かいせん(line)

たくひあい@あい生成

文字の大きさ
260 / 349
recycled steel barrel

ペルソナの本体

しおりを挟む



その頃。

 藍鶴色、界瀬絹良、橋引???、佳ノ宮まつり、行七夏々都は今、ある自然公園に来て居る。
聖堂のある小島に渡るべく、湖を渡るボートに乗ることになったわけである。 

 少しずつ、冬の気配を覚える風景。
そろそろクリスマスマーケット的なやつが始まるのだろう、あちこちで店の装飾を準備する光景が見られる。
「うわぁー、綺麗だね、夜はもっと綺麗なのかな」

はしゃぐ彼女の声を聴きながら、色は女子高生ってこういうのが好きなのかなと考えてみた。思えば冬に彼女と遠くまで出かけた記憶はそんなにない。
彼女自身、友達と何処かに行く訳でもなくて、いつも部屋で勉強したり本を読んでいた気がする。
……こういうのは、本来は家族と行くものなのだろうか?

彼女の家族、の事、その心的な事情を思い出すと、やはりそうもいかないのだが。
まつりと夏々都は、何か食べる?とか、あれ家に飾りたいとか言っている。





「ほんと、久々だなぁ、楽しみだなぁ」
そのすぐ横で界瀬が震えた声で言い、色にしがみついていた。
「……大丈夫?」
藍鶴色は曖昧に尋ねてみる。


彼は頷いてはいるが、顔色はよくない。
水面、揺れるボートなどが彼のトラウマを呼び起こしているようである。

色は、彼の背中を撫でて、普段より強めに抱きしめた。
「落ち着いて?」
「兵器開発、してたんだ」
「何の話?」
ガタガタ震えている界瀬は言う。
まつりがちらりとそちらを向く。


そのときちょうど、電話が鳴った。
「はい」
色が上着から携帯端末を取り出し、応答すると、通話相手は言う。
『……凄いぞ此処。人型兵器の試作品が沢山ある』

菊の声。色は、互いの現在の状況などを彼としばらく会話する。

それからややあって、今度は花子が通話に出て、ある話をする。
 『私たち、トクホの地下に居るの。
……それでね、そこに、保管室があって。ペルソナのオリジナルが、この5つのどれかだと思う』

色は、界瀬の肩を叩いた。
「界瀬」
震えながら、色を見る彼に、色は端末を向けた。
「?」
そこには画面いっぱいに、さっき送られてきた画像が表示されている。
瓶に詰められた、人間の内臓のようなもの。
恐らく、誰かの細胞から複製されていると思われる。

それが5つ、古い倉庫のような場所にある。

「なんだ、これ?」
「この中で一番、強い感情を持つ者はどれ?」

界瀬が画面を見たまま、釘付けになったように硬直する。
いや、集中している。
「……此処、知ってる。あの日資料で見たんだ」

独り言のようにそう呟いた彼はやがて画面に手を翳した。この行為自体、能力そのものに影響があるわけではないが、彼にとっての呪いのようなものなのだろう。
一つ一つ、箱で区切られた画像の、一人一人をなぞっていく。
それから彼は、真ん中の個体の前で指を指した。

「これ、こいつが一番、生身の人間の意識を感じる。中身は恐らく、女の人だ」
「わかった」
色は界瀬から端末を再び返してもらい、通話をする。

「真ん中に居る子、ペルソナの本体、女の人だと思うって」

界瀬が横から言う。
「恐らく超能力者だ。子どもの……だが、その事実が気に入らないとかで、誘拐され、研究・量産の為に閉じ込められたらしい」

そして、能力者の少女の存在はずっとトクホで管理され、人々の記憶からも、歴史上からも無かったことにされていた。


――――あなたも、探しているの?

「身元は……えっと、華族……? 貴族? 元は、その繋がりのようだと思う。感覚が薄れていてよくわからない。

でも、彼女の意識はまだ存在している。そして、残った力を使って、俺にも、呼びかけて来る……『そこを壊せ』って。なんだか、凄く、懐かしい……」


『そうか、サンキュー!』

「あっ、菊さん、待って、其処は一体……」
通話が切れる。




















「切れちゃった」
色が端末を上着に戻す。
橋引は、しばらく街並みを眺めていたが通話の終わった雰囲気を感じ取り「誰から?」と振り向いた。
「菊さんと花子さん」
色は静かに答える。
界瀬はなんだか辛そうに、じっと地面を見つめている。

「……開発、まだあったんだ」


 ちなみに夏々都はというと、まつりを眺めており、
まつりはどこかに連絡していた。






――――えぇ……恐らくは
――――そもそも、あの変な設定を入れるのに執拗に拘って居た辺り、スパイという疑惑があるんですよ。『経歴詐称を暴くにも、まつり様の名誉をそのままにしておく方が良い』というのに。

――――そう。改竄ね。現場に何の損害も与えてないのにね。

――――踏み入ってわざわざレベルを極端に下げようとした辺りに関しては
詐称に気づいている人物が、彼の本当の経歴と比較されるのを怖れて改竄しようとしたとしか思えない。
――――……というかそもそも、比較される理由があるからという事なのが問題なのではないでしょうか?

―――同期するのが目的なら、別に、放っておけばいいんだしね。
現場や社内では実際に経歴を聞きに行かれているからと考えた方がいいだろう

…………
――――どうしましたか?

――――あのクラスがそれをやっているという事は、やっぱり黒なんだろうな






2025/12/114:18
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

貢がせて、ハニー!

わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。 隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。 社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。 ※この物語はフィクションです。 ※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8) ■2025.12.14 285話のタイトルを「おみやげ何にする? Ⅲ」から変更しました。 ■2025.11.29 294話のタイトルを「赤い川」から変更しました。 ■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました! ■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。 ■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とスタッフ達とBL営業をして腐女子や腐男子たまに普通のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ/Ⅱ

MITARASI_
BL
I 彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。 「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。 揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。 不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。 すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。 切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。 Ⅱ 高校を卒業し、同じ大学へ進学した陸と颯馬。  別々の学部に進みながらも支え合い、やがて同棲を始めた二人は、通学の疲れや家事の分担といった小さな現実に向き合いながら、少しずつ【これから】を形にしていく。  未来の旅行を計画し、バイトを始め、日常を重ねていく日々。  恋人として選び合った関係は、穏やかに、けれど確かに深まっていく。  そんな中、陸の前に思いがけない再会をする。  過去と現在が交差するその瞬間が、二人の日常に小さな影を落としていく。  不安も、すれ違いも、言葉にできない想いも抱えながら。  それでも陸と颯馬は、互いの手を離さずに進もうとする。  高校編のその先を描く大学生活編。  選び続けることの意味を問いかける、二人の新たな物語。 続編執筆中

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
「普通を探した彼の二年間の物語」 幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

処理中です...