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KAISEN
利用
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深い夜だった。
今は使われなくなったコンクリートの建物が月明かりに青く浮かんでいる。
薬品プラント――――かつて国家の秘密研究に使われていた施設だ。
無人の廃工場に立ち入るのは初めてじゃないけど……それでも背筋が凍る。
「来たよ」
重い扉を引きずるように開けて、私は言う。
向こうは何も言わない。
壁際のタンクからは薄く化学薬品の匂いが漏れてくる。
「私、待っていたんだよ? いつか、本当の事を言ってくれるんじゃないか、って、貴方の嘘に目を瞑って、黙って……待ってた」
冷たい空気に、白い呼吸が浮かぶ。
「あの子だって、そうだよ。
貴方が居なくても私は、私達は最初から歩いて行けてるんだよって。
だから、そんな事をしなくても、ずっと大丈夫だったよって」
誰かを守る為に、こんな危ない夢ばかり見なくちゃいけないって、ずっと知ってるから。
現状に目隠ししているだけで、何も解決していない。
誰も救えないと知っていたから。
嘘が生まれるたびに何度も消して、
「それなのに。貴方がそれを自分の事のように改竄した!!」
影が、一つ、揺らめいた気がする。
「そう――――ですか。素直に、私のものになる気はない、と」
暗がりから声。扉から差し込む光に照らされて、リュージが姿を現した。
足元には、ネジやボルトが散らばっている。
「絶対に無理。何度でも言ってやる。あんたが嫌いなの」
私は、それを視界に入れながら答えた。
「何故?」
彼が一歩、踏みしめると、足元にあったネジが踏まれて鈍い音を立てた。
「やめて!!」
ぐりぐりと足で弄られるネジに、私は思わず悲鳴を上げる。
「違うでしょう。物と、人は」
リュージが歪んだ笑みを浮かべる。
「違わない! 物と他人に、違いなんか無いじゃない!」
思っていた以上に、悲痛な声になった。
私は、ずっと物でしか無かったから。
人を想うような言葉と裏腹に、ずっと友達だったネジが踏まれているのが矛盾して見えて、胸が痛い。
「分からない……私には。ネジへの気持ちが、他人を思う気持ちと何が違うの?」
彼は、その声を聞いても、特に足を退かさない。
「このような部品として利用されるだけの、ただの道具が、人間と同じ?」
壁際に蓋をしたドラム缶が置いてある。それを彼はバンバン、と叩いてみせる。
そしてぐりぐり、と改めて、強い力でネジを踏みしめた。
「やめて!!」
「意思などなく、所有されてこそのものに好き嫌いなど、笑わせる」
彼は、ニヤニヤと笑う。
「自分を所有されていると気に病んでいた?単にそれだけ依存していた、のかもしれない」
少しだけ動きを留めるが、「それが何か」という表情を変えることはない。
「愛されてる証拠だね」
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