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王子、逆ギレ。メリンダさま、予想通りの動きです。
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王子の怒声と、母の静寂
王城の謁見の間に、王子の怒声が響いた。
金の髪を振り乱し、テーブルを叩く王子アルフレッド。
その真正面で、メリンダさま――王子の婚約者であり、そして“私(ジョアンナ)の前世の母”――は、まるで嵐の中心に咲く花のように、静かに紅茶を口にしていた。
メリンダ「今さら大きな声を出したって、もう遅いのよ、アルフレッド」
アルフレッド「なっ……!? メリンダっ!」
メリンダ「あなたが“私の娘”を雑に扱うのは、想定済みよ」
そう言って、メリンダさまは、ひとつの封書を取り出した。
封には、貴族評議会の公印が押されている。
メリンダ「王子の婚約者には不適格。
よって、ジョアンナ嬢の辞退は受理。――すでに記録済みですわ」
アルフレッド「そ、そんな勝手なことを!!」
メリンダ「“勝手”をしたのは、あなたのほうでしょう?
それに……彼女、もう逃げたわ。遠くへ」
王子の顔色が、みるみる青ざめ、次に真っ赤に染まる。
アルフレッド「どこだ!? どこにいる!? 俺の婚約者を返せ!!」
メリンダ「もう、“あなたの”じゃないわよ?」
紅茶の香りが静かに立ちのぼる。
メリンダさまの微笑みは穏やかだったが、その瞳の奥には、
幾度も生まれ変わっても消えない痛みが宿っていた。
メリンダ(心の声)
「本当に、“娘の幸せ”を願う母になるのに……
どれだけの時間がかかったことかしらね……」
◆ ◆ ◆
農村の宿にて
その頃、私は“とある農村の宿”で、カイルドさまの隣にいた。
木製のテーブルに置かれたスープから、湯気が立ちのぼる。
カイルド「……おかわりいるか?」
ジョアンナ「……ほしいです……」
あんなに嵐のような日々を生きてきたのに、
今こうして、あたたかいスープを飲みながら、
誰かと笑っていられる――
それだけで、胸の奥が熱くなって泣きそうになる。
ジョアンナ「……変な話ですけど」
カイルド「ん?」
ジョアンナ「いま、私の人生、ちょっと幸せかもって、思ってます」
カイルド「“ちょっと”じゃなくていい。
ちゃんと幸せにするよ」
ジョアンナ(心の声)
「……はい、またしんだ。
声がやさしすぎる。反則です。呼吸困難です」
◆ ◆ ◆
母の宣告
その夜、メリンダさまは王子の前に立っていた。
メリンダ「アルフレッド。あなたは“恋”を知らなかったのよ。
愛することと、支配することを――混同したのね」
アルフレッドは拳を握りしめた。
何かを言い返そうとしたが、言葉が出てこない。
メリンダ「その代償は、これから学びなさい」
少しだけ、紅茶の香りを纏って。
その声には、母としての祈りが滲んでいた。
メリンダ「……そして、学んだなら。
“つぎの子”に頭を下げなさい。
それが、“私”からの、最後のお願いよ」
アルフレッドは何も言えなかった。
その目に浮かぶ後悔が、静かに夜に溶けていった。
◆ ◆ ◆
遠く離れた村の宿では、
ジョアンナがスープを飲み干し、カイルドに笑っていた。
前世理不尽に失った娘、
ようやく、こっちの場所で、
“幸せ”という名の光を見つけたのだった。
アルフレッドの独白
私は――ずっと、綺麗な婚約者メリンダと結婚するつもりでいた。
彼女は完璧だった。
教養も、立ち居振る舞いも、どこを取っても非の打ちどころがない。
王妃になるにふさわしいと、誰もが言った。
……もちろん、私もそう思っていた。
“好き”という気持ちを、少し見失うくらいには。
そんなある日。
彼女は、まるでお茶の話でもするように言ったんだ。
メリンダ「この子と結婚してみたら、どうかしら?」
……何を言われたのか、最初は理解できなかった。
だって、私が想っていた相手が、
自分の手で“別の誰か”を紹介してきたんだぞ。
胸の奥が、ずしんと重くなった。
喉が痛いほど乾いた。
笑ってごまかすこともできなかった。
アルフレッド(心の声)
「好きな人に、恋愛相手を紹介されるって……こんなにきついんだな」
紹介されたのは、素朴で、可愛らしい子だった。
よく笑って、少し不器用で、料理の話をすると楽しそうにしていた。
いい子だと思った。
……でも違うんだ。
私は、メリンダじゃなきゃ、駄目だった。
どうしてだろうな。
完璧で、少し怖くて、それでも優しくて。
彼女の紅茶を飲む姿が、脳裏に焼き付いて離れない。
嫌われたくなかった。
だからせめて、彼女が紹介した“その子”のことを、
ちゃんと知ってみようと思ったんだ。
……それが、地獄の始まりになるなんて、
そのときの私は、まだ知らなかった。
王城の謁見の間に、王子の怒声が響いた。
金の髪を振り乱し、テーブルを叩く王子アルフレッド。
その真正面で、メリンダさま――王子の婚約者であり、そして“私(ジョアンナ)の前世の母”――は、まるで嵐の中心に咲く花のように、静かに紅茶を口にしていた。
メリンダ「今さら大きな声を出したって、もう遅いのよ、アルフレッド」
アルフレッド「なっ……!? メリンダっ!」
メリンダ「あなたが“私の娘”を雑に扱うのは、想定済みよ」
そう言って、メリンダさまは、ひとつの封書を取り出した。
封には、貴族評議会の公印が押されている。
メリンダ「王子の婚約者には不適格。
よって、ジョアンナ嬢の辞退は受理。――すでに記録済みですわ」
アルフレッド「そ、そんな勝手なことを!!」
メリンダ「“勝手”をしたのは、あなたのほうでしょう?
それに……彼女、もう逃げたわ。遠くへ」
王子の顔色が、みるみる青ざめ、次に真っ赤に染まる。
アルフレッド「どこだ!? どこにいる!? 俺の婚約者を返せ!!」
メリンダ「もう、“あなたの”じゃないわよ?」
紅茶の香りが静かに立ちのぼる。
メリンダさまの微笑みは穏やかだったが、その瞳の奥には、
幾度も生まれ変わっても消えない痛みが宿っていた。
メリンダ(心の声)
「本当に、“娘の幸せ”を願う母になるのに……
どれだけの時間がかかったことかしらね……」
◆ ◆ ◆
農村の宿にて
その頃、私は“とある農村の宿”で、カイルドさまの隣にいた。
木製のテーブルに置かれたスープから、湯気が立ちのぼる。
カイルド「……おかわりいるか?」
ジョアンナ「……ほしいです……」
あんなに嵐のような日々を生きてきたのに、
今こうして、あたたかいスープを飲みながら、
誰かと笑っていられる――
それだけで、胸の奥が熱くなって泣きそうになる。
ジョアンナ「……変な話ですけど」
カイルド「ん?」
ジョアンナ「いま、私の人生、ちょっと幸せかもって、思ってます」
カイルド「“ちょっと”じゃなくていい。
ちゃんと幸せにするよ」
ジョアンナ(心の声)
「……はい、またしんだ。
声がやさしすぎる。反則です。呼吸困難です」
◆ ◆ ◆
母の宣告
その夜、メリンダさまは王子の前に立っていた。
メリンダ「アルフレッド。あなたは“恋”を知らなかったのよ。
愛することと、支配することを――混同したのね」
アルフレッドは拳を握りしめた。
何かを言い返そうとしたが、言葉が出てこない。
メリンダ「その代償は、これから学びなさい」
少しだけ、紅茶の香りを纏って。
その声には、母としての祈りが滲んでいた。
メリンダ「……そして、学んだなら。
“つぎの子”に頭を下げなさい。
それが、“私”からの、最後のお願いよ」
アルフレッドは何も言えなかった。
その目に浮かぶ後悔が、静かに夜に溶けていった。
◆ ◆ ◆
遠く離れた村の宿では、
ジョアンナがスープを飲み干し、カイルドに笑っていた。
前世理不尽に失った娘、
ようやく、こっちの場所で、
“幸せ”という名の光を見つけたのだった。
アルフレッドの独白
私は――ずっと、綺麗な婚約者メリンダと結婚するつもりでいた。
彼女は完璧だった。
教養も、立ち居振る舞いも、どこを取っても非の打ちどころがない。
王妃になるにふさわしいと、誰もが言った。
……もちろん、私もそう思っていた。
“好き”という気持ちを、少し見失うくらいには。
そんなある日。
彼女は、まるでお茶の話でもするように言ったんだ。
メリンダ「この子と結婚してみたら、どうかしら?」
……何を言われたのか、最初は理解できなかった。
だって、私が想っていた相手が、
自分の手で“別の誰か”を紹介してきたんだぞ。
胸の奥が、ずしんと重くなった。
喉が痛いほど乾いた。
笑ってごまかすこともできなかった。
アルフレッド(心の声)
「好きな人に、恋愛相手を紹介されるって……こんなにきついんだな」
紹介されたのは、素朴で、可愛らしい子だった。
よく笑って、少し不器用で、料理の話をすると楽しそうにしていた。
いい子だと思った。
……でも違うんだ。
私は、メリンダじゃなきゃ、駄目だった。
どうしてだろうな。
完璧で、少し怖くて、それでも優しくて。
彼女の紅茶を飲む姿が、脳裏に焼き付いて離れない。
嫌われたくなかった。
だからせめて、彼女が紹介した“その子”のことを、
ちゃんと知ってみようと思ったんだ。
……それが、地獄の始まりになるなんて、
そのときの私は、まだ知らなかった。
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