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Episode4 京子
182 特別な場所
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まるで荷物を運び出すように連れて行かれた佳祐の遺体は、九州支部の地下に数日安置された。
在籍のキーダーが居なくなった支部は事後処理に追われ、京子とたち本部の3人がその手伝いをする。勝手の分からない事も多くてんてこまいの日々を送り、ようやく仕事も落ち着いた頃、佳祐の葬儀が執り行われた。
勿論やよいの時のような式を上げることはできず、その場にいるキーダーのみという限定措置だ。福岡の病院に入院していた久志の許可は下りたが、同期組のマサも例外なく除外され、九州で一緒だった桃也も海外から駆け付ける事はなかった。
佳祐は親戚とは疎遠になっていて、連絡を入れてはみたものの反応は薄い。
修司も前日に東京へ戻っていて、残った京子と綾斗、そして久志の三人で数年前に亡くなったという佳祐の父親が眠る寺へ向かった。
「佳祐の馬鹿野郎」
読経の最中、久志がずっと佳祐への想いを微かな声で吐き出していた。
椅子の前へ放り出された右足は、白いギプスでガチガチに固定されている。喪服を着ることが出来ず、Tシャツとハーフパンツに黒い腕章という姿だ。伸びきった髪は、耳の後ろでぎっちりと結わえられている。
松葉杖で何とか歩くことはできるが、完治までは暫くかかるという。
短い法要は午前のうちに終わり、火葬した骨を寺に預けて支部へ戻った。
まだ明るい夕方に三人を迎えたのは、アルガス長官の宇波誠だ。暫く本部に居た彼は、昼にヘリで福岡へ入ったらしい。
「お疲れ様」
「ありがとう」と労う誠に、京子が無言のまま頭を下げた。
佳祐の粛清を任されたが、彼に止めを刺したのは忍だ。それがずっと京子の胸に閊えている。
「長官、今回の件は申し訳ありませんでした」
「何を謝っているの? 一條くんの粛清は、手段を選ばないと言ったでしょう?」
「はい。でも……」
「良いんだ。それよりホルスの男と接触したんだろう? 本部に戻ったら三人ともその話を
聞かせて欲しい。もちろん空閑くんはオンラインで構わないからね」
「分かりました」
京子は二人の後ろで小さく「はい」と答えた。
ここぞという時に、私情が入る。
この先に控える忍との戦闘に向けて、キーダーとしての自覚をもっと持たねばならないと思う。
支部を出る誠の背を神妙な顔で見送ると、綾斗がそっと京子の背に触れた。ずっと緊張していた気持ちが少しだけ和らぐ。
「じゃあ、僕はそろそろ戻るよ」
晴れない顔のまま、久志は病院へ戻る車に乗り込んだ。
「またね」と後部座席から手を振る彼に会釈した綾斗は、「京子さん」と走り出す車から視線を返した。
「ちょっと行きたい場所があって。もし良かったら一緒に行って貰えると嬉しいんだけど」
「これから?」
夜まではまだ時間がある。
明日の午後に二人で東京へ戻る事になっていて、それまでは特に用事もなかった。
彼の誘いが楽しいデートでない事は表情でわかる。
「いいけど、どこだろう……」
「特別な場所。じゃあ着替えたら部屋に迎えに行くね」
「良かった」とはにかんだ綾斗につられて、京子は数日振りに笑顔を零した。
在籍のキーダーが居なくなった支部は事後処理に追われ、京子とたち本部の3人がその手伝いをする。勝手の分からない事も多くてんてこまいの日々を送り、ようやく仕事も落ち着いた頃、佳祐の葬儀が執り行われた。
勿論やよいの時のような式を上げることはできず、その場にいるキーダーのみという限定措置だ。福岡の病院に入院していた久志の許可は下りたが、同期組のマサも例外なく除外され、九州で一緒だった桃也も海外から駆け付ける事はなかった。
佳祐は親戚とは疎遠になっていて、連絡を入れてはみたものの反応は薄い。
修司も前日に東京へ戻っていて、残った京子と綾斗、そして久志の三人で数年前に亡くなったという佳祐の父親が眠る寺へ向かった。
「佳祐の馬鹿野郎」
読経の最中、久志がずっと佳祐への想いを微かな声で吐き出していた。
椅子の前へ放り出された右足は、白いギプスでガチガチに固定されている。喪服を着ることが出来ず、Tシャツとハーフパンツに黒い腕章という姿だ。伸びきった髪は、耳の後ろでぎっちりと結わえられている。
松葉杖で何とか歩くことはできるが、完治までは暫くかかるという。
短い法要は午前のうちに終わり、火葬した骨を寺に預けて支部へ戻った。
まだ明るい夕方に三人を迎えたのは、アルガス長官の宇波誠だ。暫く本部に居た彼は、昼にヘリで福岡へ入ったらしい。
「お疲れ様」
「ありがとう」と労う誠に、京子が無言のまま頭を下げた。
佳祐の粛清を任されたが、彼に止めを刺したのは忍だ。それがずっと京子の胸に閊えている。
「長官、今回の件は申し訳ありませんでした」
「何を謝っているの? 一條くんの粛清は、手段を選ばないと言ったでしょう?」
「はい。でも……」
「良いんだ。それよりホルスの男と接触したんだろう? 本部に戻ったら三人ともその話を
聞かせて欲しい。もちろん空閑くんはオンラインで構わないからね」
「分かりました」
京子は二人の後ろで小さく「はい」と答えた。
ここぞという時に、私情が入る。
この先に控える忍との戦闘に向けて、キーダーとしての自覚をもっと持たねばならないと思う。
支部を出る誠の背を神妙な顔で見送ると、綾斗がそっと京子の背に触れた。ずっと緊張していた気持ちが少しだけ和らぐ。
「じゃあ、僕はそろそろ戻るよ」
晴れない顔のまま、久志は病院へ戻る車に乗り込んだ。
「またね」と後部座席から手を振る彼に会釈した綾斗は、「京子さん」と走り出す車から視線を返した。
「ちょっと行きたい場所があって。もし良かったら一緒に行って貰えると嬉しいんだけど」
「これから?」
夜まではまだ時間がある。
明日の午後に二人で東京へ戻る事になっていて、それまでは特に用事もなかった。
彼の誘いが楽しいデートでない事は表情でわかる。
「いいけど、どこだろう……」
「特別な場所。じゃあ着替えたら部屋に迎えに行くね」
「良かった」とはにかんだ綾斗につられて、京子は数日振りに笑顔を零した。
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