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Messiah complex
ナイト病
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◆◆
「あなたは──あの事件を、どう見ている?」
ある時間。
『佳ノ宮ささぎ』は、理事長室に出向いていた。
理事長が落ち着いた声で言う。
「天才殺し、或いは──」
それに対してささぎは何か言おうとした。
答え、ようとして、一旦思いとどまり、考える。
どの線も考えられたし、どの線でもおかしくはなかったけれど。
「『他の神は要らない』そういう思想の者による神殺し──いわゆる『上位互換』を恐れた者が、信者の信仰に揺らぎが生じることを懸念した」
理事長が口を挟む。
「私は、そう見ているのですけどね」
ささぎは、何かを言い返そうとした。
「私、は──」
口を開いたが、うまく、言葉が出てこない。
理事長はクスクスと笑って居た。
なのに、どこか、寂しそうにも見える。
「昔からあの土地の者は、『彼ら』が本当に恐れ、妬んでいる力を持って居ると言います。初代学長らと同じ、あの力。
私は『このような』学園の理事をしていて、まだお目にかからないのですけれど──おかげさまで『神になりきれなかった』、『彼ら』にとっては、信仰が揺らぐ程度に本物は都合が良くないことくらいはわかります」
ささぎは、考えた。
考えて、一旦深呼吸をする。余計なことは慎まなくてはならない。
佳ノ宮家は、元々は神を祀る家系だ。
学園の創立由来でもあり、本家の存在そのものでもある。
大元の先祖が神と交信していたのかそれとも神になってしまったのか定かではないが、その血を引いており、一言でいうと凄く霊力の強い家系だった。
宮という文字も神を留める為の宮が由来とされていて――
霊媒となる事が出来たといい、国ともそう言った関りがあったらしい。
ささぎもそれは幼いころから伝え聞いていたが、
近年ではスピリチュアルな詐欺商法やテロ等の影響もあって、表立って口にすることは無いままだった。
「そう。そもそもはそれが、気に入らないと言って、それぞれに二つのカルトが誕生した……それぞれの神を信仰して争っていたわけよね」
理事長の言葉に、ささぎは思わず身を乗り出す。
「彼らのあのカルトは、解散したはずです!」
『彼ら』は、カルト宗教の側面を持つ武闘派一派。
かつて、ちょっといろいろあった間柄だ。
宇宙だなんだの掌握を主張する為に、力を持ちそうな人間を拉致したり、勝手にその名を名乗っての広報活動をしては通報されているが、なかなかにしぶとく、今でも勢力があると言われている。
理事長は、顔色を変えることなく言う。
「ですが……まだ、その一派の者が、佳ノ宮家を騙ろうとしている事実があるとしたら、どうです?」
「どういう、ことですか?」
「『学長』が仰っていたのです。玉座に座る事を彼らは諦めて居ない」
「学長が!?……だって、『あれ』は……全て祀った筈」
ささぎにも直接霊的存在と対話することは殆ど無いが、それでも常に、大きな高位に居る存在を感じる事がある。
何かがずっと見守っているような、そういう気配のような――――
彼らが『何かを知らせる』事もあり、ポルターガイスト等の周辺の事象となって実体化されることがあった。
その度に赴き、ときに事件を解決して祀っていた。
屋敷の仕事の一部分だ。
「『近いうちに、祝詞が揃うでしょう』 私にはその意味は解りかねますけど」
理事長は淡々と学長の言葉をなぞる。
「祝詞が……」
ささぎはその意味を知っている。
ささぎの名前である「ささぎ」
あの子が継いだ 「まつり」――あれは、本当はそれぞれの神との向き合い方を示している。
まつり様そのもの。
まつりと祝詞は結び付く一つの存在。
そう。と理事長はしばらく黙った。それから、間を置いて口を開くなり言った。
「――そういえば、ナイト病ってあったじゃない?」
ナイト病。
というのは、ささぎも聞いたことがある。この辺りで時々ある風土病のようなもので、彼らは自らを『ナイト』と名乗る特徴があった。ある者は竜騎士を名乗り、ある者はそのまま、ナイトと名乗り、時折は騎士団になっていたりする。
「奇行の前兆の一つとして、月の光が関係していると言われている、あれですか?」
……ぶっちゃけ厨二病と見分け辛いのだが、これはそこそこ深刻な事態を引き起こす病気で、発症条件もまだよくわかっていない。
前回傷害事件を起こした男性も、所持しているゲームのセーブデータの名前を『ナイト』にしていたなど、日ごろから自身をナイトと思い込む症状が出ていたと言われている。
ナイトになるとその時点の記憶が無く、一定時間棒状のものを振り回しているという。
「そうそう。最近の事件、その『ナイト』病が関係あるんじゃないかって言われてるんだとか」
(2022年6月12日3時47分ー2022年6月21日0時47分加筆―2022年7月1日6時13分)
「あなたは──あの事件を、どう見ている?」
ある時間。
『佳ノ宮ささぎ』は、理事長室に出向いていた。
理事長が落ち着いた声で言う。
「天才殺し、或いは──」
それに対してささぎは何か言おうとした。
答え、ようとして、一旦思いとどまり、考える。
どの線も考えられたし、どの線でもおかしくはなかったけれど。
「『他の神は要らない』そういう思想の者による神殺し──いわゆる『上位互換』を恐れた者が、信者の信仰に揺らぎが生じることを懸念した」
理事長が口を挟む。
「私は、そう見ているのですけどね」
ささぎは、何かを言い返そうとした。
「私、は──」
口を開いたが、うまく、言葉が出てこない。
理事長はクスクスと笑って居た。
なのに、どこか、寂しそうにも見える。
「昔からあの土地の者は、『彼ら』が本当に恐れ、妬んでいる力を持って居ると言います。初代学長らと同じ、あの力。
私は『このような』学園の理事をしていて、まだお目にかからないのですけれど──おかげさまで『神になりきれなかった』、『彼ら』にとっては、信仰が揺らぐ程度に本物は都合が良くないことくらいはわかります」
ささぎは、考えた。
考えて、一旦深呼吸をする。余計なことは慎まなくてはならない。
佳ノ宮家は、元々は神を祀る家系だ。
学園の創立由来でもあり、本家の存在そのものでもある。
大元の先祖が神と交信していたのかそれとも神になってしまったのか定かではないが、その血を引いており、一言でいうと凄く霊力の強い家系だった。
宮という文字も神を留める為の宮が由来とされていて――
霊媒となる事が出来たといい、国ともそう言った関りがあったらしい。
ささぎもそれは幼いころから伝え聞いていたが、
近年ではスピリチュアルな詐欺商法やテロ等の影響もあって、表立って口にすることは無いままだった。
「そう。そもそもはそれが、気に入らないと言って、それぞれに二つのカルトが誕生した……それぞれの神を信仰して争っていたわけよね」
理事長の言葉に、ささぎは思わず身を乗り出す。
「彼らのあのカルトは、解散したはずです!」
『彼ら』は、カルト宗教の側面を持つ武闘派一派。
かつて、ちょっといろいろあった間柄だ。
宇宙だなんだの掌握を主張する為に、力を持ちそうな人間を拉致したり、勝手にその名を名乗っての広報活動をしては通報されているが、なかなかにしぶとく、今でも勢力があると言われている。
理事長は、顔色を変えることなく言う。
「ですが……まだ、その一派の者が、佳ノ宮家を騙ろうとしている事実があるとしたら、どうです?」
「どういう、ことですか?」
「『学長』が仰っていたのです。玉座に座る事を彼らは諦めて居ない」
「学長が!?……だって、『あれ』は……全て祀った筈」
ささぎにも直接霊的存在と対話することは殆ど無いが、それでも常に、大きな高位に居る存在を感じる事がある。
何かがずっと見守っているような、そういう気配のような――――
彼らが『何かを知らせる』事もあり、ポルターガイスト等の周辺の事象となって実体化されることがあった。
その度に赴き、ときに事件を解決して祀っていた。
屋敷の仕事の一部分だ。
「『近いうちに、祝詞が揃うでしょう』 私にはその意味は解りかねますけど」
理事長は淡々と学長の言葉をなぞる。
「祝詞が……」
ささぎはその意味を知っている。
ささぎの名前である「ささぎ」
あの子が継いだ 「まつり」――あれは、本当はそれぞれの神との向き合い方を示している。
まつり様そのもの。
まつりと祝詞は結び付く一つの存在。
そう。と理事長はしばらく黙った。それから、間を置いて口を開くなり言った。
「――そういえば、ナイト病ってあったじゃない?」
ナイト病。
というのは、ささぎも聞いたことがある。この辺りで時々ある風土病のようなもので、彼らは自らを『ナイト』と名乗る特徴があった。ある者は竜騎士を名乗り、ある者はそのまま、ナイトと名乗り、時折は騎士団になっていたりする。
「奇行の前兆の一つとして、月の光が関係していると言われている、あれですか?」
……ぶっちゃけ厨二病と見分け辛いのだが、これはそこそこ深刻な事態を引き起こす病気で、発症条件もまだよくわかっていない。
前回傷害事件を起こした男性も、所持しているゲームのセーブデータの名前を『ナイト』にしていたなど、日ごろから自身をナイトと思い込む症状が出ていたと言われている。
ナイトになるとその時点の記憶が無く、一定時間棒状のものを振り回しているという。
「そうそう。最近の事件、その『ナイト』病が関係あるんじゃないかって言われてるんだとか」
(2022年6月12日3時47分ー2022年6月21日0時47分加筆―2022年7月1日6時13分)
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