しの半竜皇子の継母になりました〜冷酷な夫には興味ありませんが、闇落ち予定の皇子は私が全力で幸せにします!〜
せりもも
恋愛
転生したのは、web小説の世界だった。物語が始まる前の時間、隣国の竜王へ嫁ぐ薄幸の王女、デジレに。
結婚相手である竜王ワッツァは、冷酷非道で人間を蔑む恐ろしい竜人だ。彼はデジレを、半竜(半分竜で半分人間)である息子の養育係としかみていない。けれどその息子バートラフこそ、前世の「わたし」の最オシだった。
この世界のバートラフはまだ5歳。懸命に悪ガキぶっているけど、なんてかわいいの!? 小説のバートラフは、闇落ちして仲間の騎士たちに殺されてしまうけど、そんな未来は、絶対に許さないんだから!
幼いバートラフに対する、愛情いっぱいの子育ての日々が始まる。やがて彼の成竜への通過儀礼を経て、父の竜王は、デジレに対して執着を見せ始める。
ところが、竜と人間の戦争が始まってしまう。おとなになったバートラフは人間側につき、聖女の騎士団に入った。彼は、父の竜王に刃を向けられるのか? そして、転生者デジレに与えられたスキル「プロットを破断する者」を、彼女はどう発動させるのか。
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します
スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」
眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。
隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。
エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。
しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。
彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。
「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」
裏切りへのカウントダウンが今、始まる。
スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!
転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~
ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。
異世界転生しちゃいました。
そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど
チート無いみたいだけど?
おばあちゃんよく分かんないわぁ。
頭は老人 体は子供
乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。
当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。
訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。
おばあちゃん奮闘記です。
果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか?
[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
いよいよゲームスタートです!
[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。
おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。
【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます
なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。
過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。
魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。
そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。
これはシナリオなのかバグなのか?
その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。
【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】
異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる