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聖なる力の消失
しおりを挟むSide 聖女様
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宿の窓からぼうっと外を眺めていた。
魔物がいつ現れてもおかしくない辺境の地にあるこの宿に滞在しているのは、私のエゴ。
自分の意思で、この国を捨てたと言っても過言ではないのに、私は今日も魔物の動向を窺っては、何の変化もないことに安心感を覚えていた。
私の代わりに召し抱えられたという魔女様が頑張ってくれているんだと思う。
…ごめんなさい。
顔も知らない彼女に心の底からの謝罪。
ここに来てから祈りをかかしたことはない。
だけど、王宮の神聖なお祈り部屋で整った設備の中祈りを捧げるのと、宿屋の一室で同じことをするのではやはり効果ががくっと落ちることはわかっていた。
この祈りはあまり意味を生していないのではないかと思う。
私はいつも誰かに迷惑をかけてしまう。
私がもう少し強ければ…
どうしようもない自分なんかよりも、国を思う気持ちを持っていたならば。
「っ、本当に、ごめんなさい」
ぽたぽたと溢れる涙に一層自分が嫌になった。
私には泣く資格なんてないのに。
一番泣きたいのは、聖女に見捨てられたこの国の人間と、そして、私の身勝手の犠牲になった魔女様だ。
「セシル…また自分を責めていたのか?」
そっと近づいてきて、私を背後から抱きしめるのは、私を救ってくれた愛しい人だ。
「ルード様」
第二騎士団元騎士団長であり、今となっては反逆人のレッテルを貼られてしまっている彼。
地位や名誉を捨ててまで私を選んでくれたルード様に私はどう償っていいかわからない。
「セシルは俺の願いを叶えてくれただけだ。それに、セシルはただの十八のか弱い女だ。この小さな手は国を守って無茶をするためのものじゃない」
聖女様と担ぎあげられ、閉じ込められてきた私に、ルード様は一番欲しい言葉をかけてくれた。
不自由な王宮で、ルード様に恋したことだけは、絶対に後悔なんてしたくない。
「セシルを、ただの人間にしてもいいか」
「はい、ルード様。たくさん待たせてしまってごめんなさい」
力強く抱きしめてくれる腕の温かさに、私の頬に雫がつたった。
最後の祈りを捧げよう。
どうか、この国に少しでも長い平穏が訪れますように。
「俺を選んでくれて、ありがとう」
「それは私のセリフです。ずっと一緒にいてください、ルード様」
たくましい腕が私をそっと抱き抱え、宿の少し固いベッドにゆっくりと下ろす。
私の上に覆い被さるルード様に愛しさが込み上げた。
見つめ合い、どちらからともなく口付ける。
「愛しています、ルード様」
「ああ、俺も、誰よりも君を愛してる」
そして私達は、初めて体を重ねたのだった。
聖女の条件
一つ、アルセーヌ王国に生まれし女子であること。
一つ、聖なる力を宿していること。
一つ、純潔であること。
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