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『ジニー、森暮らしにも慣れてきた頃──“お札が動いた”!? 恐怖の侵入者は…』
しおりを挟む夜。
焚き火を囲みながら夕飯を食べていた3人。
「ねえ、今日の焼きたてパン、美味しくない? ハーブバターが最高」
「魔法のオーブンって便利よね。火力調整も神聖魔法でできるし」
「ジニーは、そろそろ森暮らし適応したんじゃない?」
そんなときだった。
──ビリ……ッ
「……え?」
マロンが振り返った先で、
森の結界札のひとつが、ゆっくりと剥がれていた。
「いや、ないないない、なんか入ってきてるっぽい!?」
「誰!? 王家の刺客!?」
「ってか、よりによってこのタイミングで!? ジニー、ラップ巻いてたよね?パン発酵中なんだけど!!」
⸻
身構えた3人が木陰に視線を向けると、
そこに立っていたのは……
「……こんばんは」
神殿の侍女服を着た、ぽやぽや系の少女だった。
「え、誰?」
「私は……ララといいます。元・神殿でお仕えしてました」
「神殿関係者!? うちらの逃亡バレた!?」
「いえ、私も……逃げてきたんです。
だって、お祈りしてたら“王太子のためにほぼ裸で踊れ”って言われたんです」
「それは、逃げて正解!!」
⸻
泉に飛び込んだララ
王子の甘ったるい声。
「ララ。お前は聖女だ。見事な舞姫だ。その柔らかな舞いをもっと人々に見せるために──そうだな、着衣を減らしてみるのはどうだ?」
「……え?」
ララの頭はぽやぽや。
だけどその言葉だけは、ハッキリと理解できた。
(え、なにそれ。聖女って、そういう……お仕事?)
おっとりしていて怒ることも少ないララだったが、
その瞬間だけは、胸の奥で冷たいスイッチがカチリと入った。
──そして、夜。
ララは宮廷を抜け出し、泉のほとりに立った。
「ぽちゃん……てしたら、もう楽になれるかな」
そう呟いて、どぼーん!
森の仲間たちの迎え入れ
バシャア!
水面を破って現れたララを見て、焚き火のまわりのマロンたちは一斉に目を見張った。
「……あれ? 泉からなんか出た?」
「また新人さんね」
「今度は誰だ?」
濡れねずみのララは、ぽやぽや顔のまま立ち上がり、
「えっと……わたし……宮廷で舞わされそうになって……服減らされそうで……やっぱ無理って思って……」
マロンがワイン片手に爆笑。
「ちょっ、それもう聖女業務じゃなくてキャバ嬢案件じゃん! 逃げて正解!」
アデルはタオルを投げ渡し、
「泉の神さまも、さすがに同情したんでしょうね」
マルグリットも肩を叩いて、
「こっち来てよかったのよ。さ、今夜は一緒に飲みましょ」
ジニーはニヤリ。
「ようこそ、脱落者の楽園へ♡」
新しい役割へ
焚き火の前でスープをすすりながら、ララはぼんやり言った。
「……踊るのは好き。でも、見世物じゃなくて、誰かを癒す舞いがしたいの」
マロンがうなずく。
「じゃあ、森の祭りで舞えば? 祈りの舞いじゃなくて、“祝福の舞”」
アデルが笑う。
「庶民が初めて見る“虹の祝福”、きっと泣くぞ」
ララの瞳に、ぽやっと光が宿った。
「……うん、それがいいかも……」
こうしてぽやぽや聖女ララも、泉を越えて“再スタート”の仲間入りを果たした。
森の祭りとララの初舞
森の奥。アデルが作った特別ステージ。
結界で守られた広場に、灯籠の明かりがずらりと並んだ。
こっそり知らされた、お祭りの案内状、
屋台からは香ばしい匂い、音楽隊が奏でる笛と太鼓の音、そして森に住む仲間たちのざわめき。
「今日は特別だぞー! ぽやぽや聖女ララの、初・祝福の舞!!」
マロンの声が響くと、人々の期待が一気に高まる。
◆
ララは舞台の上に立った。
手には、森で摘んだばかりの白い花。
髪はふわりと結い上げ、薄い緑のドレスは泉の水面のように揺れる。
「……おどるの、ちょっとドキドキする」
ぽやぽやした声に、観客から笑いが漏れる。
だが、太鼓が「ドン」と鳴ると、ララの身体がすっと動き出した。
その舞は、柔らかく、ふわりふわりと風にのるよう。
彼女が一歩踏み出すたびに、花びらが舞い、虹色の光がふわっと広がる。
「わあっ……!」
「虹だ……! 森の空に、ほんとうに虹が!」
庶民たちは目を丸くし、子供たちは手を伸ばして歓声を上げた。
◆
アデルは腕を組んで見守り、
「……彼女の舞、神殿の祈りよりずっと効力がある気がするな」とつぶやく。
マロンはワイン片手に笑う。
「でしょ? “ぽやぽや”って、じつは最強なんだから」
マルグリットもにっこり。
「これで街の人たちも元気になりますわね。あの王都の聖女祭りより、よほど価値がありますわ」
ジニーは串焼きをかじりながら、
「ほら、これがほんとの祝福よ。愛とごちそうと、虹!」
◆
舞の終わり。
ララが深く頭を下げた瞬間──
虹の光が森全体を包み、焚き火も灯籠も、ひときわ鮮やかに輝いた。
「……あったかい」
ララは胸に手を当て、にっこり微笑んだ。
その笑顔に、森の人々は一斉に拍手を送り、祭りは大きな歓声と音楽に包まれていった。
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