かいせん(line)

たくひあい@あい生成

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Skeletal structure

Skeletal structure

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まだ肌寒い日。
「あーあー。ストーブ。どうすんだよ……」
 部品たちの真ん中に座り込んでいると、背後で、嘆きの声が聞こえた。
いつの間にか、仕事から帰ったらしい界瀬がドアの向こうに立っている。
 このアパートは玄関を開けてすぐ部屋に直結するのだから、ふすまを開けて居ればすぐに中の様子が見渡せてしまう。あまり隠し事には向かない。

「俺が買った。問題ない」
「あるにはあるよ……」
また買えば良い。特に趣味も無いし、給料はまだ残っている。
 そう主張すると、彼は「愛着って、知ってるか?」と謎の質問をした。
「知ってるけど?」
もういいよ、と、彼はあきらめたように部品を纏め始める。
「……? おかえり」
座り込んだまま、とりあえず、帰宅をねぎらう。
「はい。ただいま」
彼は彼で、苦笑しながら返事をする。



「なぁ、どうして、こんな狭いところに住んでるんだ? 界瀬の――――」
「実家のこと? やだやだ、この能力もあるし、あそこに居たら神様の生まれ変わりだか、妖怪の生まれ変わりだか言われる」

 界瀬の家は、霊能力を使った占い師をしている大きな家だ。
資産もあるらしい。
だけど、彼は好んでこのアパートに暮らしていた。



「カッコイイじゃん」
「バーカ。そんなもんに人生を縛られるのはごめんだ、俺は俺のやりたいことを、俺の意思でやりたいんだよ。それは生まれ変わりだので、変な商売することじゃない。生きている証は自分で見つけなきゃ。あと職場に近いからだよ」

 生きている証。
生まれ変わり、という称号は、彼にとっては、俺にとっての雪だったのだろう。ビリビリに引き裂かれて、幾度となく否定され続ける自分の存在の証。
「なんかそういうこと、あったの?」
「あったあった。生まれ変わりなんだから暴力は駄目! とか、殺生は駄目!とか、好き嫌いは駄目!とか、段々後半馬鹿みたいになってくるの。俺は俺だっつの。蚊も殺せないとか無理」
「ふうん……」

「卑怯な手口だよな。勝手に期待して、勝手に背負わせて、そいつの人生を認めてくれない。そりゃ、理不尽に死んだ人は可哀想だと思うし、遺族も可哀想だけど。
 生まれ変わりなんていくら信仰したって、死人にしがみついてるだけだろ。気色悪い。何が解決するんだよ。そもそも遺伝子が違ってるんだから、真面目に考えて生まれ変わりなんて存在しない。
生きてる奴がそうやって他人を使って、死者を貶めて、恥ずかしいと思う」

生まれ変わりが存在するなら、もう誰も生まれなくていい。
「宗教家は、騒ぐだろうけど」
「わかってるよ。それでも、生まれ変わりに人生を奪われたくない」
「そっか」

 界瀬の言葉が途切れると、また足元を向いた。
 辺りにはストーブや、もはや原型が何かもわからない部品が転がっている。
それらに埋もれていると、再び良い気分が沸き上がってきた。
 これらを見下ろしていると、イライラがどこかに消えていく。片付けなきゃいけないのはわかっているけど、片付けたらまたイライラしないといけない。


 ありとあらゆるものが、バラバラになるのを見て、粉々になっているのを見て、世界は所詮、集合体で、人間なんかほんとは何処にも居なくて、みんな、何も、何処にもなくて、そんな空想を、よくする。
人間もタンポポの花のようなものなのだろう。何人かが旅立って、でもどこかでまた集合体になる。
 何もかもが部品になり、ただの存在になる世界があったら、きっとすごく落ち着くのだろうと考えて、頬が緩む。
「ふふふふ……あはははは」

 『あの人』の、あの笑顔が、俺を見降ろし続ける。
ずっと、見降ろし続ける。
雪はどんなに強く握り締めて形作ったって、焼き払えばただの水。
ただの、一片に過ぎない。人間の体内のほとんどが水だというのだから、結局のところ、これと似たようなものなんだろう。
「アハハハハ!!!!! アーーハハハハハハ!!!!」


 誰かが、自分自身を呼んでくれたことなど無い。
たった一片の紙切れすら、残らない。
欠片でも、ほんの少しでも良かった。
俺のものである何かが、一滴でも、残るなら。

奪って、全部取り上げて廃棄されてしまうか、
奪って晒して、全部利用されてしまうかの違いしかない。


「色」
0が残るまで、続ける。
0は唯一の存在なんだ。

「いーろちゃん! おーい!」

――――それは、誰なんだろうな。



2022年6月18日2時26分

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