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出会いと雪解け
暴走武装王女・3
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「ナギサー!おめでとー!」
その日の夕方、全てが終わった後、ナギサはカズエラに思いっきり抱きしめられた。
「ちょっと師匠!痛い!」
「あ、ごめんごめん。まさか、本当に優勝するとは思ってなくてさ。これで、一人前だね!」
カズエラは慌ててナギサから離れたものの、頭を撫で回しながら言う。
それには一瞬ムッとした表情をするが、ナギサはすぐに肩を落とした。
「でも、ちゃんと勝った訳じゃないわ。はあ、悔しい」
「そんなことはないよ。あの男をあそこまで追い詰めたんだもの。グレンも言ってたけど、今までそんな剣術士いなかったからね?だから、もっと自信持って大丈夫」
カズエラの言葉に、ナギサは眉を下げたまま笑うと、カズエラの手を握った。
「ここまで来れたのは師匠のおかげだわ。ありがとう」
ナギサの行動に、カズエラは驚いたように目を大きくした。少し考える素振りを見せたが、ふと口を開く。
「ナギサ。僕はね、君のことを娘だと思って接していたんだ。僕にとってシュルネードは親友で、その娘である君は、親友の忘れ形見で。だから、シュルネードが生きていたらそうしただろうって思うことをしていたんだ」
カズエラは今までの想いを紡ぐと、恭しくナギサに跪いた。
「ナギサ王女、今までの非礼をお詫びいたします」
その言葉に、ナギサはかなり驚いたようで、慌ててカズエラに手を差し伸べた。
「そんなっ!いくら一人前だって言っても、急にそんな風に接せられても困るわ」
「いえ。前王であるシュルネードの代わりにできることは、ここまでです」
カズエラの言葉に、ナギサは何を返せばいいのかわからず、ただ口をパクパクと動かすことしかできない。
その様子に、カズエラは困ったように笑うと立ち上がり、ナギサに剣を差し出した。
「優勝の贈り物。一人前になった時に渡そうと思ってたんだ。軽いけど頑丈なもので、ナギサの戦い方は手数勝負だから、切れ味メインにしてあるんだ。ちょうど、さっきの試合で折れちゃったし、使ってもらえると嬉しい」
カズエラは師匠らしく、砕けた言い方で言う。
その差し出された剣を、ナギサはそっと受け取りながら、目に涙を溜めた。
「私、まだ……師匠には、いろいろ教わりたいの……」
ナギサの言葉に、カズエラは首を横に振った。
「ナギサ。僕が教えることなんて、もうないよ。だって、この大会で優勝したんだ。聖界一の剣術士になったんだ」
「でもっ!」
ナギサの否定の言葉を、カズエラは手で押さえた。
「ほら、王女がそんなにすぐ泣いちゃダメだよ。別に、一生のお別れじゃないし、これからも手合せは付き合うよ。でも、もう立場は師弟でなく、王女と平民だというのは、理解してほしい」
カズエラの言葉に、ナギサは息を呑んだ。
貰った剣をぎゅっと抱きしめたナギサは、「師匠」と言おうとしたが、遠くからフウの呼ぶ声が聞こえて、ハッとした。
「ほら、フウ王女が呼んでいるよ。優勝者として、胸を張っておいで」
そう言うと、カズエラはナギサの背中を押した。
ナギサは名残惜しそうにカズエラを見つめたが、踵を返すとパタパタと走って行った。その後ろ姿を見つめながら、カズエラはふっと息を吐き、空を見上げた。
「シュルネード、これで僕の役目は一つ終わったよ。君の大事な娘をあそこまで育てれば満足だろう?……いや、育てすぎって怒られちゃいそうだな」
思わず苦笑いを零したカズエラの言葉は、青空の中へと消えて行った。
その日の夕方、全てが終わった後、ナギサはカズエラに思いっきり抱きしめられた。
「ちょっと師匠!痛い!」
「あ、ごめんごめん。まさか、本当に優勝するとは思ってなくてさ。これで、一人前だね!」
カズエラは慌ててナギサから離れたものの、頭を撫で回しながら言う。
それには一瞬ムッとした表情をするが、ナギサはすぐに肩を落とした。
「でも、ちゃんと勝った訳じゃないわ。はあ、悔しい」
「そんなことはないよ。あの男をあそこまで追い詰めたんだもの。グレンも言ってたけど、今までそんな剣術士いなかったからね?だから、もっと自信持って大丈夫」
カズエラの言葉に、ナギサは眉を下げたまま笑うと、カズエラの手を握った。
「ここまで来れたのは師匠のおかげだわ。ありがとう」
ナギサの行動に、カズエラは驚いたように目を大きくした。少し考える素振りを見せたが、ふと口を開く。
「ナギサ。僕はね、君のことを娘だと思って接していたんだ。僕にとってシュルネードは親友で、その娘である君は、親友の忘れ形見で。だから、シュルネードが生きていたらそうしただろうって思うことをしていたんだ」
カズエラは今までの想いを紡ぐと、恭しくナギサに跪いた。
「ナギサ王女、今までの非礼をお詫びいたします」
その言葉に、ナギサはかなり驚いたようで、慌ててカズエラに手を差し伸べた。
「そんなっ!いくら一人前だって言っても、急にそんな風に接せられても困るわ」
「いえ。前王であるシュルネードの代わりにできることは、ここまでです」
カズエラの言葉に、ナギサは何を返せばいいのかわからず、ただ口をパクパクと動かすことしかできない。
その様子に、カズエラは困ったように笑うと立ち上がり、ナギサに剣を差し出した。
「優勝の贈り物。一人前になった時に渡そうと思ってたんだ。軽いけど頑丈なもので、ナギサの戦い方は手数勝負だから、切れ味メインにしてあるんだ。ちょうど、さっきの試合で折れちゃったし、使ってもらえると嬉しい」
カズエラは師匠らしく、砕けた言い方で言う。
その差し出された剣を、ナギサはそっと受け取りながら、目に涙を溜めた。
「私、まだ……師匠には、いろいろ教わりたいの……」
ナギサの言葉に、カズエラは首を横に振った。
「ナギサ。僕が教えることなんて、もうないよ。だって、この大会で優勝したんだ。聖界一の剣術士になったんだ」
「でもっ!」
ナギサの否定の言葉を、カズエラは手で押さえた。
「ほら、王女がそんなにすぐ泣いちゃダメだよ。別に、一生のお別れじゃないし、これからも手合せは付き合うよ。でも、もう立場は師弟でなく、王女と平民だというのは、理解してほしい」
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「ほら、フウ王女が呼んでいるよ。優勝者として、胸を張っておいで」
そう言うと、カズエラはナギサの背中を押した。
ナギサは名残惜しそうにカズエラを見つめたが、踵を返すとパタパタと走って行った。その後ろ姿を見つめながら、カズエラはふっと息を吐き、空を見上げた。
「シュルネード、これで僕の役目は一つ終わったよ。君の大事な娘をあそこまで育てれば満足だろう?……いや、育てすぎって怒られちゃいそうだな」
思わず苦笑いを零したカズエラの言葉は、青空の中へと消えて行った。
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