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追っ手の気配!?この人は俺が守る、って言われました(しんだ)
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市場での再会と救出劇
朝の市場。
人のざわめきの中、私は聞いてしまった。
通行人A「……“王子の花嫁候補”が逃げたって、本当か?」
通行人B「今ごろ騎士団が追ってるらしいぜ」
通行人C「悪役令嬢も断罪されるしな。まずは、その“モブ”の番だろ?」
──モブって、私のことだよね。
ジョアンナ(心の声)「……ちょ、こわっ。モブって言った今、絶対私のことだよね!?」
煮物の具材を落としかける。
手が震える。
心臓が、どくどく鳴っている。
いや、鳴らないで。今だけは静かにして。
こっそり市場を出ようとして──
背後に「ぞくっ」とする気配を感じた。
──鋭い視線。
──一歩、近づく靴音。
──剣の柄に手をかける気配。
(え、やばい。追っ手!? 煮物の香りでバレた!?)
???「その手、離してもらえるか」
低く、凛とした声。
私の心臓が、別の意味で止まった。
振り向くと、カイルドさまが立っていた。
陽の光を背にして、影が長く伸びている。
カイルド「この人に、指一本でも触れてみろ」
カイルド「──俺が、相手になる」
……しんだ。
ジョアンナ「(はい今、心臓止まりました。物理的に。)」
声が低くて優しくて、でも容赦なくて、
背中が広くて、
かっこよすぎて、
乙女ゲームで見たことある“守られルート”ってこれだ!!!
いや、でもこれ……本物。
◆ ◆ ◆
追っ手は数人。
王子直轄の紋章入りの制服。
でも、カイルドさまは一歩も引かない。
騎士団員「貴族の命令だ! 王命でもある!」
カイルド「王命かどうか知らないがな」
カイルド「俺は“目の前で震えてる人”を、
何も言わずに置いていく教育は受けてない」
ジョアンナ(心の声)「かっこよすぎてもう無理。呼吸できない。煮物しか喉通らない……」
騎士団員「彼女は王子の婚約者候補だぞ!」
カイルド「“候補”だろうがなんだろうが、
本人が“逃げたい”って言ってるんだ。
それ以上は──俺の仕事だ」
ジョアンナ(涙目)「ぐっ……泣く……顔上げられない……」
でも、背中が広くてあったかい。
この人、ほんとに、守ってくれてる。
──ああ、やっぱり堕ちてたんだ、私。
◆ ◆ ◆
結局、追っ手は引き返した。
静かになった市場。
私はそっと息を吐いた。
ジョアンナ「……煮物の匂いで居場所特定されるの、マジで勘弁してほしい」
カイルド「いい匂いだったな、今朝の」
ジョアンナ「ギヨエエエエエエ!!!!!(またしんだ)」
その日、私は確信した。
“恋”は突然やってくる――煮物と一緒に。
ジョアンナの煮物 ― カイルドの決意
宿の小さな食堂。
テーブルの上には、湯気を立てる煮物の鍋。
素朴な香りが、ゆっくりと部屋に広がっていた。
カイルド「……あったかいな」
スプーンを持ったまま、ふっと笑う。
その表情は、戦場では決して見せないような、柔らかい顔だった。
カイルド「この味、忘れられねぇや。
派手じゃないのに、じんわり染みる。
若い子の作る料理ってより……
あったかくて、落ち着いてて、
“おふくろの味”ってやつだな」
ジョアンナは顔を真っ赤にして、
「おふくろの味」と言われたところで、
ちょっと複雑な笑いを浮かべた。
ジョアンナ「……褒めてるんですか、それ」
カイルド「ああ。最高の褒め言葉だ。
腹が満たされて、心までほぐれる。
……結婚、決める価値あるだろ」
スプーンが手の中で止まる。
ジョアンナ「け、け、けっ……け、結婚!?」
カイルド「煮物がうまい女と一緒に生きる。
男の夢だろ?」
彼は真顔で言った。
冗談みたいなのに、声が低くて優しくて、心臓が反応してしまう。
ジョアンナ(心の声)「……ちょっと待って、いまの、反則。
それ、求婚イベントのセリフ。乙女ゲームでもそんな簡単に落ちませんって……!」
でも、頬が緩むのを止められなかった。
ジョアンナ「……もう一杯、食べます?」
カイルド「ああ。未来の分もな」
──その夜、鍋はきれいに空になった。
煮物の香りと、二人の笑い声だけが、
やさしく宿の中に残っていた。
朝の市場。
人のざわめきの中、私は聞いてしまった。
通行人A「……“王子の花嫁候補”が逃げたって、本当か?」
通行人B「今ごろ騎士団が追ってるらしいぜ」
通行人C「悪役令嬢も断罪されるしな。まずは、その“モブ”の番だろ?」
──モブって、私のことだよね。
ジョアンナ(心の声)「……ちょ、こわっ。モブって言った今、絶対私のことだよね!?」
煮物の具材を落としかける。
手が震える。
心臓が、どくどく鳴っている。
いや、鳴らないで。今だけは静かにして。
こっそり市場を出ようとして──
背後に「ぞくっ」とする気配を感じた。
──鋭い視線。
──一歩、近づく靴音。
──剣の柄に手をかける気配。
(え、やばい。追っ手!? 煮物の香りでバレた!?)
???「その手、離してもらえるか」
低く、凛とした声。
私の心臓が、別の意味で止まった。
振り向くと、カイルドさまが立っていた。
陽の光を背にして、影が長く伸びている。
カイルド「この人に、指一本でも触れてみろ」
カイルド「──俺が、相手になる」
……しんだ。
ジョアンナ「(はい今、心臓止まりました。物理的に。)」
声が低くて優しくて、でも容赦なくて、
背中が広くて、
かっこよすぎて、
乙女ゲームで見たことある“守られルート”ってこれだ!!!
いや、でもこれ……本物。
◆ ◆ ◆
追っ手は数人。
王子直轄の紋章入りの制服。
でも、カイルドさまは一歩も引かない。
騎士団員「貴族の命令だ! 王命でもある!」
カイルド「王命かどうか知らないがな」
カイルド「俺は“目の前で震えてる人”を、
何も言わずに置いていく教育は受けてない」
ジョアンナ(心の声)「かっこよすぎてもう無理。呼吸できない。煮物しか喉通らない……」
騎士団員「彼女は王子の婚約者候補だぞ!」
カイルド「“候補”だろうがなんだろうが、
本人が“逃げたい”って言ってるんだ。
それ以上は──俺の仕事だ」
ジョアンナ(涙目)「ぐっ……泣く……顔上げられない……」
でも、背中が広くてあったかい。
この人、ほんとに、守ってくれてる。
──ああ、やっぱり堕ちてたんだ、私。
◆ ◆ ◆
結局、追っ手は引き返した。
静かになった市場。
私はそっと息を吐いた。
ジョアンナ「……煮物の匂いで居場所特定されるの、マジで勘弁してほしい」
カイルド「いい匂いだったな、今朝の」
ジョアンナ「ギヨエエエエエエ!!!!!(またしんだ)」
その日、私は確信した。
“恋”は突然やってくる――煮物と一緒に。
ジョアンナの煮物 ― カイルドの決意
宿の小さな食堂。
テーブルの上には、湯気を立てる煮物の鍋。
素朴な香りが、ゆっくりと部屋に広がっていた。
カイルド「……あったかいな」
スプーンを持ったまま、ふっと笑う。
その表情は、戦場では決して見せないような、柔らかい顔だった。
カイルド「この味、忘れられねぇや。
派手じゃないのに、じんわり染みる。
若い子の作る料理ってより……
あったかくて、落ち着いてて、
“おふくろの味”ってやつだな」
ジョアンナは顔を真っ赤にして、
「おふくろの味」と言われたところで、
ちょっと複雑な笑いを浮かべた。
ジョアンナ「……褒めてるんですか、それ」
カイルド「ああ。最高の褒め言葉だ。
腹が満たされて、心までほぐれる。
……結婚、決める価値あるだろ」
スプーンが手の中で止まる。
ジョアンナ「け、け、けっ……け、結婚!?」
カイルド「煮物がうまい女と一緒に生きる。
男の夢だろ?」
彼は真顔で言った。
冗談みたいなのに、声が低くて優しくて、心臓が反応してしまう。
ジョアンナ(心の声)「……ちょっと待って、いまの、反則。
それ、求婚イベントのセリフ。乙女ゲームでもそんな簡単に落ちませんって……!」
でも、頬が緩むのを止められなかった。
ジョアンナ「……もう一杯、食べます?」
カイルド「ああ。未来の分もな」
──その夜、鍋はきれいに空になった。
煮物の香りと、二人の笑い声だけが、
やさしく宿の中に残っていた。
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