『恋は、鏡の中のわたしを変えていく』あなたと踊るタンゴ

夢窓(ゆめまど)

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王宮からの招待状、薔薇の誓い

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ある晴れた午後、学院の受付から呼び出された私たちの元に届いたのは、
金の封蝋が施された、ひときわ重厚な封筒だった。

 

「……これって」

「王宮からの……正式な招待状、です」

受付嬢が、目を見開きながらも丁寧に説明してくれた。

 

内容はこうだった。
先日のフェアウェルパーティにて披露した私たちの模範ダンスが、王族関係者の目に留まった。
“新時代の若者たち”として、春の晩餐会での舞踏にぜひ参加してほしい――と。

 

「……わたくしたちが、王宮で踊るなんて……」

「……夢のようですね」

 

言葉を交わしながらも、胸の奥がじんわりと熱くなる。

これはもう、生半可な気持ちでは臨めない。
私たちは、真剣に、そして少しだけ浮き足立ちながら、準備を始めることにした。

 

──まずは、ドレス。

 

学園近くの仕立て屋で、レオン様と一緒に見たそのドレスは、
まるで“情熱の薔薇”のような鮮やかな赤。
裾にかけて黒へとグラデーションが溶け込む、美しくも力強い一着だった。

 

「……これにします」

私は迷わず決めた。ただ踊るためのドレスではなく、レオン様と踊るためのドレス。



 

「とても、よくお似合いです。……アネット様の瞳と同じくらい、強くて綺麗な色ですね」

レオン様の言葉に、思わず頬が熱くなる。

 

そして髪飾りは、黒髪に映える薔薇の花の飾りを選んだ。
髪をゆるく巻いて、左耳の上に添えるようにする。まるで――告げられぬ想いを隠すように。

 

ドレス合わせの帰り道。

レオン様が、ふと足を止めて、手にした包みを差し出してきた。

 

「……これ、良かったら受け取ってください」

「……?」

 

中に入っていたのは、美しいエナメルのダンスシューズだった。
赤黒のドレスにぴたりと合う、繊細な装飾のついた特別な靴。

 

「騎士団に入り、ようやく初任給が出ました。
本当は、全部……お贈りしたいくらいなんですけど、まずは靴だけでも」

「……レオン様」

 

「いつか、ドレスも、髪飾りも、全部……僕が贈らせてください。
あなたがどこにいても、“一番美しく、誇らしいあなた”でいられるように」

 

胸の奥が、ぎゅっと締めつけられた。

 

「……ありがとう。すごく、すごく嬉しいですわ」

私は、涙が出ないように、笑ってみせた。
だけど、たぶん顔は、真っ赤だったと思う。

 

そして私は、そっと靴を抱きしめる。

まるでその靴が、レオン様の真心そのもののようで、離したくなかった。



 

──次は王宮で踊る。

でも、ただのお披露目ではない。
私たちは、そこに“ふたりで立つ”ために行くのだから。

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