1 / 21
婚約破棄されて寮へ
しおりを挟む
父から、婚約破棄だと聞かされた。
理由は「愛想がなくて、社交に使えないから」。
父は、深いため息をついた。
婚約者に嫌われていることは、もう知っている。
先日──婚約者同士のお茶会で、彼は私に手を伸ばし、いやらしいことをしようとした。
私は思わず彼を突き飛ばし、その場から逃げ出した。
それを、彼は逆恨みしているのだ。
父は「謝ってこい」と言う。
けれど、私は絶対に謝りたくなかった。
間違っているのは、私ではないのだから。
父は、深いため息をついた。
「このままでは、我が家としても困るのだ」
私の言い分など、最初から聞く気はないのだろう。
家の名誉、家の立場──そればかり。
「謝ってこい。でなければ……」
そこで言葉を切る父の目は、冷ややかだった。
私の未来など、どうでもいいという目だ。
私は拳を握りしめた。
「絶対に、謝りません」
胸の奥で小さな火が燃える。
これはただの反抗ではない。
“間違っているのは、私じゃない”という確信だった。
父の声は、容赦なく冷たかった。
「では、婚約破棄だ」
胸の奥がぎゅっと痛む。
やっぱり、そう来るのか……。
「我が家の娘としては、認められない。
体面もあるからな。──学校の寮で、ひとりで反省してこい」
反省? 私が?
悪いのは彼のほうなのに。
唇をかみしめながら、私は小さく息を吐いた。
「学校の寮に移り、卒業後は文官としてでも生きていけ。兄と妹がいれば十分だ。余計な娘はこれ以上は、面倒は見られん」
父は淡々と告げる。
「反省したなら、謝りに行けば許してやる」
その言葉に、胸の奥が冷たくなった。
──やっぱり、私の話なんて聞くつもりはない。
悪いのはあくまで私、謝るのも私。
「……絶対に、謝りません」
声は震えていたけれど、意思は揺るがなかった。
父は大きくため息をつき、目を伏せる。
「ならば婚約破棄だ。家の体面のためにも……おまえは寮でひとり反省してこい」
その瞬間、私は“家の娘”ではなくなった。
冷たく言い放たれたその言葉で、私は一応“伯爵令嬢”という肩書きを持ちながら、家から追い出された。
私の名は、マリーン。
愛想もなく、家族からも不要とされた娘。
私は、伯爵令嬢として幼い頃から、窮屈な家に縛られてきた。
「伯爵令嬢とはこういうものです」
そう言われて、着飾ることや礼儀作法ばかりを叩き込まれる。
逆らえば、待っているのはお仕置きだった。
物置に閉じ込められ、暗闇の中で膝を抱えるしかない。
自由なんて、最初からなかった。
始終、召使いや家庭教師の目に見張られ、自分のしたいことはひとつも許されなかった。
馬車の窓の外、街の灯りが遠ざかっていく。
胸の奥に広がるのは、悔しさと、どうしようもない寂しさだった。
「反省してこい」
「謝れば許してやる」
父の言葉が耳にこびりついて離れない。
ああ、私は──本当に、いらない娘なんだ。
現実は、親は平気で手を離す。
「反省させる」なんてことを、普通にできる人たちだったのだ。
どうして。
どうして私ばかり。
目から、ぽろぽろと涙がこぼれた。
泣きたくなんてないのに、止められない。
これからどうなるのか、わからない。
寮に行けば本当にやっていけるのかも、不安しかない。
私はただひとり、揺れる馬車の中で泣き続けた。
未来のことなんて、まだ考えられなかった。
理由は「愛想がなくて、社交に使えないから」。
父は、深いため息をついた。
婚約者に嫌われていることは、もう知っている。
先日──婚約者同士のお茶会で、彼は私に手を伸ばし、いやらしいことをしようとした。
私は思わず彼を突き飛ばし、その場から逃げ出した。
それを、彼は逆恨みしているのだ。
父は「謝ってこい」と言う。
けれど、私は絶対に謝りたくなかった。
間違っているのは、私ではないのだから。
父は、深いため息をついた。
「このままでは、我が家としても困るのだ」
私の言い分など、最初から聞く気はないのだろう。
家の名誉、家の立場──そればかり。
「謝ってこい。でなければ……」
そこで言葉を切る父の目は、冷ややかだった。
私の未来など、どうでもいいという目だ。
私は拳を握りしめた。
「絶対に、謝りません」
胸の奥で小さな火が燃える。
これはただの反抗ではない。
“間違っているのは、私じゃない”という確信だった。
父の声は、容赦なく冷たかった。
「では、婚約破棄だ」
胸の奥がぎゅっと痛む。
やっぱり、そう来るのか……。
「我が家の娘としては、認められない。
体面もあるからな。──学校の寮で、ひとりで反省してこい」
反省? 私が?
悪いのは彼のほうなのに。
唇をかみしめながら、私は小さく息を吐いた。
「学校の寮に移り、卒業後は文官としてでも生きていけ。兄と妹がいれば十分だ。余計な娘はこれ以上は、面倒は見られん」
父は淡々と告げる。
「反省したなら、謝りに行けば許してやる」
その言葉に、胸の奥が冷たくなった。
──やっぱり、私の話なんて聞くつもりはない。
悪いのはあくまで私、謝るのも私。
「……絶対に、謝りません」
声は震えていたけれど、意思は揺るがなかった。
父は大きくため息をつき、目を伏せる。
「ならば婚約破棄だ。家の体面のためにも……おまえは寮でひとり反省してこい」
その瞬間、私は“家の娘”ではなくなった。
冷たく言い放たれたその言葉で、私は一応“伯爵令嬢”という肩書きを持ちながら、家から追い出された。
私の名は、マリーン。
愛想もなく、家族からも不要とされた娘。
私は、伯爵令嬢として幼い頃から、窮屈な家に縛られてきた。
「伯爵令嬢とはこういうものです」
そう言われて、着飾ることや礼儀作法ばかりを叩き込まれる。
逆らえば、待っているのはお仕置きだった。
物置に閉じ込められ、暗闇の中で膝を抱えるしかない。
自由なんて、最初からなかった。
始終、召使いや家庭教師の目に見張られ、自分のしたいことはひとつも許されなかった。
馬車の窓の外、街の灯りが遠ざかっていく。
胸の奥に広がるのは、悔しさと、どうしようもない寂しさだった。
「反省してこい」
「謝れば許してやる」
父の言葉が耳にこびりついて離れない。
ああ、私は──本当に、いらない娘なんだ。
現実は、親は平気で手を離す。
「反省させる」なんてことを、普通にできる人たちだったのだ。
どうして。
どうして私ばかり。
目から、ぽろぽろと涙がこぼれた。
泣きたくなんてないのに、止められない。
これからどうなるのか、わからない。
寮に行けば本当にやっていけるのかも、不安しかない。
私はただひとり、揺れる馬車の中で泣き続けた。
未来のことなんて、まだ考えられなかった。
40
あなたにおすすめの小説
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!
秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。
民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。
「おまえたちは許さない」
二度目の人生。
エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。
彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。
1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。
「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」
憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。
二人の偽りの婚約の行く末は……
公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました
歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と
罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが
やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、
エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」
辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。
商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。
元夫が「戻ってこい」と泣きつくが——
「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」
【完結】転生したら断罪イベントの真っ最中。聖女の嘘を暴いたら、王太子が真っ青になりました
丸顔ちゃん。
恋愛
王太子は私――エリシアに婚約破棄を宣言し、
隣では甘ったるい声の“聖女”が「こわかったんですぅ♡」と泣き真似をしている。
だが私は知っている。
原作では、この聖女こそが禁術で王太子の魔力を吸い取り、
私に冤罪を着せて処刑へ追い込んだ張本人だ。
優しい家族を守るためにも、同じ結末は絶対に許さない。
私は転生者としての知識を武器に、
聖女の嘘と禁術の証拠を次々に暴き、
王太子の依存と愚かさを白日の下に晒す。
「婚約は……こちらから願い下げです」
土下座する王太子も、泣き叫ぶ聖女も、もう関係ない。
私は新しい未来を選ぶ。
妹を選んで婚約破棄した婚約者は、平民になる現実を理解していなかったようです
藤原遊
恋愛
跡継ぎとして育てられた私には、将来を約束された婚約者がいた。
――けれど彼は、私ではなく「妹」を選んだ。
妹は父の愛人の子。
身分も立場も分かったうえでの選択だと思っていたのに、
彼はどうやら、何も理解していなかったらしい。
婚約を破棄し、妹と結ばれた彼は、
当然のように貴族の立場を失い、平民として生きることになる。
一方で、妹は覚悟を決めて現実に向き合っていく。
だが彼だけが、最後まで「元に戻れる」と信じ続けていた。
これは、誰かが罰した物語ではない。
ただ、選んだ道の先にあった現実の話。
覚悟のなかった婚約者が、
自分の選択と向き合うまでを描いた、静かなざまぁ物語。
婚約破棄された公爵令嬢ですが、戻らなかっただけです
鷹 綾
恋愛
王太子カイル殿下から、社交界の場で婚約破棄を言い渡された公爵令嬢リュシエンヌ。
理由は――
「王太子妃には華が必要だから」。
新たに選ばれたのは、愛らしく無邪気な義妹セシリア。
誰もが思った。
傷ついた令嬢は泣き、縋り、やがて戻るのだと。
けれどリュシエンヌは、ただ一言だけ告げる。
「戻りません」
彼女は怒らない。
争わない。
復讐もしない。
ただ――王家を支えるのをやめただけ。
流通は滞り、商会は様子を見始め、焦った王太子は失点を重ねる。
さらに義妹の軽率な一言が決定打となり、王太子妃候補の座は静かに消えた。
強いざまあとは、叫ぶことではない。
自らの選択で、自らの立場を削らせること。
そして彼女は最後まで戻らない。
支えない。
奪わない。
――選ばれなかったのではない。
彼女が、選ばなかったのだ。
これは、沈黙で勝つ公爵令嬢の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる