『転生したら悪役令嬢、前世の娘がヒロインでした』

夢窓(ゆめまど)

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ブチギレヒロイン令嬢、婚約準備が進んでるって誰が決めたの!?(逃げろ、今だ)

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(どうぞどうぞ、王子持ってってください)

 

講堂の空気が、凍りついた。

ジョアンナ・スミス嬢への、
王子のまさかの告白――
からの、無言の後退りと逃走未遂。

その場にいた誰もが動けないなか、
ゆっくりと歩み出たのは──

真ヒロインポジションだった、
あの男爵令嬢。キャロライン

 

美しいブロンド。
淑やかな微笑み。
本来なら、この舞台で王子と並ぶべきヒロイン。

 

ヒロイン彼女は、
ふわりと笑って、こう言った。

 

「──どうぞどうぞ、王子さま、あなたが持ってってくださいな」

 

ざわっ……!!!!

 

「えっ……えええ!?」
「持ってってって……何!?」
「王子の方が“捨てられるの?持っていかれる”の!?」

ジョアンナ頭の中がパニック! 

しかしキャロラインは止まらない。
笑顔のまま、華麗に言い放った。

 
キャロライン
「王子の彼女、辞退します♡」
えーっと、今、彼女じゃないですよね。
なんで勝手に、彼女辞退するんですか?
 
キャロライン
「だって、“ヒロイン間違える男”なんて、
将来国を背負えるとは思えませんもの」

ジョアンナ
「それは同意しますけど、あなたも、やっぱり前世持ち?」

講堂、爆発。なんのことやら、
気づいたものは、前世持ちのモブ達だけ、
あああ、、、あの人も、あの人も前世持ちのモブ!私も、モブになりたい。
隠れモブがあぶり出された?
 

◆ ◆ ◆

 
キャロライン
「ちょっと優しくされたら惚れるとか、チョロすぎでしょ」

「バラ園も図書室も、全部“予定と違う相手”とフラグ建ててんじゃないのよ」

「そのうち、落とし物拾ってくれた猫にも恋するんじゃない?」

 

「はい、そんなチョロ王子、辞退しまーーす♡♡♡」

 

王子「…………(蒼白)」

メリンダさま「(紅茶ずずず)」

ジョアンナ「やめてぇぇぇえ!この修羅場、私関係なくない、耐えられないぃぃ!!」

 

◆ ◆ ◆

 

そして彼女は、最後に言った。

「でも、ちょっとだけ羨ましいわ。
ジョアンナさまは、誰にも演技しないで“そこ”に立ってるだけで愛されるんですものね」

ジョアンナ
「……?」

キャロライン
「私はずっと、シナリオのために“ヒロイン”を演じてきた。
それが馬鹿らしくなっただけです」

ジョアンナ
「嫌ァァァ、戻ってきて、仕事して!」



 
キャロライン
「じゃあ、本気で幸せになってくださーい♡♡♡」と軽やかにヒロイン退場

 

颯爽と踵を返して去っていくヒロインの彼女の背中は、
恋を失った令嬢というより、
自由を手にした者の背中だった。


メリンダ
「──婚約手続き、着々と進んでますわよ♡」

ジョアンナ
「は?」

メリンダ
「お父様にも書類は提出済み。
あとはジョアンナちゃんが“はい”って言えば完成ね♡」

ジョアンナ
「ちょっと待って!? え、私、聞かれてないんですけど!?!?!?」

メリンダ
「何を言ってるの? 私はずっと聞いてたじゃないの。
“やめてー”って。
でもあれ、乙女の照れ隠しでしょ?」

ジョアンナ
「違う!!本気の悲鳴です!!!」

 

◆ ◆ ◆

 

メリンダさまの机の上には──

・婚約届(提出予定日記入済み)
・ドレス試着リスト
・婚礼料理案(もちろんメインは煮物)
・式場候補(星降る教会 or 煮物の香り漂う庭園)

 
メリンダ
「式はやっぱり和風ドレスが似合う場所がいいわよねぇ♡」

ジョアンナ
「和風ドレスって何!? うちの家系、味噌と醤油で婚約決めるの!?」

ジョアンナ
「尚美さん、あの前世のドグサレ男よりずっと良い相手を用意したのよ♡
王子なんて二度と来ないわよ!? せっかくなのに!」 

ジョアンナ
「だから逃げます!!逃げさせていただきます!!」前世のドグサレって、私のダーリンだけど、母ちゃん、認めてくれなかったわ、死ぬ最後まで、
いい人だったのよ。ちょっと金遣い荒かったけど、貢いだら優しくしてくれたし、最後は、あれ?なんで死んだのかなぁ。

 

◆ ◆ ◆

 

ということで私は今、
夜中にリュックを背負って、学園の裏門にいる。
ジョアンナ
「大丈夫……バレてない……ここで馬車でも通れば……」

カイルド
「──お困りのようですね、お嬢さん」

 

ふいに現れた男の声に振り返ると、
そこには、整った顔と無骨な騎士服を身にまとった青年がいた。

 
ジョアンナ
「誰ですか!? 追っ手ですか!? メリンダさまの回し者ですか!?」

「いや……違う。
俺はカイルド・ブランシュ。王都騎士団の補給担当」

ジョアンナ
「補給!? 補給って……煮物の配達じゃないですよね!?」 

カイルド
「違うけど……煮物の匂いで気づいた」

ジョアンナ
「逃げてるのに!?!? そんな追跡能力いらないからぁぁ!!」

 

◆ ◆ ◆

 
カイルド
「で……逃げたいんだな?」

ジョアンナ
「…………はい」

カイルド
「王子から?」

ジョアンナ
「うん……あと“母”から……」

カイルド
「よし、ならこっちだ」

ジョアンナ
「え、連れてってくれるんですか?」

カイルド
「逃げたい女子を放っておけって教育は受けてないんでな」

 

その背中が、やけに頼もしく見えた。
そうして私は、メリンダさまの婚約計画をぶっちぎり、彼の馬で逃走を始めたのだった──!

 

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