『定年聖女ジェシカの第二の人生 〜冒険者はじめました〜』

夢窓(ゆめまど)

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貧民街の炊き出し

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薄暗い路地に、大きな鍋を据えた。
「今日は特別だぞー! あったかいスープだ!」
グラントが鍋をかき回し、子どもたちが歓声をあげて列を作る。

ヨシュアと少女が、手際よくスープをよそい、パンをちぎって配っていく。
「はい、熱いから気をつけてね」
小さな声が返る。
「……ありがとう、お兄ちゃん」

エリオは火加減を見ながら、
「……バラはいらない! なんで炎にバラが混じるんだ!」
と必死に魔法を抑えていた。
「華やかでいいじゃない」
「いや、スープが香ばしくなるのは嫌なんだよ!」



ジェシカのさりげない癒し

配膳の合間、私は列に並ぶ人々の顔を観察した。
咳き込み、顔色の悪い者、痩せすぎた者。
(……このままじゃ冬は越せないわね)

そっと手を差し伸べ、肩に触れる。
「……大丈夫。次に熱が出ても軽く済むはず」
光がきらりと走るが、気づく者はいない。

「わあ、なんか体が軽くなった!」
「気のせいじゃない? でも、よかったね!」
子供たちは無邪気に笑った。

(ふふ……バレないように、こっそりね。
なんか私、完全に裏方のお局モードだわ……)



ハリスの発明(小ネタ)

一方、ハリスは勝手に「スープ増量剤」と称した粉を投入しようとした。
「ちょっと待って! それ爆発しないでしょうね!?」
「爆発はしない! ……多分」

結果、スープはやたらとトロみがつき、
「なんか……お粥みたいだな!」
子供たちは大喜びで完食していた。



民の声を知る

空になった鍋の前で、老婆がヨシュアに頭を下げた。
「殿下……いいえ、お兄ちゃん。こんなにあったかいものを、ありがとう」

ヨシュアは一瞬驚いた顔をして、すぐに笑った。
「僕は、みんなと一緒に食べたかっただけだよ」

そのやりとりを見て、私は思った。
(……民と同じ場所に座って、同じものを食べる王子。
きっと、この国には“こういう旗”が必要なんだ)


計画を立てる

「離宮に突入する前に、まずは状況を把握すべきです」
叔父の影である魔法使いレンが冷静に告げる。
「特に、騎士団の行方を確かめねば」

私はうなずいた。
「確かに……王家を守るはずの騎士団が姿を見せないのは不自然だわ」

グラントが腕を組む。
「街中で見たのは移民傭兵ばっかりだった。騎士団はどこに消えたんだ?」



牢獄の噂

調べを進めると、噂が耳に入った。
「騎士団の連中は、牢にぶち込まれたらしいぜ」
「兄派に逆らったやつは皆そうだ。命があるだけマシだろうな」

エリオが震える声で言った。
「……じゃあ、騎士団は、まだ生きてる?」

レンが頷く。
「生かしたまま閉じ込め、利用するつもりなのだろう」
「利用?」
「“正妃の子”が現れた時、人質にできる。あるいは処刑して見せしめにする」

ヨシュアの拳が震えた。
「……そんなの、絶対に許せない!」



潜入の決意

私は息を整えた。
「じゃあ次の目的地は決まりね。
騎士団を助け出して、味方に引き入れる」

グラントが大笑いする。
「いいじゃねぇか! “仲間増やし”は冒険者の基本だ!」

ハリスは「牢の錠前か……ふむ、爆薬の出番だな!」と目を輝かせ、
「いや、静かにやれ!」と私がすかさず突っ込んだ。

エリオは不安げに呟いた。
「……でも、もし騎士団が僕らを信じなかったら?」

ヨシュアははっきりと答えた。
「僕が正妃の子だと証明する。そのためにでも、母を助けなきゃいけない」
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