13 / 21
その後「美と筋肉とダンスの余韻──入門希望、殺到中!
しおりを挟むフェアウェルパーティから数日。
学園は、いつになく浮き立っていた。
廊下ではあちこちで──
「ねえ、見た? あの二人のダンス」
「アネット様のドレスの裾がふわって広がった瞬間、息が止まったよ」
「しかもレオン様のあの筋肉で、あの華麗なリフト……っ!」
「実は筋肉レッスン、一般にも門戸開かれたんだって!」
「マジで!? 申し込むしかないでしょ!」
と、まるで芸能人を追うような熱気。
*
昼休み、ふたりが中庭に歩いていくと、どこからともなく人だかりができていた。
「レオン様、アネット様っ!」
「僕たち、入門したいですっ!」
「初心者でも大丈夫ですか!?」
「わ、わっ……落ち着いてくださいっ」
アネットがたじろいだ。
レオンも戸惑いながらも笑う。
「もちろん、誰でも歓迎します。ただ、筋肉レッスンは地味にきついぞ?」
「でもその先に……あんな風に踊れるなら、がんばります!」
「私は体力ないけど、体幹鍛えたら変われますか!?」
アネットがそっと笑みを浮かべる。
「私も最初は、まったく踊れませんでした。でも……“変わりたい”って思ったら、始められます」
「うおおお!入ります!」「俺も!」「わたしも!」
「ようこそ、“筋肉と美の道”へ……ふふっ」
レオンがやや照れながら言うと、また歓声が上がる。
*
「……なんだか、私たち有名人になったみたいね」
部屋に戻ってきて、アネットがぼそりとつぶやく。
「君ががんばったから、みんなも踏み出そうとしてるんだ。お互い誇っていいよ」
「……そうかしら」
アネットは、レオンの顔を見つめながらそっとつぶやく。
「なら、みんなが“続けたい”って思えるように……私たち、もっともっと踊れるようにならなきゃね」
「もちろん。そのためにも、地獄の自主練、今夜も決行だな」
「……さすがに今日は休みたいわ」
ふたりで笑う。
そんな、余韻と筋肉痛が続く日々。
だけど、それすら愛おしいと思えるのは――
きっと、そばに並んで歩く相手が、特別だから。
場所は学園のティーラウンジ。午後の陽ざしがカップに反射して、きらきらと美しい。
セラ中尉がストレートティーをひと口飲んで、ふっと笑った。
「そういえば……アネット様とレオン様、ワルツのあの足捌き。まさに“体幹の勝利”だったわね」
アネット(照れ笑い)
「実は……内腿、翌日すごい筋肉痛で。筋肉って、優雅の裏にあるんですね」
レオン(真面目顔)
「恋も筋肉も、一朝一夕では手に入りませんから」
セラ(うなずきながら)
「そのとおり。だから私は、“恋愛・筋トレ・作法”は同時進行で鍛えるべきだと思ってるの」
アネット「“恋愛と筋トレ”はわかりますけど……“作法”まで?」
セラ(涼しい顔で)
「ドレスを着て微笑むのに腹筋が必要。
お茶をこぼさず立ち上がるのに、太腿が必要。
立ち姿で“負けない女”を演出するには背筋が必要。──つまり、筋肉は美の基礎」
レオン「その理論でいくと、僕の“アネットに近づく腕筋”は正しい育成ですね」
アネット「……え?」
セラ(ニヤッと)
「いい返しね、レオン様。恋愛に必要なのは、受け身じゃなくて“攻めの筋力”」
アネット(真っ赤)
「ちょっ、セラ中尉っ!? 攻めとかそういうのじゃなくて!?」
セラ(にっこり)
「可愛い反応ね。で、今夜のレッスンも筋トレで?」
アネット「……うぅ、ストレッチからお願いします」
レオン「僕は、アネットのエスコート用の腕筋を鍛えておきます」
セラ「その調子。愛も筋肉も、裏切らないから」
7
あなたにおすすめの小説
〖完結〗終着駅のパッセージ
苺迷音
恋愛
分厚い眼鏡と、ひっつめた髪を毛糸帽で覆う女性・カレン。
彼女はとある想いを胸に北へ向かう蒸気機関車に乗っていた。
王都から離れてゆく車窓を眺めながら、カレンは振り返る。
夫と婚姻してから三年という長い時間。
その間に夫が帰宅したのは数えるほどだった。
※ご覧いただけましたらとても嬉しいです。よろしくお願いいたします。
新たな物語はあなたと共に
mahiro
恋愛
婚約破棄と共に断罪を言い渡され、私は18歳という若さでこの世を去った筈だったのに、目を覚ますと私の婚約者を奪った女に成り代わっていた。
何故こんなことになったのか、これは何の罰なのかと思いながら今まで味わったことのない平民の生活を送ることとなった。
それから数年が経過し、特待生として以前通っていた学園へと入学が決まった。
そこには過去存在していた私の姿と私を断罪した婚約者の姿があったのだった。
辺境伯夫人は領地を紡ぐ
やまだごんた
恋愛
王命によりヴァルデン辺境伯に嫁ぐことになった、前ベルンシュタイン公爵令嬢のマルグリット。
しかし、彼女を待っていたのは60年にも及ぶ戦争で荒廃し、冬を越す薪すら足りない現実だった。
物資も人手も足りない中、マルグリットは領地の立て直しに乗り出す。
戦しか知らなかったと自省する夫と向き合いながら、少しずつ築かれていく夫婦の距離。
これは、1人の女性が領地を紡ぎ、夫と共に未来を作る「内政×溺愛」の物語です。
全50話の予定です
※表紙はイメージです
※アルファポリス先行公開(なろうにも転載予定です)
[異世界恋愛短編集]私のせいではありません。諦めて、本音トークごと私を受け入れてください
石河 翠
恋愛
公爵令嬢レイラは、王太子の婚約者である。しかし王太子は男爵令嬢にうつつをぬかして、彼女のことを「悪役令嬢」と敵視する。さらに妃教育という名目で離宮に幽閉されてしまった。
面倒な仕事を王太子から押し付けられたレイラは、やがて王族をはじめとする国の要人たちから誰にも言えない愚痴や秘密を打ち明けられるようになる。
そんなレイラの唯一の楽しみは、離宮の庭にある東屋でお茶をすること。ある時からお茶の時間に雨が降ると、顔馴染みの文官が雨宿りにやってくるようになって……。
どんな理不尽にも静かに耐えていたヒロインと、そんなヒロインの笑顔を見るためならどんな努力も惜しまないヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
「お望み通り、悪役令嬢とやらになりましたわ。ご満足いただけたかしら?」、その他5篇の異世界恋愛短編集です。
この作品は、他サイトにも投稿しております。表紙は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:32749945)をおかりしております。
平手打ちされたので、婚約破棄宣言に拳でお答えしました
Megumi
恋愛
婚約破棄を告げられ、婚約者に平手打ちされた——その瞬間。
伯爵令嬢イヴの拳が炸裂した。
理不尽に耐える淑女の時代は、もう終わり。
これは“我慢しない令嬢”が、これまでの常識を覆す話。
公爵令嬢は運命の相手を間違える
あおくん
恋愛
エリーナ公爵令嬢は、幼い頃に決められた婚約者であるアルベルト王子殿下と仲睦まじく過ごしていた。
だが、学園へ通うようになるとアルベルト王子に一人の令嬢が近づくようになる。
アルベルト王子を誑し込もうとする令嬢と、そんな令嬢を許すアルベルト王子にエリーナは自分の心が離れていくのを感じた。
だがエリーナは既に次期王妃の座が確約している状態。
今更婚約を解消することなど出来るはずもなく、そんなエリーナは女に現を抜かすアルベルト王子の代わりに帝王学を学び始める。
そんなエリーナの前に一人の男性が現れた。
そんな感じのお話です。
閉じ込められた未亡人は、当主となった義息と契約する。
黒蜜きな粉
恋愛
借金の肩代わりとして後妻に入った私は、
妻と呼ばれながら屋敷の離れで「いないもの」として暮らしていた。
ある雪の日、夫が事故死したと告げられる。
だが、葬儀に出ることすら許されず、私は部屋に閉じ込められた。
新たに当主となった継子は言う。
外へ出れば君は利用され奪われる、と。
それが保護であり、同時に支配なのだと理解したとき、
私はその庇護を条件付きの契約に変えることを選ぶ。
短いお話です。
醜女の私と政略結婚した旦那様の様子がおかしい
サトウミ
恋愛
この国一番の醜女である私と結婚したイバン様。眉目秀麗で数多の女性と浮き名を流した彼は、不祥事を起こしたせいで私なんかと結婚することになってしまった。それでも真面目な彼は、必死に私を愛そうと努力してくださる。
──無駄な努力だ。
こんな色白で目と胸の大きい女を、愛せるはずがない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる