魔女は駆け落ちした聖女の身代わりに魔物討伐を命じられました。

ゆき

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交換条件

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目が覚めると、もう随分と見慣れてしまった部屋で、これまた使い慣れたベッドに寝かされていた。

レイが獄舎からここまで運んでくれたのだと思う。感謝だ。


セシルさんや騎士団長は無事に王宮を脱出できたのだろうか。


無事に目的地に辿り着いているといいけど。



私はそっとベッドから起き上がると部屋の扉の前にいるであろうレイの元へ向かった。



「魔女様、目が覚めたのですか?」


そこにいたのは、レイではなく、第二騎士団にいた他の団員だった。

レイと親しくなってからは、私の王宮での護衛は彼に一任されていたはずなのに…



「レイに何かあったんですか!?」


私が半ば叫ぶようにそう言うと、彼は顔を歪めて小さく言葉を零した。



「…レイは、明朝、処刑されます」

「はぁぁぁあああっ!?」


「あいつは聖女様とルード団長の逃亡を幇助した責任を問われ、今は投獄されています」


…私のせいだ。

彼は、彼女達を逃がす際、頑張ればできると言っていたが…それは彼自身を犠牲にすることと同義だったのではないか。


だとしたら、愚かな選択をさせてしまった。



「国王陛下に謁見させてください」

「ええっ!?いきなりは無理ですよ…この国のトップですよ!?」


「レイを救いたくないんですか!」

「それは、救いたいに決まってますが………………わかりました」


彼は少しだけ考えて、覚悟を決めたようだ。



「大丈夫、あなたに被害が及ばないよう配慮します」

「…いいですよもう、乗りかかった船ですから…すっごく怖いですけどね!!」


彼はとんでもなく微妙な表情を浮かべて喚いていた。



彼に続いてやって来たのは初めてここに来た時通された謁見の間ではなく、重厚な扉が重苦しい雰囲気を感じさせる執務室だった。


恐ろしくプライベートな空間みたいだが…大丈夫なのだろうか。


覚悟を決めたからと言ってもう少し気を使ってくれてもよかったんだけど。


ちらりと盗み見した彼はどことなくドヤっとした顔を浮かべていてもうそれ以上何も言えなかった。



トントン、

緊張しながら、ノックをする。



「誰だ」


「…魔女です」


きっと私やセシルさんを道具としか思っていない陛下は私の名前すら覚えていないだろうと思って、そう言葉を返した。



「……入れ」

数秒間を置いて返ってきた返事にゆっくりと扉を開ける。

中には当然だがこの国のトップである男の姿があった。


騎士団の彼に待ってるよう告げて中に入る。

後ろ手にパタリと扉を閉めた。



「先触れもなく魔女が私に何の用だ」


「恐れながら申し上げます、レイの処刑を取り消してください」


「レイ?…あぁ、反逆人共の逃亡を手助けした愚か者のことか」

国王の悪意のある言い回しに腸が煮えくり返るようだった。


それが国を救ってきた彼女や、彼女を救ってきた騎士団長、そしてこの国に使える騎士に対する言い方か。



「どうして罪人を助ける必要がある?」


「罪人なんかじゃありません。彼らは誰一人として悪いことなんてしてない」


はっきりと告げると陛下は歪な笑みを浮かべる。

背筋にひんやりとしたものが走る。



「処刑は決定している。覆ることは無い」


「…ならば、私が魔女としてこの国を救うことは今後一切ないでしょう」


交換条件に乗ってくれるかは賭けだった。

しかしこの賭けには何がなんでも乗ってもらわなければならない。


「言っておきますが、私はこの国で一番魔力の強い魔女として選ばれたんですよね?だったら私でもたまに手こずる魔物の相手なんて他の魔女にできるとは思えませんよ?」

手こずると言っても初めのうちだけで、今ではもうすっかり慣れてしまったが。


「ほう、私に交換条件を持ちかける者などそういない。魔女はなかなか豪胆だな」


この国の王は口角だけを上げて嘲笑うようにそんなことを言った。

緊張や不安からか心臓の鼓動がいつもより随分と早いように感じる。



「だが、その交換条件は私には無意味だな。お前程の者がいなくとも、魔女の数を増やせば事足りる話だ。多少家臣の仕事が増えるくらいで、私に実害はない」


そんな言葉に冷や汗が流れる。

私の持ちかけた話は目の前の男に無惨にもあしらわれてしまったようだ。


どうする…

頭を回してもうまい言葉が見つからない。


だけど、このままレイを見殺しになんてできるわけがなかった。



「だが、まあ…乗ってやらないこともない」

「っ…!」


「その代わり交換条件はお前の拘束だ。まあ、今とさほど変わらないとは思うが…お前は今後魔物討伐以外で自室から出ることを禁じる。警備からは第二騎士団も外すとしよう。今後私の決定に口を挟むな。私は些細なことでも自分の邪魔をする者がいることが許せない。心底ひねり潰したくなるよ」


そう言って国王はゾッとするような冷たい表情を浮かべた。

歪んでる、そんな表現がとてつもなく似合う人だと思った。



「わかりました、陛下」


私は黙ってその言葉を受け入れた。


良かった…レイは、助かる。


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