兄が度を超えたシスコンだと私だけが知っている。

ゆき

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信用

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「気分はどうだ?」

湯浴みを終えたらしいグレン兄様が、その綺麗な銀色の髪からぽたぽたと雫を落としながら近寄ってきた。

横になっていた体を起こして返事を返す。


「薬が効いてきたみたいで、もう大丈夫です」

「よかった」


心底ほっとしたような表情でそう言った彼にむず痒いような照れくさいような、そんな気持ちになる。



「…風邪をひいてしまいますよ」

「ん?ああ、髪か。カティが心配で急いで来たから」


「だからどうしてそんな…」


いきなり優しくされるのにも、どこまでも甘いグレン兄様にも、やはり慣れない。

嬉しくないわけじゃないけれど、戸惑ってしまう。



「…こういう俺は、嫌か?」


「嫌というわけでは…」


シュンとして眉を下げならそんなことを聞いてくるグレン兄様になんだか罪悪感が募る。



「そうか。ごめん、カティ…できれば、こんな俺にも、慣れて欲しい」

どことなく申し訳なさそう言うグレン兄様。


「もう俺はカティに自分を偽る必要はないから…これからはちゃんと、カティを愛したいんだ」

「っ、」


「そしていつか…」


呟くように口を開いたグレン兄様がその言葉の続きを口にすることはなかった。


「いつか、何ですか?」

「いや、いい」


「……はっきりしない人は嫌いです」


私がそう告げると、彼は途端に絶望を表情に乗せて縋るような瞳をこちらに向ける。

とてもじゃないけど、今まで自ら嫌われるような行動ばかりしてきた人間には思えない。



「いつか……」

「いつか?」



「カティにも…俺を……好きになって、欲しい」


…………いたたまれない。


痒い。


まさかこんな言葉を言われるなんて想像もしていなかった。



「あの、よく、そんな恥ずかしいこと、言えますね…」

「ゔっ…言うつもりはなかった」


「なんか、すみません、グレン兄様」


さすがの私も恥ずかしいやら申し訳ないやら、とりあえず頭を下げる。



「わかってる、俺なんかがカティに愛されたいと思うことすらおこがましいということも、そんな未来が来るはずないことも…」


彼の卑屈なところは少しだけ慣れてきた。



「どうしてそう思うんですか…私はグレン兄様をちゃんと選んだのに」

「…俺は、カティの優しさにつけいっただけだ。カティは優しいから、兄だった俺を合われんで、同情しているだけだと思う」


「確かに、グレン兄様を愛しているなんて今はまだ確かな気持ちはわかりません!だけど、あなたのそばにいたいと思う気持ちに嘘はないと私はしっかり言いました」


未だに私のことを何一つ信用してくれないグレン兄様にさすがに怒りが込み上げてしまう。


「もう気持ちを偽る必要はないとあなたは言いますけど、私の気持ちを一番拒絶しているのはグレン兄様じゃないですか!」

「ちがっ、カティ俺は…」


「私がもし本当にグレン兄様を愛しても、今のあなたはきっとこの気持ちすら否定してしまうのでしょうね」


だとしたら、私はやっぱり彼と共に生きる未来なんて選ばなければ良かったの?



「…私はあなたを選んだことを後悔したくなんてありません」


「うん、カティ…俺も、カティに後悔なんてさせたくない」



グレン兄様はどこか困ったような笑顔を浮かべて私を見つめていた。

その瞳が少しだけ熱を持っているように思えるのは気のせいだろうか。



「ごめん、カティ…俺はまた自分が傷つくのが怖くて、カティから逃げていた」

「…意味がわかりません」


「話すよ、全部。カティに隠し事はもうしない」


ぎゅっと噛み締めた唇を咎めるように、彼のしなやかな指がそっと触れた。

思わず力を抜くと今度は優しく頬を撫でられ、彼の整った顔が近づいてくる。


「っ、あ、」


驚いてきつく瞳を閉じると、瞼に優しい温もりを感じた。



 「俺の話を、聞いてほしい」


ぽうっとしたまま、私はただただ首を縦に振ることしかできないのだった。


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